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眠る少女

 なんとか暴れる心配はなくなったようなので、聖女にはいったん帰ってもらった。拘束の術具の設定も少し緩めておいた。熱はほんの少し下がったようだが、目が覚めてもまだ朦朧としているようで、会話が成り立たない。


「旦那様、あとは我々にまかせてしっかりとお休みくださいませ。仮眠しか取っておりませんでしょう?ミーナ様が回復された時に旦那様が倒れられては困りますから」

 執事に声をかけられる。

「わかった。すまないがよろしく頼む」

 用意されていた食事を摂り、自室に戻る前にもう一度ミーナの様子を見に行く。ミーナが眠るベッドの脇にはメイド頭がついていた。


「様子はどうだ?」

「まだ熱は高いですが、先ほど目が覚めた時に果物をすりおろしたものをほんの少しお召し上がりになりましたよ」

 眠るミーナの方を見ると顔色はよくないままだ。

「何か話したか?」

「いいえ、何も。何かありましたらすぐお伝えいたしますので、まずはお休みになってください」

「ああ、後は頼んだぞ」



 翌朝。

 定刻どおり起床し、着替えてからミーナのいる客室へ向かうと、一番若いメイドが小声で挨拶してきた。

「おはようございます、旦那様。ミーナ様はまだ眠っておられますが、熱は昨夜より下がったようです」

「そうか。それはよかった」


 朝食を済ませてからミーナのいる客室に行ったが、まだ眠っていたので書斎でたまっていた手紙を処理していると、メイド頭がお茶を持ってやってきた。

「旦那様、ミーナ様のことで少しよろしいでしょうか?」

「ああ、何かあったか?」

「最初にこの屋敷に来られた日、ミーナ様の入浴のお手伝いをさせていただいたのですが、背中に傷跡と痣がございました。もし旦那様がご存じないようでしたら、お伝えした方がよいかと思いまして」

 帰りの旅でミーナと比較的一緒にいる時間が多かった聖女からもそんな話は聞いていない。


「それは知らなかった。詳しく教えてくれるか?」

 メイド頭がうなずく。

「まず、お背中に刃物で切りつけたような古い傷跡が複数ございました。いずれも真っ直ぐではありませんでした」

 真っ直ぐでないのは気になる。どういう状況でついたのだろうか?

「それから左肩の背中側に蝶のような形をした痣がございました」

 メイド頭からその形を描いた紙を手渡される。

「いずれもミーナ様自身では見ることは難しいかと。私どもが気がついたのは以上でございますが、ミーナ様の身元を調べる際の手がかりになればと思いまして」

「ありがとう。いずれも知らない情報だったので助かる」

「どういたしまして。また何か気がついたことがありましたらお知らせいたしますね」

 メイド頭は下がっていった。


 身元調査を進めたいところだが、少し落ち着くのを待つしかないだろう。そしてどうやら思っていたより大きな話になりそうな気がした。

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