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「ハーモーニーサウンド」 中盤脱落のクソボンボンだけど ロボットには乗りたいので知識チートします。  作者: sirosugi


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0 正史  アフタースペース300 4月 リンガット・ツリーの最期

 原作の世界。

 人類が宇宙に移住を決意し最初のコロニーが作られ、およそ300年。

 いくつかの技術的な革新と深刻な環境破壊によって、人類は母なる地球を見限り、その繁栄の版図を広大な宇宙に求めるようになった。

 地球軌道上に造られた無数のコロニーは13の集団に分かれ、それぞれの風土と文化、技術をもって独立し、広いを宇宙を開拓した。今やコロニーの人口は100億を超え、かつての地球と同規模の社会体制が作られていた。

 しかし、宇宙という過酷な環境は、人が生活するにはあまりに厳しく、反映するための資源には限りがあった。アフタスペース298年、13番目のコロニー群「ホープ」がコロニー連合からの独立を宣言し、一部の資源を独占し始めたことをきっかけに、各コロニーの緊張状態は暴発し、貴重な資源を奪いあう紛争が各地で激化していった。

 宇宙という広大な世界を手にしていながらも、人類は戦いを捨てることができなかったのだ。

 

 争いが激化して2年。13あるコロニー群のいくつかが崩壊し、今日また一つのコロニー群がきえようとしていた。


 居住コロニー「ビックツリー」の近くで勃発した領主軍とクーデター軍の決戦。単純な戦力差がで10倍以上の勢力を誇る領主軍の勝利を、誰もが疑っていなかった。


「な、なぜだ。機体スペックも数もこっちが勝っていたのに。なぜこんなことに」


「それは、お前たちがバラバラだからだ。ただの雑音が集まっただけのお前たちが、俺たちに、俺たちの歌に勝てると思うな。」


 華奢な見た目をした剣士のようなロボット群は、連携して、隙間ない攻撃を展開し、無骨な装甲をまとった領主軍の機動兵器を次々と撃ち落としく。その様はまるでワルツのようだ。


(何をしているんだ。)


 モニター越しにその光景を見ていた俺は、歯がゆい気持ちでその光景を見ていた。領主軍は数も火力も勝っているのに、安い挑発にのって一体のロボットを追撃し、伸びきった隊列の横っ面を食い破られていく。


(隊列を整えて、火力で圧倒すればいいじゃないか。)


 もしも自分が指揮官なら、戦力比が確認できた段階でそういう作戦を立てたはずだ。いや、今からだって防御を固めて隊列を組みなおせば、犠牲はでるが逆転は可能だ。

 だというのに、領主軍の指揮官であるリンガットは、執拗に一体のロボを追い回し、結果として戦線は崩壊していく。それを見て、頭の回る一部の指揮官はこっそりと部隊を引かせ、利に敏い指揮官は、漁夫の利を狙うために動きを止めた。

 気づけば、リンガットが乗る最新機ディープベース以外の機影はレーダーから消えていた。


「な、なぜだ。まだ部隊は残っているはずだろ。」


「坊ちゃまは、あいからず、見たいものが見ないようで。」

「はっ。」


 突然の通信と同時に行われる狙撃。それによって最大火力である大型ライフルが爆発し、推進装置の一部に異常が発生し、ディープベースはその場に釘付けになった。

 機動力を失った愛機であるが、その優れた索敵能力は、背後から自分を狙撃した黒塗りの機体を捕らえていた。


「あのとき、アナタに追放されてよかった。こうして、敵を討てた。」

「な、なにを。」


 その機体のパイロットが、かつて自分に仕えていた侍女であり、幼いころに理不尽な理由で追放した女性であることにリンガットは気づけなかった。わかることは、あえてライフルを狙い撃ちにするほど射撃精度の高い機体であることと、あの機体に狙われている以上、もはや逃げようがないことだ。


「リンガット卿降伏してください。領軍のほとんどが降伏、または逃走しました。あなたにはもう、守るものも、守ってくれる見方もいないんです。」

「はは、山猿どもの姫がいっちょ前に指揮官気取りか。」


 この後におよんで、となりのコロニー群ビックオーシャンの支配者、テティスは通信越しでも神々しさを感じる美しい顔を悲しみにゆがめながら投降をよびかけてきた。反乱軍を支援するという名目で、彼の城であるビックツリーへと攻め込んできた怨敵であり裏切り者。それが訳知り顔で自分を説得していることが非常に腹立たしい。

 完全に詰んでいることは、リンガットにもわかっていた。彼の怒りやプライドとは別に、彼の ESPは、冷静に情報を精査し、周辺にいるはずの味方部隊の不在や、機体の状態を正しく把握し、万に一つも逆転の目がないことを、彼に知らせていた。


「お前らだってホープの連中と変わらない、支配欲に溺れて、他者を食いものにして、自分たちの版図を広げる。平等、平和?どんなにそれっぽい言葉を並べようとそれが人間の本質だ。クズどもを支援して、善人になったつもりか、このビッチが。」


 もはや助からない。助かったとしても自分のプライドが今後のみじめな生活を耐えられない。囚われて飼い殺し、よくて追放。生まれてからずっと、コロニーの支配者として育ってきた彼にとってそれは耐えがたいものだった。


「こういうのは順番なんだ。弱肉強食の理通り、俺を喰らったお前らもいつかは食われる。それを地獄で見ててやる。」


 オープンチャンネルで呪詛をバラまきながら、残ったブースターを起動させる。ライフルを失ったことで火器はもう残っていない。だが、加速させた質量をぶつけることは、まだできる。


「お前も道連れだー。テティス。」


 絶叫させながらレバーを引いて、遠くにある敵の旗艦、そこのブリッジで自分を見下すテティスたちに対して、機体を加速させる。


(ここで自爆モードにして脱出すれば、主人公機を巻き込めたかもしれないのに。)


 そんな見え見えの特攻が成功するわけもなく、僅かに進んだ先には、彼に部隊を壊滅させた忌々しいあの機体が回り込んでいた。


「テティスを馬鹿にするなー。」

「はっ、何も知らないクソガキが―。」


 無邪気な怒りとともに迫る巨大な剣。広大な宇宙空間の戦闘において、無意味なロマン兵器と思ってリンガットが開発を中止させた兵器がとどめの一撃となるのはなんたる皮肉だろう。


「くそが。」


 その質量に押しつぶされ、リンガットも彼の愛機であるディープベースも今度こそ停止する。わずかな有機物を含んだ鉄の塊は、そのまま宇宙に放置され、誰にも見向きもされることもなく、宇宙に漂うただのデブリとなった。


(なぜ、回収しないんだよ。鉄の塊でもOSは残ってるかもしれないし、機構の一部は残っているはずだろ?あのとんでもギミックをなぜ生かさない。)


 勝利の喝采にわく反乱軍たちを眺めながら、僕はそんな感想を漏らす。何度見ても、ギャグである。のちに、ボンボンバーンとも言われる中盤の名シーンであり、本作でも胸糞キャラで有名なリンガット・ツリーの最期は、その見苦しさも含めてネットミームにもなるほど有名だ。


(やっぱりくそ展開なんだよなー。) 


 軌道戦器「ハーモーニーサウンド」は宇宙を舞台にしたロボットアニメだ。

 孤児だった主人公「カナデ・シャルフ」は、コロニー「ビックツリー」で起こったテロ事件に巻き込まれ、密かに開発されていた新型兵器「フォルテ」に偶然乗り合わせてしまう。その後、孤児仲間たちとともに、宇宙船を盗み出し、ビックツリーから逃げ出し宙族と活動することになる。

 新型機の性能や各自の才能によって徐々に頭角を現していくカナデ達だが、宙族に襲われていた、ビックオーシャンの姫であるテティスを助けることで、彼らの運命は大きく変わる。

 宙族から雇われ傭兵となったカナデたちは、仲間を増やし、かつて自分たちを虐げていたリンガットへの復讐と故郷の解放のために「ビックツリー」へと舞い戻る。

 それが、物語中盤、ボンボンバーンへとつながる、「ビックツリー反逆戦」である。

 この戦闘は、主人公たちの存在をコロニー中に知らしめるだけでなく、既存兵器では、新型機に叶わないという定説を作り出す歴史的な一戦となる、重要な戦いであった。

 リンガット・ツリーは情勢の読めない大馬鹿野郎として、ファンの間でいろんな意味で有名だ。もうね、出自も振る舞いも最悪なうえに、あの末路なので、本名よりもボンボンと言われるほどだ。


(ディープベースはいい機体なのになあ。)


 数あるロボットが出現する本作において、リンガットが使う人型兵器ディープベースはこの末路の所為で最弱の機体と言われている。

 だが、カタログスペックは決して悪くない。

 重装甲、重火器、超加速というコンセプトで特注されたハイエンド機は、単機で一個中隊に匹敵する火力を有し、複数の随伴機と連携させることで、多方面への制圧射撃が可能となる火力至上なハイエンド機で、物語初期では、主人公の駆るフォルテと並んで次世代の主力機として扱われていた。

 リンガットは、そういった機体の利点生かさず、敵を追い回すという戦法をとり敗北したことで、無能の評価がさらに高まっている。

 まあ、物語後半になって、全方位バリアという射撃を無力化するチート兵器が登場したことで、戦いの主体が高機動兵器同士の白兵戦となってしまい、射撃系の兵器は軒並み雑魚認定されてしまうんだけどね。

 そんな不人気機体だけど、僕はかなり気に入っている。他のロボが色々な形で商品化されていく中、唯一販売した立体モデルを何体も購入し、カラーリングや改造して遊ぶぐらいだ。

 主人公がフォルテではなく、ディープベースに乗り合わせていたらと妄想したり、トライアルが続いた場合の未来の姿を想像してデザインを描いたりもした。

 それくらい僕は、ディープベースは好きだ。

 だからこそ、それを生かせなかったリンガットは大嫌いだ。恵まれた環境で、恵まれた機体。だというのに、甘ちゃんなボンボンであるために、敗北し、夢のある機体を台無しにした。

 本作で一番の嫌われ者、リンガット・ツリーがざまあされる展開はスカッとする。しかし押しの機体が無様に敗北する場面でもあるので、見るたびに、僕は複雑な気持ちになった。


(まあ、今日も見ちゃうんだけどね。)

 

 そのまま、夜通し、アニメを一気見にする。こうして貴重な休日を消費する。

 それが僕の最期の記憶だったりする。



 新作シリーズのスタートです。

 ロボットものです、ご都合主義なSFです。

 基本的には二日に1話ぐらいのペースで進めていくつもりなので、縁がありましたらお付き合いください。

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