驚く話
お久しぶりです、しゃーなこと星野紗奈です。
ショートショートっていうんですかね?
少し短編の練習がしたくて……がんばってみようと思います。
さて、今回は「驚く話」ですが、こんな話を書くのは初めてなので、驚かすことができなかったらすみません……
最後まで読んでいただければ幸いです!
また、アドバイスなどいただけると嬉しいです( *´艸`)
それでは、どうぞ↓
「いったい何なのよ」
最近、誰かが私のあとをつけてきているような気がする。外を歩いていると、背後から足音が聞こえるのだ。初めは気のせいかとも思ったのだが、一週間も続くとさすがに不自然だ。今日はやらなければならないことが多く、部活がなかなか終わらなかったので、帰るのがいつもより遅くなってしまった。辺りはもう真っ暗だ。
さっきからずっと、後ろから足跡が聞こえる。もしもの事を考えると、足が震えて上手く歩けない。この恐怖はいつまで続くのか。私は不安と恐怖で壊れてしまいそうだった。
すると突然、足音が速くなった。私は怖くて動けない。
男の低く力強い、うなるような声の後に、「ぱしっ」という音が聞こえた。
「全く、突然後ろから殴ろうとするなんて、非常識じゃないのかい?」
振り返ると、元カレの大輝と、最近よく行くカフェで知り合った健治さんがいた。
「大輝と健治さんが、なんでこんなところに」
「手前、何してんだ。さっさと佳純から離れろ」
大輝は私の言葉をさえぎって、冷たく言った。
「初対面の人に『手前』なんて言われる筋合いはないのだけれど」
健治さんも大輝に冷たい笑みを返した。
いったいこれは、どういうことだろうか。私にはさっぱりわからなかった。私が起きたことを理解できていないということに気がついた健治さんは、ざっくりと説明してくれた。
「私は仕事の帰りに佳純ちゃんを見つけたんだ。すると突然その男性が後ろから殴りかかってきたものだから、私がそれを止めたというわけなのだよ」
「それって、ほんとに大輝が?」
そういって大輝を見ると、彼は黙り込んでしまった。
「残念ながらそれは事実なのだよ」
「そんな……」
「佳純、早くそいつから離れろ」
「なんで?」
「いいから!」
大輝が私に向かって怒鳴ったのは、これが初めてだ。付き合っていたときには、一度も聞いたことがない声だった。私が別れてほしいといった時も、悲しげな表情で「ごめんな」と言っただけで、怒ったりしなかった。今まであんなに優しかった彼が、なぜこんな風に変わってしまったのか、私にはわからなかった。
「理由を言ってくれないならいやだ」
「今はそんなわがまま言ってる場合じゃねぇんだよ」
「ねえ、いったい何を勘違いしてるの?健治さんはきっと大輝が思っているような人じゃないよ」
「いいや、俺は『真実』を知っている。だからこそそいつから離れろと言っているんだ」
私の心臓がドクリと跳ねた。彼の言う『真実』とは何だろうか。そういえば、私は健治さんの何を知っているのだろう。少しだけ彼のことを疑ってしまい、そのことを申し訳なく思った。
「もう辺りも暗くなってしまったし、佳純ちゃんの家まで私が送っていくよ」
「あ、えっと……」
健治さんがそう言ってくれたのはうれしかったのだが、大輝の言葉がどこかつっかかる。彼のほうに目を向けると、「どうなっても知らないぞ」とでも言うかのように私をにらみ、どこかへ行ってしまった。
「こんな時間に女性を一人で歩かせるほど、私はひどい人間ではないからね」
「じゃあ、お言葉に甘えて」
さすがにこの私も夜道を一人で歩いて帰るほどの勇気は持ち合わせていない。多少の違和感は残るものの、ここは素直に健治さんに送ってもらうことにした。
いつもと変わらない話をしながら、健治さんと歩いて帰った。健治さんは常に私のことを気にしてくれるようで、さっきの話にはなるべく触れず、楽しい話で盛り上げてくれたり、わざわざ歩くスピードを遅くしてくれたり、車道側を歩いてくれたりした。ささいなことの一つ一つが私はとてもうれしく感じた。まるで、彼氏みたいだ。
「今日はありがとうございました」
「とんでもない。また何かあったら私に相談してね」
「はい!」
健治さんの笑顔はとても優しく、あたたかかった。今こんなにも安心できる人は他にはいない。やはり、彼を疑った私が間違っていた。
あれから数日。大輝は私を避けるようになってしまった。大輝の言っていた『真実』の答えもまだわからないままだ。落ち込んでいる私を、健治さんはいつも励ましてくれた。やっぱり健治さんはいい人だ。そんなことを考えながら休日の街を歩いていた。そういえば今は何時だろうか。カバンからスマートフォンを取り出そうとした。その時だった。
「えっ」
1秒後には私が持っているはずのカバンがなくなっていた。前方を見ると、私のカバンは自転車に乗った男の人が持っていた。
「ひったくり!?そんな……」
一瞬、思考が停止した。やっと体が動かせるくらいになったが、その時にはすでに自転車は私の5メートル以上先を走っていた。もう追いつかない。そう確信した時だった。
「ぐぇっ」
男の苦しそうな声が聞こえた気がして、ひったくりを見てみれば、なぜか地面に倒れていた。そのそばには健治さんが立っていた。
健治さんは地面に落ちた私のバッグを拾い上げると、それについた砂などを払い落として、私のもとへ持ってきてくれた。
「これ、佳純ちゃんのバッグだろう?」
「あ、そうです!ありがとうございます」
「いやいや、人として当然のことをしたまでだよ。それにしても、ひったくりなんて物騒だねぇ」
健治さんはのんきに笑いながら言った。それにしても、健治さんはすごい。あのひったくりをあんなに簡単に捕まえてしまうとは、驚きだ。私と違って勇気があるし、それにふさわしい力がある。
「健治さんはヒーローみたいですね」
「そういわれると照れるなぁ」
健治さんは恥ずかしそうに笑った。
「でも私はヒーローなんて言うかっこいいものではないよ。私は、ただのくっつき虫みたいなものさ」
「くっつき虫?ふふっ、おかしな人ですね」
そのあとはひったくりにあったことも忘れ、二人で笑いあった。健治さんと話をしている時間はやはり幸せで、笑顔になれる。
「本当にありがとうございました」
「こちらこそ、お話楽しかったよ。今度はまたカフェで話そうよ」
「もちろんです!」
「それじゃあ、私はこれで失礼するよ」
そういって健治さんはひらひらと手を振りながら、路地裏へ消えていった。やはり、健治さんは素晴らしい人だと思った。
「バッグも帰ってきたことだし、ショッピングを再開しようかな」
そう思い、街を再び歩き始めた。が、数歩歩いてすぐに止まった。
今日私が使っているこのバッグは、つい最近インターネットで購入したものだ。健治さんがこのバッグを見たのは今日が初めてのはず。それに、ひったくりにバッグを取られたときも、私は驚きと恐怖でほとんど声が出なかった。どうやって私がひったくりの被害者だと見抜いたのだろう。もしかして、私がひったくられた場面を見ていたのだろうか。冷静にあの場面を思い出してみたが、私の前を健治さんは歩いていなかったはず。それなのに、彼はひったくりから取り返したバッグをすぐに私に渡してきた。
「なんで私のバッグだってわかったの?」
その疑問が浮かんだとき、背後にただならぬ気配を感じた。
「あ、大輝の言っていた『真実』は、これだったのね」
私は再び街を歩き始めた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!




