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七歳で世界を変えた少年〜前世の知識と禁断の魔法理論で、僻地を最強都市に作り替える〜  作者: 霧里 野蒜


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第1話 転生者、目覚める

なろうでの初めての異世界ファンタジー小説になります。カクヨム先行しております

 僕は不意に周囲に違和感を感じた。

「えっ、ここはどこなんだろう?」

 心のつぶやきが漏れる。しかし、あるのは見慣れた?自室の机とその先の窓から見える代わり映えのしない庭の木。見回すと、本棚があってベッドがある。目の前には開かれた本がある。

 「なんだ、この文字は?」

と、思ってみたが不思議な事に読める。

 「ふーん、魔法概論か?えっ、魔法?それも、概論?なんのことだ」

 近づけても理解が早くなる訳ではないのだろうが、思わず、本に顔を近づける。

 「なになに、”人には魔力があり、この魔力を利用することで、魔法を実行することができる。そのためには天地を作った神への感謝の言葉、呪文を習得することが必要である”。えー、魔力?呪文?なんのことだ?」

 僕は叫んでしまった。


 「どうされました、アルス坊ちゃま」

 部屋のドアが開き、誰かが入って来て僕に声をかける。

 ”アルス?坊ちゃま?誰?”

 思わずその声に僕は振り向く。すると、執事服の男が立っていた。僕はなぜか、その男の名前が分かった。そして、この状況を逃れるために、話し出す。

 「セバス、なんでもないよ。本を読んでいたら、窓の外を何かが飛び去ったような気がしたので、声を出しただけ。気にしないで」

 セバスと呼ばれた男は、不審気な目で僕を見つめると、

 「アルス坊ちゃまは昨日まで熱にうなされていたお体です。今回は、学院に戻られるためということで、本を読むことを許可しましたが、やはり、まだ、ベッドでお休みになられた方が良い気がします」

と、言った。

 ”そうなのか?”

 アルスは自分が自身の熱が出て学院を休み、退屈を紛らわすために以前から興味を持っていた魔法の本を読んでいたのだと僕はなんとなく状況を理解した。

 セバスは強い口調で続ける。

 「アルス坊ちゃまは頑張り過ぎです。いくら学院きっての秀才だと言われているとしても、体を壊しては元も子もございません。もう少し体を大事にした方が良いと思います。今日はお勉強を止めて、ベッドでお休みください」

 僕はこの場を収めるために

 「分かった」

 と、答えて、ベッドに向かった。ベッドで僕が横になるのを見届けたセバスは、僕のおでこを手で触れて熱を測り、何回か頷く素振りをして、部屋を出て行った。ドアが閉まる音がして、僕は一人になった。


 ベッドの中で僕は考えている。しかし、自分がアルスと呼ばれることに違和感しかないことに気づく。これが、今感じているものになる。それはなぜか?僕の頭の中には、プログラムのリリース納期に追われていた、金子 治の記憶が鮮明にあるのだ。記憶の中の金子かねこは...  


 男ばかりの工学部を出て、比較的大きなWebゲーム会社に就職していた。今回、入社5年目でプロジェクトリーダーに抜擢され、オンライン・ストラテジ・ゲーム”時の護り手”のバージョンアップ作業を行っており、そのリリース直前環境のユーザーテスト結果も上々で、本番移行を目前だと評価され、ホッと一息つきながら仲間と雑談していたのだ。

 そんな時に、技術本部長から呼び出しがあり、例の如く、しれーっと仕様変更を言ってきた。敵とのバトル方式をターン方式からタイムバトル方式に変更してくれと言う。クライアントからの要望らしい。ほぼテスト完了したプロジェクトの基本システムの変更は致命的なバグを生むことが多い。そのため、リリース直前の変更は受け入れられないという抵抗したが、本部長はクライアントからの強い要望だと言う。βリリースでさんざん、クレーム入れられてやっと単独方式をチーム制バトルに変更して、ファイナルリリースまで持ってきたというのに、この本部長は何を考えているのだろうか。金子は本当に抵抗した。しかし、本部長は言うのだ。

 ”君にしか頼めない、助けて欲しい”と。

 そして、ずるくも、60歳近い年齢にも関わらず、部長の半分の人生も生きていない自分に土下座して頼むのだ。いつもこの手だと分かっているのだが、これをやられると断れなくなってしまう金子なのだ。それをいつも利用されてしまう。

 リリースの2週間の延長を余儀なくされ、プロジェクト員をなだめながら、最初の三日を徹夜で過ごし、コマンドバトルに時間の概念を加えるコードを追加し、また、敵を独立して動かす並列処理を追加した。このデバッグを四日で終わらせるためにバグ取りしながら修正をし、徹夜明けの朝からフィールドテストができるところまで持ってきたとの記憶はあった。しかし、それ以降の記憶がない。もしかして、死んだ?それで、転生?

 

 「困った」

 僕はベッドで呟いた。思わず、ベッドの天蓋を見つめる。しかし、何となく、アルスと言われる記憶が薄っすらと金子の記憶を覆っている気がする。

 その記憶では、アルスはこの国、魔法のあるマギビスタ王国のブルームバーグ公爵家の三男、7歳の国立第一高等学院の初等部の2年生だった。

 「困った」

 アルスでもある金子である僕はまた呟くと、寝ている状態で小さな手を空中に出して、子供の体になったのを確認すると大きなため息を吐いた。何でこうなった。まだ、徹夜の疲労による夢の中にいるのか?それとも、死んだ。考えても良く分からない。

 悩んだ。

 しかし、色々考えても結論は最初から出ている。夢でもないのであれば、この世界でアルスとして生きていくしかないのだ。考えれば簡単だ。簡単なのだけれど、アルスがどういう人物か良くわからないし、それで、アルスとしてやっていけるかも分からない。それに、この魔法がある国なんて旅行したこともないし、そんな国がどこにあるのかも良く分からない。分からないことずくめだ。

 どうやって生きていこうかと考え続けた。やがて、それも考えることをやめた。解決策が無いのだ。致命的にこの世界の知識が無い。情報がなければロジックは組み立てられず、処理も追加できない。

 結論は現在をどう対処するかということだ。今日を無事過ごせなければ、明日がない。単純な解決方法だった。


 そこで思いついたのが、本から知識を得れば良いということだ。それでなんとなく起き上がり、興味本位で、先ほど、アルスが読んでいた魔法の本を取りに机に戻った。机で読みたい気もするが、また、セバスがやって来て小言をもらうのも良くない。本を抱えてベッドに戻り、ベッドに腰かけて読み始める。部屋の中は暗く、読みづらくはあるが、読めないことは無い。

 魔法概論という本のページをめくる。

 最初のページの序のところにあったのが、”人には魔力があり・・・”の文章だった。次のページには、魔力の成り立ちの類推があり、魔力は魔素から作られ、この世界のどこかに魔素が噴き出す穴があって、それが空中に魔素をばらまいているらしく、それを吸い込んだ人は魔素を魔臓というものに取り込むと魔臓が魔力として体内に貯蔵するらしい。

 そうか、肝臓のように、ブドウ糖をグリコーゲンして貯めているような感じか?

 当然、動物もそれを吸い込むが、魔臓を持たないため人間のように魔力として保持することはできないが、偶に亜種がいて、魔石という形で溜め込む動物がいる。これが魔物であり、魔石のもつ魔力で通常種より、強く賢いとのことだ。

 魔法と言い、魔物と言い、金子がいた世界のファンタジーの産物がこの世界にあることが分かり、僕は少しだけ、自分が好きなゲームの世界に似たこの状況にワクワクしてくるのが分かった。

 さらに、読み進めると、すべての人が魔臓を持っているため、魔力量の多少はあるが、自身が持つ魔力で魔法は皆が使うことができるとある。また、魔力量は体の中にある魔臓の大きさによると言う。さらに、魔力には属性があり、その属性は魔臓から出ている魔臓管の種類で決められており、その魔臓管が太ければ太いほど強力な魔法が使えるということだ。


 なるほどである。

 しかし、読み進めても、この本を読み理解することが生きていくことに繋がるかどうかは判然としない。でも、面白い。面白いが、文章が固すぎて、繰り返し、読まないと意味が良く分からない。意味が分かれば確かに興味深い。

 例えば、先ほどの魔臓の記述の箇所は、”天が人に遣わした不思議な力を魔法と呼び、その源を魔臓と言う。この魔臓は全ての人に生まれながらに与えられし物、動物とは明確に区別されるものである。これは、天が魔臓と魔石で人と動物の住む世界を分け、動物の上に立つのが人であることを啓示する。魔臓から魔力を取り出し、魔法として操るものを魔法士と言い、魔石から魔力を放出する極めて残虐な動物を魔物と呼ぶ...”

 これを前後の文脈と繫げながら理解することを余儀なくされるのは苦痛で、中々、この本を読み進めることができない理由なのだ。どうも、解析できていない力や現象を全て、天とか神とかの教え、理で説明してしまおうとする意図が見え隠れし、分かってないことをさも分かっているかのごとく記述しようとしているために、何か、ずばりの表現が少ない。技術解説書というよりは、技術的な感想文に近いので、エッセンスを誤解のないように紐解く必要がある。

 しかし、金子には矛盾を含むユーザーの要件定義書からアプリケーションを完成させる特殊能力があった。何が役に立つか分からない。その読みにくい文章の中エッセンスを拾いあげながら、理解していくことが可能だった。時間がかかるのだけれども。

 それでも、僕はまだ見ぬ魔法を使って見たかった。そのために、本を読み進めた。

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