遊びと余裕
まぁ、確かにこのリーダーは格上を闇討ちしてきただけあって、レベルが160とかなり強い部類にはいるのかも知れない。
ただ、この男のステータスはそれでもドラゴンの10分の1にも満たない。
僕やドラゴンのステータスを見れないコイツらには知るよしも無い事だろうが。
でも、確かに効率だけ見れば自分よりも強い相手を闇討ちする方がレベル上げはスムーズに行くのかも知れない。
「よし! 行け!」
男が僕を指差して部下に命令する。
すると後ろに居た剣士風の男と格闘家っぽい男がこちらに向かって突っ込んで来る。
「ぐっ!」
「ガハッ!」
が、2人の冒険者は何が起こったのか理解する事も出来ずに聖剣で首を斬り落とされた。
「チッ! ノインとピンは魔法で攻撃! プルードは奴が攻撃してきたら前に出て俺たちを守れ!」
2人の仲間がやられて舌打ちをしたリーダーは直ぐに指示を出し、手下がそれに答えるように行動を開始する。
仲間がやられても直ぐに指示を飛ばせるという事は指示役として優秀なのかも知れない。
「成功続きでレベルも上がって調子に乗っているのかも知れないけどさ」
言われた通りに炎魔法で攻撃をしてきた2人の魔法使い。
きっと最初に奇襲を仕掛けてきたのはこの2人だろう。
そんな彼等の魔法に僕は氷魔法のアイスランスをぶつける。
僕が放った攻撃は相手の魔法を寄せ付けずに貫通し、指示通りに仲間を守ろうと前に出たタンクの盾を突き破り胴体に風穴を開ける。
さらに魔法使い2人の身体中にもアイスランスが突き刺さる。
風穴が空いたタンクと身体中に穴が空き血を垂れ流した魔法使い2人は地面に倒れこんだ。
それを唖然とした表情で見ていたリーダーに先ほどの続きを話す。
「ドラゴンのステータスってあんたの10倍以上あるんだぜ……」
「何を馬鹿な……そんなわけある筈が無い」
首を振って必死な表情で現実逃避を始めるリーダー。
まぁ、実際にドラゴンのステータスの話しは本当だけど、僕のステータスはダリアのバフで一時的に上がってるだけだ。
それでもコイツよりは遥かに高いステータスではあるんだけど。
というか、ドラゴンが強すぎたんだよね。
「そのドラゴンを倒した僕にとっては、どんなに弱ってようとお前ら羽虫には負ける気がしないんだわ」
「まだだ! そんなハッタリを信じるわけ無いだろうが!!」
真っ青な顔したリーダーは自分を鼓舞するように声を出し剣を構える。
「こんな所で死んでたまるかー!!」
懸命に叫びながらこちらに向かって剣を振るってくるが、僕は聖剣をぶつけて武器を破壊する。
「ば、馬鹿な!」
「ほら、あんたじゃ全く相手にならないじゃん」
恐怖を感じ始めたのかガクガクと手を震えさせて壊れた武器を見るリーダー。
どうやら自分たちが手を出してはいけない相手をターゲットにしてしまった事に気づき始めたみたいだ。
まぁ、今さら後悔しても遅いんだけど。
「それじゃあ」
「ま、まて!」
僕が喋り出すと慌てた様子で止めに入るリーダー。
まぁ、どう見てもそのセリフは自分への死刑宣告にしか聞こえなかっただろうしね。
「どうしたの?」
僕が話しを聞く様子を見せた事でホッとした表情を見せるリーダー。
「お、俺と……ギャッァ!!」
話し出すタイミングで聖剣を振るい右腕を斬り落とす。
「ごめんごめん、間違えちゃった」
何を間違えれば腕を斬り飛ばす結果になるのかは分からないけど。
「しょうがないな、治して上げるよ」
回復スキルで右腕を直してあげる。
「あ、ありがとうございます」
自分の腕が治った衝撃とこんな事も出来る僕に驚きながらも低姿勢でお礼を伝えてくるリーダー。
「俺と組みませんか? 俺と組めば……」
「却下」
提案を途中で遮り、もう一度右腕を斬り落とす。
「も、申し訳ありませんでした」
殺されるという恐怖と頭を下げる屈辱の両方を感じたような顔つきで謝るリーダー。
「あ、あの?」
「何?」
冷たく言い返す。
「で、出来れば腕を治していただけないでしょうか?」
そんな僕に腕を治すよう懇願してくる。
「うーん?」
首を傾げ考えるフリをする。
「お願いします。俺を助けて下さい」
「嫌だ」
僕は頭を下げて懇願するリーダーをあっさり拒絶する。
「もう面倒臭いし、そろそろ駆除するね」
そう言うと今までの死にそうな表情から一転して、怒り心頭と言った顔つきになった。
いくら懇願したところで僕との交渉が上手くいかない事に気付いたんだろう。
始めから僕にリーダーを逃すつもりは無いからね。
「き、貴様!!!!」
鬼の形相でそう叫んだリーダーの首を聖剣で刎ねる。
さぁて、面倒ごとも終わったし今度こそダリアたちの所に向かおう。




