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それから由佳はあゆみから受け取ったカードキーで、研究所の入口を開けた。鍵は昔のままだと駄目ですからね、と、あゆみは説明した。
「うわぁ…。」
由佳とランは同時に声を上げた。見慣れたはずの内部がまるで違うものに見えた。なにもかも以前と同じ建物なのに、初めて写真に写る子供のようにしゃきっとしていた。えへん、とあゆみは咳ばらいをし、
「以前のこの建物は木造でしたが、こちらは鉄骨木造です。強度が必要な部分はすべて鉄骨にしてあります。」
こういうリフォームの番組昔テレビで観たな、とランが呟く。なんということでしょう、と、玲奈が乗っかる。ひとつだけ改良点があります、とあゆみが続ける。
「更衣室や会議室は必要無いので、研究室を広いひとつの部屋にして、浴室を拡張しました。以前の第二研究室は、リビングダイニングキッチンへと変貌しております。」
なお、敢えて二階の個室は以前のままの間取りになっています、というこだわりであゆみは話を終えた。
「そういえば二階建てだったわね、ここ。」
「二階に用ないもんねえ。」
由佳とランは改めてあゆみに礼を言った。
「本当にありがとう。私たちの思い出の場所を守ってくれて。」
あゆみは笑顔で頷いた。予定合せてみんなでパーティしょう、とランが提案した。
「このまま泊まって帰りたいくらいだけど、いろいろ片付けたいことあるもんね。」
「そうですね、今日は明るいうちに帰りましょう。」
それにしてもあゆみさんってお金持ちなんですね、と玲奈が言った。
「こんなにポンポン家が買えるなんて。」
「彼女の仕事は単価が凄いから。」
「え、何の仕事されてるんですか?」
霊能者…で、いいの?と由佳。そうですね、とあゆみ。
「最近、開き直りまして。霊に関する能力者には違いないんで。それでいいかなと。」
「霊魂を吸い込んで消滅させちゃうのよ。除霊とかじゃなくて。」
「えっ…それって、具合悪くなったりしないんですか。」
「もう長いことやってるけど、そんなこと一度もないわね。ただ吸い込めるのよ。修行して手に入れた能力とかじゃないの。」
「へぇー…いつかお仕事同行させて頂いてもいいですか?」
「結構好奇心旺盛ねあなた。」
さ、とりあえず一回帰りましょう、と由佳が皆を急かした。またあれ乗るのか、と玲奈が眉間に皺を寄せた。
ひと月ほど経ったある日、パーティーは開かれた。四人は大いに食べ、大いに飲んだ。たくさん写真を撮った。四人ともそんなことを今までしたことが無かった。自分の境遇や、運命に振り回されて難しい顔をしたり泣き叫んだりしているだけだった。でも、どうにかその時その時の答えを手に入れながら生き延びてさえいれば、こんな風に幸せな時を過ごすことも出来る。優しい悪魔たちは後片付けを済ませて、みんなで入浴し、四つのベッドを繋げて寄り添って眠った。いつかはこんな時間も終わる時が来るだろう。でも、この日自分たちを満たした思いは心の中に根ざして、ずっと消えることはないだろう。失ったものは失ったままではない。誰かが席を立ったテーブルには、また新しい誰かが腰を下ろすだろう。そのたびに生きる意味は、ほんの少しずつ意味を変えながら次の夜明けをまた彩るのだ。
【了】
ありがとうございました。




