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ボイド・ギャトレー子爵が流浪のピクシの民を犯罪者呼ばわりしているのは、彼と彼の友人がピクシの民の詐欺師に騙されて、多くの負債を抱えたからだ。このピクシの民の詐欺師は、高位貴族と仲良しで彼に気にかけてもらうために、詐欺師を仲介にして高位貴族に贈り物や賄賂を贈ったりしたらしい。だが高位貴族と仲良しなのは真っ赤な嘘で贈り物や賄賂は全部、詐欺師の物になっていたようだ。
また同時期に、彼はエルゼ・ローエングリンと名乗るピクシの民にお金をだまし取られたと言う噂もあった。
この二つの事件でギャトレー子爵家にいたピクシの民の使用人は全員解雇して、ピクシの民を雇わなくなった。
ピクシの民は民族意識が強い事で有名だ。恐らく復讐に来たとか、監視されていると疑心暗鬼になったのだろう。
また後ろめたい事もあるのかもしれない。
決闘に入る時、審判のオルトはエルゼに「そう言えば」と言って話し出した。
「あなたは精霊を使って戦うのだが、今回は届が出ていなかったが……」
「私は【助太刀】を実体化させることが出来ませんし、する必要も無いです」
オルトは眉をひそめたが、「そうか」と言ってこれ以上は何も言わなかった。
ボイドは腰に剣を携えてやってきた。勇ましく歩いているが、持ち慣れていない雰囲気があった。だがエルゼに対して殺意を感じるくらい睨んでいる。
二人が所定の位置についた時、エルゼは一礼して刀である私の柄を右手で握り、左手で鞘を握って目をつぶる。
私も事件の出来事と今までエルゼが集めた証拠や真実などを思い出す。
よくぞ、集めた。よろしい、決闘だ。
エルゼは私を引き抜いて刃を出し、ボイドに向ける。
ボイドは一瞬、怯むが腰の剣を引き抜いて、エルゼに向けた。
二人がにらみ合っている中、真ん中にいるオルトが「初め」と言った。
***
オルトが「初め」と言ったが、お互い動かなかった。ボイドは剣先や足や手、そして瞳が震えていた。一方、エルゼは微動だにしなかった。
静かだった。傍聴人たちのざわめきも、風の音も、何も聞こえない。
動かないエルゼにボイドがどんどん苛ついてきたようで、顔が歪み、叫ぶ。震えた足を踏みしめ、剣を大きく振り上げ、思いっきり振り下ろした。
ギャギン
振り下ろされた剣は、エルゼの力強い一振りでいなされ、落としてしまった。
ボイドは落ちた剣を愕然とした目で見て、次にエルゼを見て、腰を抜かした。
エルゼの目は強い意志があった。つまり、殺気。
エルゼは大きく息を吸って刀である私を振り上げた。
「ま、待ってくれ!」




