観戦と傍観者
今回はモブ視点です。
スゲェものを見た。
俺と同じ冒険者がドラゴンを倒すところだ。
俺はCランク冒険者のゼイン。他の冒険者がゴブリンやホブゴブリンと戦っている間に斥候として敵城視察に来た。
今この街に住むAランク冒険者は運が悪い事に出払っているが、Bランク冒険者はいるし何とかなりそうな気はする。
少なくともそう簡単に負けることは無いだろう。
兎にも角にもまずは情報収集。そのために苦労しながらヒソヒソと移動して敵の親玉が見える位置まで到着した。
やっぱり敵のボスはゴブリンキングで、 ゴブリン自体は初心者が相手をするような脆弱な存在だけど、キングとなると迫力は段違いだし遠くからでも圧を感じる。
俺1人だったら絶対に戦いたく無い。
そんな事を思っていると、ゴブリンキングに攻撃を仕掛ける冒険者が現れた。
「は!?」
そして思わず声を出してしまった。
いつからソイツが居たのか俺には全く分からなかったが、一瞬の攻防の間にゴブリンキングを倒してしまった。
誰だって自分が偵察していたラスボスが一瞬で死んだらビックリするだろう。
ましてや、その男はついでとばかりに取り巻きのゴブリンシャーマンやホブゴブリンも全て倒してしまった。
ボスの取り巻きだけあってホブゴブリンは通常のサイズより大きかったし、 ゴブリンシャーマンなんて魔法を使ってくる面倒なモンスターだ。
スタンピードはとても危険なもので、どれぐらいの死者が出るのか分かったもんじゃ無い。
大量のモンスターが攻めてくるんだから当たり前だ。
ただ、今回はあの冒険者がボスを倒してくれたから犠牲も少なくなるだろう。
ギルドで見た時に美少女を連れ立ったいけすかない男と思って悪かった。
俺にもあれぐらいの強さがあればモテるようになるんだろうか?
「グアアアアアア!!」
な、何だ!
とんでも威圧感を感じるような音が上空から聞こえてくる。
何か凄く大きいモンスターが飛んでるんだけど……
あれってドラゴンでは?
俺は初めて見るからよく分からないけど、流石にドラゴンはヤバすぎるのでは!
ドラゴンと言えば強力な個体は下手すると一体で国を滅ぼすって言う話しを聞いたこともあるし……
離れた場所に居るのに、その存在感が半端じゃない。
遠くから見てるだけなのに足が震えて心臓の鼓動が速くなっていく。
今すぐ逃げなくてはと動き出そうとした瞬間にドラゴンに攻撃を仕掛けた奴がいた。
そう、 ゴブリンキングを倒したあの冒険者だ。
そこからは俺なんかには何が起きてるのかよく分からないぐらいド派手に戦っていた。
というか、体が大きいだけあってドラゴンの攻撃は全て派手だ。
しかし、あの冒険者も全く負けてない。
そうして、気が付いたら俺は夢中で戦いを見ていた。
あの冒険者が勝つなんて保証は無いし、今すぐこの場から離れた方が良いのに戦いから目を離せない。
そして、ついに決着が着いた。
勝ったのは冒険者の方だ。
俺はこの目で偉業を目にしたのかも知れない。
何て凄い男なんだ。
戦ったのは俺じゃ無いのに達成感や喜びを感じて胸が熱くなる。
俺はこの戦いを記憶に刻み込み、しっかりと冒険者ギルドにも伝えよう。
しかし、どうやら試練はまだ終わって無かったらしい。
ドラゴンスレイヤーの彼に魔法による攻撃がいくつも飛んでくる。
しかし、彼はその攻撃を見事に防いでいた。
そして、その場に6人組の冒険者が現れて何やら話しかけている。
俺はその中にいるリーダーらしき男に見覚えがある。
あいつらはBランク冒険者パーティーのブラックシーヴズだ。
一緒に探索した冒険者が生きて帰ってこないとか、高ランク冒険者が死んだ付近にいた事が多いとか、あまり良い噂を聞かないパーティーだ。
だが、どうやら噂は本当だったみたいだ。奴らはドラゴンを倒した冒険者を殺して、素材と名声を奪おうとしているんだろう。
だが、いくらゴブリンキングやドラゴンと戦った後とはいえ元の実力が違いすぎるのでは?
連戦で疲れているだろうが、ドラゴンを倒した冒険者をあの男たち程度の存在が倒せるんだろうか?
俺にはとても勝てると思わないが。
というか、あんな奴らに負けてほしくない。
いざ戦闘が始まって見ると瞬殺だった。全く相手にされる事なく全員が殺されていた。
リーダーは少しなぶられていたが。
冒険者ギルドで彼に絡んでた奴は命拾いしたな。
しかし、ドラゴン討伐をこの目で見る事ができるなんて、スキルに感謝だ。
目が良くなるスキルなんて今まで地味だなと思ってたけど、遠くからこの戦いを見ることが出来て良かった。
俺も頑張ろう!




