表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神通力少女は何がなんでも『普通』に生きたい。(reboot ver.)  作者: 宇宙 翔(そらかける)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/18

近くて遠い世界

時間は少しさかのぼる。

土手の上から、河原にいる友梨奈とあかねを見下ろしている女性がいた。

木花碧だ。

手には羂索のようなものを握っている。


(力を使う修行もしてないのに、あんなヘロヘロな状態で『慈念』の力なんて使えるわけないでしょうに。

まぁぶっつけ本番であれだけ羂索を使えたのは大したものだけど)


「どうせ手伝うんなら最初からやればいいものを。木花の」


そこへ、僧侶風の男が近づいてくる。

声の主を一瞥もせず、視線は友梨奈たちを見つめたままの碧。


「可愛い子には旅をさせろ、って言うでしょ。何事もまずは自分で経験してみることが大事よ」


僧侶風の男にキッと厳しい視線を向ける碧。


「そんなことより、あなた。悪霊祓いみたいなインチキな仕事してるようだけど、

心が汚れてるからなんでも悪霊に視えちゃうのよ。人間は自分が見たいものを見たいようにしか見えない

んだから」

「一回うちで心の修行をすることを勧めるわ。月謝は昔のなじみで安くしておいてあげる」


仰向けで大の字に倒れている友梨奈に駆け寄っていく麻由。

その姿を見た後、振り返って土手から離れていく碧。

ゆっくり歩いているように見えて、あっという間に距離が離れていく碧の後ろ姿を

見つめながら、僧侶風の男がぼそっと呟く。


「確か木花家のばあさんはだいぶ前に亡くなったと聞いていたが……」



******


ピンポーン


「あ、麻由ちゃん?悪いけど入って梨奈を部屋のベッドまで運んでもらえる?」


インターフォンから碧の声。


(さすがだわ。やっぱすべてお見通しなのね)


いったいどこから今の状況を把握したのだろうか。

声に慌てた様子は一切ないところから友梨奈のことは心配ないらしい。

あとは最後のひと頑張りであの急な階段を登るか。


「……羂索……戻さないと……瞑想の間……」


寝言みたいな友梨奈の呟きが背中から聴こえる。

麻由には聞いたことのないワードが連なっていた。


(ん? 『けんさく』? 『めいそうのま』?)


友梨奈をベッドの上に寝かせて、床の上にぺたんと座り一息ついている麻由。

制服の着替えとかは碧に任せた方がいいだろう。

友達だけどまだ付き合いが浅いから、あとあと友梨奈が気にしそうだ。

そういえばずっと動転していて気づかなかったが、友梨奈は左手に見慣れないものを握っていた。


(もしかするとこれが『けんさく』?)


その持ち手を握る友梨奈の指を一本ずつ開いて、引き離した。

縄の部分は鈍い光を放っていて、一見しただけでは素材がよくわからない。

藁ではなく、なにかの金属を編んだようにも見えるが、その割には驚くほど軽い。

これを使ってあかねと人助けしていたんだろうか。

まだまだ麻由が知らないことが木花家にはたくさんありそうだ。

『めいそうのま』という場所には、こんなものが他にもあるのかもしれない。


少しずつだが、友梨奈たちがいる世界に近づけている気がした。


「麻由ちゃん」

「ひゃぁぁぁぁーーー」


突然耳元に聞こえた声に思わず変な奇声を上げてしまった麻由。

危うく心臓が口から飛び出そうなレベルの驚きだった。

『けんさく』と言われるものに気を取られていたとはいえ、ドアを開けて人が入ってきたのに気づかない

はずはない。

人がそんなに静かに移動できるものなのだろうか。


「ここまで運んでくれてありがとう。梨奈、疲れきって寝ちゃってるだけだから、

もう帰ってくれて大丈夫よ」

「……よ、よかったです。梨奈全然動かないからずっと心配で」


跳ね上がった心拍数と呼吸を落ち着かせるようにゆっくり答える麻由。

ここで碧にいろいろ質問したいが、ツッコんでもまたかわされそうな気がする。


「ぎゃっ」


今度は窓の外から短い人の悲鳴のような声。


「麻由ちゃん、自転車の鍵かけてなかったでしょ。一応盗まれないようにしておいたけど」


そういえば友梨奈を運ぶのに必死で鍵をかけずに自転車を家の前に放置してしまっていた。

それに気づいて鍵をかけてくれたものだと思ったが、鍵を渡してくれるわけではないらしい。

だとすると一体何をしたのだろうか。

さっきの外から聞こえた悲鳴といい、前回に続き碧の言動には謎が深まっていく。

麻由の複雑な表情とは対照的に、穏やかな微笑みを浮かべている碧。

自転車のことを聞くのも諦めて立ち上がる麻由。


「それじゃ失礼します」

「麻由ちゃん、またね」


今は『またね』、と言ってもらえるだけでよしとしよう。

玄関の外に出ると、案の定麻由が放置した状態のまま玄関前に鍵をかけていない

自転車があった。

そのハンドルに触ったときちょっと静電気のようなピリッと感があった。

自転車にまたがって友梨奈の部屋の窓を見上げる麻由。

すぐそこにあるのに、なんだか遠くにあるような気がした。


第一部 完


第一部はここで完結です。

次回から数話、番外編を挟んで第二部へ続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ