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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第66話 転生者、フジャイラの王となる

 僕は王宮からフェルプス商会へ送ってもらった。馬車から降りると、出迎えていた心配気な皆の顔を見て、ほっとした感情が込み上げてきた。胸の奥に張り詰めていたものが、一気にほどけた。

 思わず涙がこぼれそうになる。

 しかし、今はもう、一人の子供ではない。フジャイラの王として皆の前に立たなければならない。泣き声にならないようにと思って、あえて笑って言った。

 「終わりました。マギビスタ国がアルスブルクをフジャイラ国の街として認めてくれました。皆さん、ご心配かけました」

 僕の声に人前を気にせず、カミーラ王女が僕に抱き着いてきた。

 「良かった。本当に良かった」

 耳元で囁いた。

 「其方が無事に帰って来てくれたのが本当に嬉しい」

 「頑張りました。何とか王女カミーラに相応しい男になったと思います。課題はまだまだありますが、これからもカミーラを喜ばせる様な男になりたいと思います」

 「アルス、いや、陛下、ありがとう。私一人ではなにも出来なかった。それがもう国ができたのだ。本当によくやってくれた。

 私からお願いがある。無理しないで欲しい。其方がいなければ私は何も出来ない。ここまで来たのだ。後は、一歩一歩進むだけだ」

 「ありがとう、カミーラ。そう言ってもらえて、少しだけ気が楽になりました」

 そう言って、僕はカミーラから離れた。見回すと、いつの間にか人だかりが出来ていた。そう言えば、ここは王都でも評判の商会の前だった。僕は思わず声を上げた。

 「この国、北方に小さなフジャイラという国が出来ました。まだ、アルスブルクという村しかありませんが、そちらにお越しの際はお気軽にお立ち寄り下さい」

 周囲の人から反応があった。

 「なんだって、アルスブルク?」

 「あの、伝説の村だろう?」

 「本当にあったんだなぁ」

 「行ってみたいな」

 色んな反応が聞こえて来た。嬉しい反応であった。

 「坊主、そのアルスブルクは何処にあるんだ」

 「坊主?」

 周りを囲む男に僕は呼びかけられた。王という身分があるとは言え、見た目ではただの子供だった。軽いショックを受けるが、致し方無いと諦めた。

 「北方のベルンハルトの村の近くになります」

 と、僕が言ったが、さらにそっけない答えが高揚した気持ちを折った。

 「分からないなあ。そっちに行く用もないし、当分行く事もないだろうな」

 僕は努めて明るく声を出した。

 「そうですか。残念です。皆さんが、来たい国になる様に頑張ります」

 皆があこがれる夢の国にするのだ。希望を胸にアルスブルクへ帰ろう。僕は強く思った。

 冒険者パーティ白銀の翼は大きな戦果を持ってアルスブルクへ帰還した。


 僕は主な者を僕の家の一階に集め、今回の成果を話した。

 「この地をマギビスタ王国からフジャイラ国として認めてもらえました。これは大きなことです。マギビスタがこの地を守ってくれることになります。さらに、マギビスタは未開の地を切り開き、我が領土とすることを許しました。我がフジャイラはまだまだ大きくなる可能性が開けました。それに、マギビスタからの人民の流入に関しても理由を明確にできれば許されるでしょう」

 「それでは、ベリーリンドからの村人も戻らなくて良いということでしょうか?」

 トーリさんが質問してきた。

 「はい、ベルンハルトを治めているブルームバーグ公爵からは許されているので問題ないでしょう」

 「それは良かった」

 トーリさんは安堵の表情を浮かべた。僕は続けた。

 「しかし、良い事ばかりではありません。一つは、月十万Gの納税をする義務ができました。二つはスコッテイ王女をマギビスタ王宮に出さなければならなくなったことです。

 納税に関しては灯りの魔道具が月産十万台となっており、利益が二十万Gとなりますので、これだけでも十分対応可能です。それに、エルザの店の食材から上がる利益もあり、次の暖房の魔道具もありますから、納税自体は問題ありません。

 しかし、この村の貴重な人材であるスコッテイ王女がいなくなるのは村の運営にも支障がでますが、これからは、マギビスタ王宮でフジャイラ国の代表として活躍してもらおうと思います。

 スコッテイ王女と入れ替わりでマギビスタからはマーガレット王女がやってきます。そちらの対応も必要です」

 「なるほど、簡単ではないですね」

 トーリさんが言った。

 「それでも名も知れぬ村からフジャイラの国ができたのだ」

 カミーラ王女が言い、瞳から涙が溢れた。

 亡国の王女として絶望していた日々。

 家族を失い、国を失った日々。

 その全てが報われたようだった。

 「父にも母にも、弟にも顔向けができる」

 「お姉様、私はここに居ます。王とともに新しいフジャイラを創っていきましょう」

 スコッテイ王女はカミーラ王女に抱き着いた。今まで控えていた騎士団長が叫んだ。

 「フジャイラ国、万歳」


 僕は皆の前で宣言した。

 「三日後、僕とカミーラの結婚式を行います。

 それを建国を祝う宴とします」

 カミーラ王女は僕の言葉を聞いて、泣き出した。スコッテイ王女がそれを見守っている。

 「その日は、すべての工房をお休みとしますので、皆でお祝いをしてください。

 クロードさん、申し訳ありませんが、食べきれないほどの食事と飲み物の準備をお願いします。

 トーリさん、ベリーリンドの住民を含めた綱引き大会を行いましょうか?優勝チームへの賭けも行いましょう。

 そして、皆さんで、盛大にこの国の行く末を祝ってください。

 最高の日にしましょう」

 僕はその言葉で報告会を締めた。


 そして、その日がやって来た。魔道具で録音した王都の楽隊の音楽を賑やかに鳴らし、その音と祝福の声の中を村の広場まで、僕とカミーラは歩いた。

 スコッテイ王女が神の巫女となり、衆人の見守る中、カミーラ王女の青い瞳が潤んでいた。

「愛している」

 僕が小さくそう呟くと、カミーラは幸せそうに微笑んだ。

 僕等は永遠の愛を誓った。

 「フジャイラ国、万歳」

 どこからか聞こえて来たその声に和する声が次第に大きくなり、やがてその声で広場は埋まった。

 背伸びした僕はカミーラ王女を見つめ、甘いキスをした。

 一瞬、静まった音が、また、弾けていった。

 「フジャイラ国、万歳」


 その後も賑やかな宴は続いて行った。皆が飲んで食べて、綱引きに興じて、笑い声が収まらなかった。僕の横では美しく輝くカミーラ王女がいて、時折、僕を確かめるように微笑んできた。

 僕は愛する女と愛する人達を守ることをどこかにいるはずの神に誓った。

 フジャイラ王国の歴史は、この日から始まる。

                               第一章 完

第二章はカクヨムで続いています

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