掌返し
「ガルダインの特効武器……占い師はその事を言ってたのか。だが、断る。私が装備したところで、お前は当然ガルダイン討伐に参加する。参加者の誰かが装備すればいいのだから、メリットは何もない」
確かに……黒鉄さんがソロで倒すなら良いけど、【ガルダイン討伐】じゃないと倒せないなら、話は別になる。誰が装備したところで報酬が変わらないとすれば尚更だ。
「お前は金儲けのために【求】をしているのか? それともゲーム好きのどちらだ? クエストの失敗もゲームの醍醐味だ。私も重要な場面でミスを犯した事もある。それだけじゃない。私が協力したところで、LVの差が歴然だ。自身が無双するのは良いが、お前のクエストなのに、それを眺めるだけになるぞ」
うっ……返す言葉もない。俺は金儲けのためにしてるわけじゃなく、【求】のゲーム自体を楽しむためにやっている。他のプレイヤーに追い付くために掲示板の攻略とか見ているけど、それも失敗するプレイヤーがいたからこそ。オンリーワン職業は誰にも頼る事が出来なくなるから……
「俺は金儲けのためにやってるんじゃないので……オンリーワン職業なら、これを乗り切らないと駄目って事ですね」
黒鉄さんは厳しい言葉を投げつけたけど、ブラック会社の上司から言われる嫌味な説教と全然違うのは、言い方や態度で分かる。互いがオンリーワン職業だからなのかもしれないけど、俺のために言ってくれてるのが分かる。
「職業別なんですけど、【盗賊】のプレイヤーとクエストが重なったんですよ。それもクエスト内容が変更になったばかりで……半魔の子供と一緒に行動するはずが、敵に捕まってしまったみたいで……じゃなくて、頑張ってみます!!」
思わずクエスト内容の一部を話してしまった。頑張るつもりが、気持ちとは逆に弱音みたいな台詞を吐くところだった。
黒鉄さんに頼ろうとした気持ちを消すためにも、スライムの絵が描かれた場所に向かおう。LV上げと毒の取り込み、それにポイも毒が欲しいはず……
「……ポイ? 黒鉄さん、ごめんなさい。一緒に行動してるNPCなんですけど……毒の素材を持ってたりしますか?」
「いや……今は持ち合わせていない」
ポイは黒鉄さんが気になるのか、側でジロジロ見るというか、臭いを嗅いでいる。黒鉄さんが毒の素材を所持していたら、ポイの行動も分かるんだけど、黒鉄さんはそれを否定した。
ルパソは毒を所持していたからで、ポイは他のプレイヤーを警戒する面もある。毒以外で興味を持つのは初めてかも……
「……半魔の子供はこの子とは別にいるのか? 拐われたのは一緒に旅をしていたわけじゃなく、別の子供だと……」
ポイが半魔の子供? 毒好きな奴だけど、ウルみたいに獣の耳があったりしない。どちらとも言い難いのが現状だ。だけど、黒鉄さんも半魔の事を知ってる素振りだな。ポイが臭いを嗅いでいるのを追い払いもしない。もしかして、【要塞】の職業別クエストにも半魔が関係してるのか?
「気が変わった。協力してやる。その間に半魔の子供を救出しろ。そのためにフレンド……パーティーも組むぞ」
前回、フレンドになる事は拒否したのに、パーティーまで組むとまで言ってくるなんて余程の事じゃないか?
「いや……でも、さっきは失敗するのも経験みたいな事を」
「これは私が半魔の子供に会う……私自身のためだ。互いに利用する関係と思えばいい。私を壁役、囮役にすればいい」
囮役……ルパソが引き受ける役目だったよな。ウルがいなくなった事で作戦変更も余儀なくされたから……ルパソが黒鉄さんを仲間にするのを許してくれるだろうか……
「預かり所にある毒の素材、【夢キノコ】と……もう一つぐらいはあるはずだ。それもやる」
毒の素材をくれるなんて、頼む立場が逆転してるんだけど……
「協力するよ!! ヤク中には【夢キノコ】が必要だもんね」
俺よりも先に、ポイがOKしてしまった。【夢キノコ】を俺に渡して、もう一つの毒の素材を食べようとしてないか?
「ウルを助けたいのは俺も一緒だし、黒鉄さんが考えを曲げるぐらいだから余程の事なんでしょ? それを拒否するつもりはないです」
黒鉄さんは俺にフレンド申請を送り、俺はそれをOKすると
黒鉄 職業【要塞】LV60 がフレンド欄に追加された。それと一緒にパーティーも組む。
「よし。詳しいクエストの内容を教えてくれ。私の【要塞】に関しては……アイツがべらべらと話していたな」
黒鉄さんは【子供の正体は】のクエストを詳しく……というより、ウルの話を聞いてきた。




