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「ハーモーニーサウンド」 中盤脱落のクソボンボンだけど ロボットには乗りたいので知識チートします。  作者: sirosugi
アフタースペース297コーダ リンガット14歳 アビス訪問編

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83  アフタースペース297コーダ 友人達が驚愕していました。

 一方そのころと見せかけて・・・。

(アニモ・ホープ)


 アビスへ招待されてから、1週間、ゆったりとしたスケジュールの中で、私は退屈という感情を持て余していた。それだけアビスの視察、もとい技術交流は、正直に言えば拍子抜けだった。


「いかがでしかたかな、アニモ様。我がアビスの技術は。」

「そうですね、ホープとは基礎となる思想から異なるので大変興味深です。」

「そうでしょうな、異なる思想や技術の交流は意外な驚きに満ちているものです。何か、お気づきな事があれば、なんでもおっしゃってください。」


 口先ばかりで中身の伴っていない言葉も聞き飽きた。おべっかばかりで聞くに堪えない。

 技術活用へのアドバイスが欲しい。そういう理由での招待であったが、ここ1週間で行われたのはアビス独自の技術の紹介と接待。いや、アビスの独演会でしかなかった。たしかに、ホープにはない設計思想や技術体系は興味深いものがあったし思うところがあった。しかし、一方的な説明と接待ばかりで、他者の知恵など要らないという傲慢さが隠しきれておらず、その目的が更なる資金援助でしかないのは明らかだった。まあ、よくある話だ。

 そもそもとして、メインである「新型エンジン」についての話が未だに出ていない。事前に送られたカタログスペックでは、既存のエンジンの倍以上のポテンシャルとのことだが、そのエンジンの説明は先延ばしにされ、外宇宙を探索するためのシステムや技術の説明ばかりで、もったいぶられている。


「今少しお待ちを、現在調整中でして。」

 

 私を担当しているヴァ―チャン博士はそう言って、何度もこちらの質問を交わしている。その態度が不信感につながっている自覚がないのか、あるいはそれ以上の価値をエンジンに見出していのか、どちらにしろ、面倒な男だ。

 ヴァーチェン・ラム、新元素とその活用法の発見者で、革新的なエンジンを保有する技術者。とのことらしいが、私からすると、よくいるタイプの権威主義な研究者だった。自分の成果物に自信を持ち、それが評価されるのを当然と思っているタイプ。自分の価値を理解できない人間を低能と罵り、価値を理解し、金を出す相手には尻尾を振る。残念な事にこういうタイプの研究者の方が出世するのだから、嘆かわしい。


「ですが、ご安心ください。数こそ少ないですが、一つでも既存技術を書き替えるレべルの性能です。」

「それは、楽しみですねー。」


 リップサービスも大変だ。それでも適当に煽てて、情報をペラペラと話すまでは我慢しなくてはならない。同行している技術者たちの報告を聞く限りでも、私がこの男から聞き出さないと新型エンジンの詳細はつかめないのは明らかだから。

 兄がこの一件を私に話さなかったのは、私を試すためか、それとも取るに足らない事情と判断したからから、おそらくは後者だと思う。兄が今回の一件を重要視しているのは、友人が関わっているからというのが大きい。

 それならば、新型エンジンの情報は少しでも掴んでおきたい。数が少ないとなればホープで優先して回してもらえるようにする。その上で、友人の協力を得られれば、言うことはない。

 まあ、その友人がどこにいるかもまだ、掴めていないのだけれども。

 

 そんななんとも言えない日々を過ごしていたある日、事態は急に動いた。

 

「お待たせしました。本日は新型エンジンの稼働実験をお見せしたいと思います。」


 もったいぶるだけもったいぶっていたのに、今日になって急に新型エンジンの性能をお披露目すると言ってきたのだ。おそらくは何かあったのだろう。通信で私を招待をするヴァーチャンはどこか慌てた様子であった。此方の希望に沿った急な予定変更と言っていたが、その態度にはどこか焦りが見えていた。

 その証拠というわけではないが、案内された観測室にはもう一人の客人がいた。


 長い手足にぴったりとフィットするスーツを着て、着物のような上着を羽織っている。長い髪をアップでまとめているのでぱっと見は花のようにも見える。何より目を引くのは美しすぎる顔だ。切れ長の瞳にふっくらとして健康的な唇、凛としながらも華やかな美しさは一目見れば忘れない、そんな美人だ。

 数名の護衛を引き連れた彼女は、私を見るなり観測室のソファーから立ち上がって優雅に一礼した。


「これは、アニモ卿。お会いできて光栄ですわ。」

「テティス様、ご無沙汰しております。5年ぶりでしょうか?」

「そうですね、それくらいになるかと。」

「懐かしいですね、もうそのくらいになりますか。」

「お互い、成長しましたね。」


 意外な人物との再会。私は驚きつつも納得していた。この場に彼女がいることの理由には察しがつく。

 ビックオーシャンは、13あるコロニーの中でも最も重要な役割を担うコロニーの一つだ。人類の生存によって不可欠な水資源の生産拠点であり、貴重な海洋物資の生産も行っている。一方で拡大し続ける人口に対して、将来的な供給量に不安あるのがビックオーシャンの現状だ。その現状を打破するために、近年では生産性の向上のために意欲的に、あらゆる新技術の導入している。とくに、昨年、領主が代替わりしてからはその流れが顕著であり、ビックツリーの二足歩行ロボットを大量に導入したりもしている。

 そんな彼らがが従来よりもかなり性能が良い新型エンジンの情報を掴めば、テティスクラスの大物を派遣するのも納得できる。それに、


「ホープでも注目されている技術なら、期待できますね。」

「ええ、私個人としても気になることがあったので。」

「奇遇でわね、私も今回のエンジンについては気になる情報があったんですわ。」



 驚きに思わず親し気な会話になってしまったが、テティス様からは、以前のような堅苦しさが抜けていた。その声には、同世代の人間と会えたことに安堵した気持ちがこめられていた。


「もしかして。」

「ええ、アレが関わっていると聞きまして。」


 お互い、言葉にしなかったが、今回の一件に関して、同じ人物の顔が浮かんでいた。どうやらあの有名人は、ビックオーシャンの姫君すら虜にしたようだ。不思議な事に、ロマンスとか色気のある雰囲気を感じないのが、実に彼らしい。


「おお、お揃いでしたか、お待たせして申し訳ありません。」


 もっと詳しく話そうかどうか迷っていたら、ヴァーチェン博士が到着して、会話の主導権はとられてしまった。私は勧められたソファーに腰かけて、彼の説明に耳を傾ける。


「本日お披露目させていだきます、新型エンジンですが、まだ試作段階でして数こそ少ないですが、その性能については皆様を驚かせるものだと確信しています。」

「試作段階というと、現状で何個あるんですか?」

「現在、11個のエンジンの生産に成功しています。そのうち3つはアビスの船での運用が開始され稼動データーを収集しています。」


 つまり、8個。たった8個しかないエンジンのために、二つのコロニーの大物を呼び出したというのだから、よほどの自信家か、それだけの性能ということなんだろうか。


「たった8個ですか。ずいぶんとまあ、強気ですわね。」

「ええ、量産化にはもう数年の時間がかかるかと。だからこそ現時点では一部の信頼できる相手にしか情報は開示しておりません。」


 呆れた様子のテティスに、ヴァーチェンは意味ありげに微笑み、端末を操作してモニターを映し出す。そこには、事前に報告されたエンジンが観測機に接続された状態で置かれていた。


「こちらのエンジンの核となるのは、コア部分に封入された新元素でして、私が発見したものです。この新元素は、一定の周期の刺激を与えることで半永久的に運動するという性質がありまして。」

「半永久的?」

「はい、実際こちらのエンジンはすでに半年以上稼動しています。」


 そういって表示されるのは半年前の起動実験の様子とその後のエネルギーログだった。私とテティス様は半信半疑でそれらを確認するが、すぐには判別しかねる情報量であった。


「まるで永久機関ですね、夢物語ですわ。」

「そうですね、このログの精度が気になるところです。」


 私達の反応は懐疑的だった。半永久的に動くエンジン?そんなものはこの宇宙時代でも夢物語と笑われる技術だ。この博士は妄想に憑りつかれているのではないか、そう思うほどに、その言葉は荒唐無稽だった。

 

「ふふふ、そう思われるのも不思議ではないでしょう。ですが、事実なのです。此方のデーターはさしあげますので、いかようにも分析してくださって構いません。それに、今回はもっとわかりやすい証拠をお見せしましょう。」


 私達の反応は予想通りだったのか、博士は自信満々な態度でさらに端末を操作した。するとモニターの向こうで、エンジンがゴーと音を立てて動き出した。いや、コア部分の黄色の光はゆっくりと回転していたが、それが目に見えて加速しだしたのだ。

 同時に接続された観測機が、リアルタイムで生み出させるエンジンの出力を表示していく。


「これは?」

「本当ですの?」


 私達は専門家でない。だが領主一家としてそれなりの教育を受けてきたし、今回の視察に向けて事前に下調べもしている。なのでその数字がどれだけでたらめか理解できた。伸び続ける数値もそうだが、その上昇速度は、既存のどのエンジンよりも優れている。これの数値が本物なら大型船でも今の半分の速さで最大船側まで加速することが可能だろう。

 何より恐ろしいのは燃費だ。よりはっきりと結果を見せつける為か、エンジンの燃料と思われる透明な小型タンクが一つだけ接続されているのみ。本来ならば小型船を起動させることすら不可能な量しかない。


「先ほど申し上げた通り。エンジンのコア部分が半永久的に動き続けるため、燃料は加減速のためにわずかに使用するのみです。現在運行中の船は、通常の100分の1程度の燃料で稼働しています。」


 あまりにもバカげた話だ。だが、博士の声に嘘はなかった。

 映像や観測機を操作して数値を誤魔化している可能性がないわけではないが、私達を相手にそんな詐欺行為をするのはデメリットでしかない。それこそ、実物を見たいと言えば、すぐにでも現場へ案内されるだろう。


「これは、世界が変わりますわ。」

「その通りです。あまりに驚異的な性能故、アビスだけで抱え込むにはあまりに大きすぎると判断したわけです。」


 たかがエンジン、されどエンジンである。既存のものと入れ替えるだけでこれだけの性能が発揮されるとなれば、人類の生活は飛躍的に向上するだろう。これは新技術というよりはアーティファクトとかレガリアと呼ばれるべき存在だ。


「お二人にご理解いただけて幸いです。もっとも、エンジンにはいくつかデメリットも存在しますが。」


 私達が驚愕と共に理解を示すと博士は追加で説明をしてくれた。だが、彼のいうデメリットも目の前のおかれた成果を考えれば誤差のようなものだった。

 まず、生産が安定しないこと。新元素の入手経路は特別な物で入手にはそれなりのコストがかかるらしい。

 次に、実用化までの変数が安定していないこと。特殊な性質をもつ新元素は安定すると、恒久的な運動をするが、そうならない場合はある程度で停止し、消失してしまうため、従来品よりもコストがかかる。また、無理に動かそうとした場合は暴発し、爆発する危険があるとのことだった。

 さらには、その安定化への道のりが果てしないということ。限られたリソースの中で、暴発の危険性を考えると、安定化させるのは天文学的な確率の変数の一致が求められる。何百、何千という試作品の中から、数少ない成功例が11個のエンジンであり、今後増える可能性は低いとのことだ。


「それゆえに、まずはホープとビックオーシャンの方々にご相談をさせていただいたわけです。技術が確立する前に、残り8個のエンジン、いや既に運用している3個も含めた11個のエンジンは、革新的ですが、争いの火種になりかねません。」

「なるほど。」

「その通りですわね。」

 

 たった11個。いや11個もある。このエンジンは1つだけでもコロニーのシステムを根幹から変えてしまう。それだけのポテンシャルがある。博士はそう言いたいのだろう。


「エンジンの最大出力はどれくらいなんですか?」

「現状ではこのサイズでも大型船の運行を、先ほどいったスペックで運用可能です。配線や運用次第ではもっと効率が上がると推測しています。」


 つまりは未知数ということだ。今後の研究次第では、このエンジンの価値はどこまでも跳ね上がるだろう。そして、その開発者であるヴァーチェン博士の価値も。

 

「して、お二人はこのエンジンについて、どう思われますか、率直な意見を聞かせていただきたい。」


 分かっていてこの男は、私達2人をこの場に呼び寄せたのだ。13コロニーの中でも特に力があり、力や技術を求めている2つのコロニーの代表者である私達を。

 技術を先んじて入手するために、いくら投資するか。

 この場は、技術交流の場ではない。技術を買い取るための競売所にするために。


「参りましたわね。私の一存で同行できるレベルじゃありませんわ。」

「そうですか。アニモ様はどう思われますか?」

「テティス様と同意見ですね。これだけの大物、兄と相談する必要がありますね。前向きにですが。」

「そうですか、ぜひご検討を。」


 何が嫌らしいかといえば、私達がこういう返事をすることを予知していたことだ。その上で、言外に早い者勝ちですよと言っている。この場で見聞きした情報を私達が無視できず、相手に先を越されないように多くの資金や好条件を提示するのをこの男は期待している。

 気に食わないが、それに乗るしかない。それだけの価値がこの新型エンジンにはある。


「では、本日はここまでということにしておきましょうか。」


 そう言ってヴァーチェンは実験を終わらせようとした。私たちも反対しなかった。今は一刻も早く、兄と連絡を取ってこのエンジンの詳細を報告し、取り扱いについて相談しなければならない。

 しかしながら、私は、ここで自分の未熟を悔いることになる。

 新型エンジンのポテンシャルとその希少性を前に冷静さを欠いていた。そう思わざるえない。なぜなら、この時、私は最も信頼し、警戒すべき友人の存在を失念していたからだ。


「おやおや、ずいぶんと生き急いでいるじゃないか、ヴァーチェン。」


 話が終わり、急ぎ立ち去ろうとしたときだった。観測室の扉が開き、2人の人物が堂々と入場してきた。


「なっきさま。」

「あれー、アニモに、テティス様じゃないですか、お久しぶり。」


 1人は研究者と思われる女性だった。背が高く、見た目のインパクトはテティス様にも負けず劣らずの美人。彼女は堂々とした足取りで室内にはいり、ヴァーチェンを睨みつけていた。


「客に対して情報を隠すのはいささか不義理だと思うぞ。報告書は届いているだろうに、ヴァーチェン。」

「な、あんな戯言を信じろと。あんなものは、偶然うまく行ったに過ぎない。」

「何を言っているんだ、私達の成果を脅威に感じたから予定を繰り上げたのがバレバレだぞ。愚か者。」


 なにやら白熱して言い合う2人の研究者たちの様子はとげとげしく興味深いものだった。しかしそれ以上に私もテティス様ももう一人の人物に意識を奪われていた。


「「リンガット、なぜここに?」」

「いや、それ、こっちの話なんだけど?」


 こちら側の人間であるはずのリンガットがなぜ?

 いや、確かに、リンガットがアビスの研究に協力しているとは聞いていたけど。

 なぜそんなに馴染んでるんだろう?


 私達は3人は、そろって間抜けな顔で、久しぶりに顔を見合わせるのだった。

 

ヴァーチェン「貴重なうちに、高値で売りさばいたろう。」

アンボル  「そんなうまい話があるわけがないよな。」

リンガット「あれー、なんで2人がここに?」


 キャラクターが勢ぞろいしたところで、次回はまたアクションパートです。

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