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地平の旅人  作者: 白翼冥竜
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Act.07 鍵の務め

   Act.07 鍵の務め


 ルークが、爪を叩き込む。

 エルヴズユンデが爪の間を抜ける。

「プリズナーブラスター、拡散モード…」

 エルヴズユンデの胸部に、光が、熱が集まる。

「バァァァァァストッ!!!」

 胸部から解き放たれた光が、ルークに雨のように降り注ぐ。

 ルークが、爪の一振りでその大半を叩き落すが、流石に夥しい量を全て叩き落すには至らず、直撃を貰う。

「よしっ!効いてます!!」

「グオオオオオオッ!!」

 ルークが、爪を振る。紅の光の刃が、エルヴズユンデに襲い掛かる。

「何ッ!!」

 エルヴズユンデが咄嗟にそれを剣で叩き落すが、矢継ぎ早に複数の光の刃が飛来する。

 左肩のアーマーと右足が持っていかれる。

「ぐううううっ…!」

 このサイズ差では剣や爪による攻撃は効果が薄い。

「ですがッ!!」

 エルヴズユンデのクローの掌の部分から、青色の光条が放たれる。

「これならば!!」

 青色の光条が形成したのは、巨大な刃。

「でえいっ!!」

 一振りが、ルークに傷を負わせる。

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

 ルークが、口から時空震を放つ。先程よりもかなり強力だ。

「くっ…なんて威力…しかし、こちらにも考えがあります!アトネメントプライ…ファイアッ!!」

 巨大な異形を跡形もなく消し飛ばした、黒い光が放たれる。

 強大な時空震と、黒い光が正面から激突する。


 一方、外では…。

「時空震がひどくなってきたな…」

 ファラオ店長が、首都から大分離れた場所で呟く。

 ファラオ店長からの事情の説明と、その後のデストヴァールの行動で、

 既に兵士達も状況を理解し、時空震を避けるためにある程度離れていた。

 成り行きを見守る兵士達に、ファラオ店長はラーメンを振舞っている。

「み、見ろ!!」

「ん!?」

 ロートベルグ首都の上空の空間にヒビが入り、凄まじい爆発が起こる。

 爆発の中から出てきたのは、紅の翼を生やしたエルヴズユンデと、巨大な竜。そして、その竜の後方に、黒騎もいる。

「あれが…確かに、嬢ちゃんが気にかけるわけだな…」

 竜の姿を見ながら、ファラオ店長が呟いた…。


「くっ…アトネメントプライと時空震の衝突であの空間が崩壊しましたか…!!」

 かなり再生したが、エルヴズユンデは損傷している。

「しかし…まだ、行けます!!」

「まさかここまでの力があるとは…面白い…ルークの力を見るに丁度良い相手だ…フッハハハハハハハハ!!」

 ルークの後方で、デストヴァールが高笑いをする。

 一方、ギルティアにファラオ店長からの通信が入る。

「おう、嬢ちゃん、こいつはまるで怪獣映画だな…」

「店長も無事で何よりです…!」

 ギルティアがホッとしたように笑う。

「…なぁ、嬢ちゃんよ、一つ聞きたいんだが…後ろの黒いのを潰すのはアリか?」

 唐突にファラオ店長が言い出す。

「え…!?し、しかし、発信元を潰されれば、きっと暴走を…!」

「暴走なんてのは一、二発頭をぶったたけば『直る』はずさ。特に、ああいう生命体の場合はな」

「……」

 ギルティアにも、心当たりがあった。

 確かに、自分の自己再生能力もそういうレベルのものだ。

 己が精神すらも再生能力の恩恵の範疇なのだ。

 あれほどの力を持った生命体の自己再生能力が、そこまで及んでいないとは言い切れない。

 …確かに、賭けてみる価値は十分だ。

「し、しかし、ルークが壁になって狙えないこの状況では…!」

「…俺がやる」

「なっ…出来るのですか…!?」

「出来なくてもやるしかないだろ?嬢ちゃんがそこまで頑張ってんだ、俺だってそれくらいはさせて貰うぜ…!」

 ファラオ店長が、そう言って不適に笑う。

「…時間を稼げばいいのですね?」

「おう、死ぬなよ嬢ちゃん…!」

「大丈夫、この程度、慣れてますから…」

 ギルティアは、そう言って微笑んだ。

「…行きます!」

 エルヴズユンデが、再びプリズナーブラスターの雨をルークに降らせる。

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

 ブラスターの雨を、時空震が消し飛ばす。

「!!」

 エルヴズユンデに、時空震が直撃する。

「しかし、その程度ならば…!!」

 爆風を突き破ってエルヴズユンデが突進する。

 左腕のクローから放たれたブレードが、ルークに叩き込まれる。


 一方、ファラオ店長は、デストヴァールがエルヴズユンデとルークの戦いに気を取られて動きを止めている事を確認する。

「フハハ!力が違うのだ力がぁぁ!!」

 高笑いをしている。のん気なものだ。

「信号の発信元、解析終了、と…さてと、活きの良い素材だ、謹んで料理させていただきます…ってな!!」

 ファラオ店長がそう言った次の瞬間、何かが、黒騎の頭部を貫いた。

「な、何…!?」

 デストヴァールも、何が起こったのかわからない。

 ルークも、ギルティアも、その場にいた全員が、動きを止めた。

 そして、黒騎の頭部が爆発する。黒騎の頭部をを貫いていたのは、一本の包丁だった。

「…よし!」

 ファラオ店長が、ルークの制御装置が内蔵された黒騎の頭部を、しかも装甲の継ぎ目の部分を的確に狙って包丁を叩き込んだのだ。

 デストヴァールがルークの力を過信し過ぎ、動きを止めていたのも失敗だった。

「お、おのれェェェェェェェェェェェ!!!」

 黒騎が、ファラオ店長の方へ突進する。

「…隙あり、です!!」

 エルヴズユンデが、固まったように止まったルークの横を通り過ぎ、黒騎に見事な蹴りを叩き込む。

「ぐおおおおおおおおおおおおっ!!」

 黒騎が、見事に吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられる。

「だ、だが、制御装置を破壊されたルークは暴走する!自分のした事の愚かしさを呪って死ねィ!!」

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

 凄まじい咆哮。ルークが見境無く暴れ始める。

「でええええええいっ!!」

 エルヴズユンデの爪が、ルークの胸部に取り付いた機械を引き剥がし、握りつぶす。

「いつまで寝ぼけているつもりです!また眠るためにも、起きなさぁぁぁぁぁぁぁいッ!!!」

 ルークの頭部に、体当たりを叩き込む。

 いや、頭からダイブしているので、体当たりと言うよりも、頭突き、と言う方が適切かもしれない。

 …素晴らしい音がした。もしかするとルークが頭部に被っている骨のヒビが増えたかもしれない。

「オオ、オオオオオオオォォォォォォォォ…」

 ルークが、轟音を立ててその場に倒れる。

 気を失うのは、制御が解けた証拠だと判断する。

 本来ならば、この程度で気絶するような生命体ではない。

「どうやら、ファラオ店長の言った通りだったようですね…」

 ギルティアが、ほっと胸をなでおろす。

「…お、おおおおのれ!!おのれェ!かくなる!かくなる上は!!」

 ルークが暴走を止め、自らの計画していた事全てが潰えたのを見たデストヴァールが、首都の方へと飛び去る。

「待ちなさい!!」

 エルヴズユンデがそれを追う。


 黒騎がロートベルグ首都の奥、宮殿のような場所に到達し、内部へ突っ込む。

「こうなれば…全て滅ぼしてくれる!!」

 デストヴァールが、裏返った声で叫ぶ。

 次の瞬間、宮殿のような場所が展開し、巨大な砲塔となる。

「ルークよ、そして我に歯向かった愚か者共よ!跡形もなく消え去り、己が無力と愚かさを後悔するが良い!!」

 宮殿砲の後方で、黒騎が照準を構えている。

 照準の先には、避難していた大勢の人々、そして、気を失っているルークがいる。

「このエネルギーは…!!」

 ギルティアが冷や汗をかく。

 恐らくこの砲も一発しか耐えられまいが、かなり上位、かつ大型の空間、次元兵器に比肩し得る出力だ。

 たとえルークのような存在であろうとも、直撃ならば致命傷は免れないだろう。

 アトネメントプライでギリギリ止める事が出来るか否かのレベルの破壊力だ。

「エルヴズユンデ、オーバードライブ!!アトネメントプライ発射用意!!!」

 しかし、ギルティアは躊躇わずに一歩を踏み出した。エルヴズユンデが宮殿砲の射線を遮る。

「フフ…止められるものか…余が完成させたのだ…。

 用済みになったルークを消去するために造られた、この宮殿砲をな…!!」

 デストヴァールは既に、正気を保っているかどうかも怪しい。

 いや、最初の時点で、既に正気を失っていたのかもしれない。

「…止めて見せましょう…過ちの鍵の名の下に!!」

 ギルティアが、高らかに叫ぶ。


「消し飛べェェェェェェェェェェェェェェ!!!!!!」

 デストヴァールの叫びと、砲撃の爆音が綺麗に重なり、凄まじい光の奔流が、エルヴズユンデを飲み込もうと迫る。

「アトネメントプライ、集積エネルギー限界突破…フィニィィィィィィィィッシュ!!!!!」

 エルヴズユンデの胸部から、凄まじい黒が解き放たれる。

 光の奔流が、エルヴズユンデを飲み込みながらバラバラに散る。

「人々の、盾となる…これが…鍵の…この、私の…務め…だから…!」

 息も絶え絶えにギルティアが叫ぶ。

「…だから…私は!!」

 光の奔流が収まるのと、エルヴズユンデが吹っ飛ぶのは、丁度同時だった。

 吹き飛ばされたエルヴズユンデが、地面に叩きつけられ、引きずられる。

 既にエルヴズユンデは、胸部ユニットしか残っていなかった。

「…皆さん…無事、ですか…?」

 胸部のコアから、血まみれのギルティアが出てくる。

 そして、後方の様子を確認すると、笑う。

「良かった…」


「…はっ…わ、我は…」

ルークが目を覚ます。どうやら、意識を完全に取り戻したらしい。

「…娘よ!!」

そして、血まみれのギルティアを見て叫ぶ。

「私は…大丈夫…慣れて、ますから」

 ギルティアが、力なく笑う。

「どうやら、我のせいで、とんだ迷惑をかけたようだ…すまない」

 ルークがすまなそうに頭を下げる。

「ルーク、あなたのせいではありません。悪いのは…」

 ギルティアが、黒騎のいる宮殿砲を指差す。

「…承知」

 ルークが頷く。

「遠慮なく、消し飛ばしてください!!」

「うむ!!」

 ルークが、渾身の時空震を放つ。

「余は、全宇宙の王ぞ!余の名はデストヴァール=ガイオライン!

 全ての愚民共よ、我が前にひざまずけ!フ、フハハ、フハハハハハハハハハハハハハハハハハァァァァァァァ…」

 デストヴァールは、妄言を叫びながら、宮殿砲ごと消し飛んでいった…。


続く

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