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「お前はピクシの民だ。ピクシの民のコミュニティは広いから、そう言った話しは聞いて、エルゼに成りすましているだけだ! 現にお前の所属しているサーカス団にはローエングリン家の身内がいたはず! その者に聞いて、エルゼ・ローエングリンに成りすましているんだろ! ピクシの民はそう言った犯罪も行っていると聞いたぞ!」
エルゼに指を指してボイドはそう宣言した。
確かにピクシの民のコミュニティは広いし、噂話もすぐに広まる。そしてこういった犯罪を起こした事案もあった。
「何もお前が初めてじゃない。エルゼ・ローエングリンと名乗る者はピクシの民で多くいたからな。お前が持っている刀も全知全能の神をシンボルのネックレスも、すべて偽物か、盗んできたものだろう!」
「……そうですか」
エルゼはほほ笑み、ボイドはゾッとした顔になる。エルゼの笑みは、あまりにも不気味だったからだ。
「でしたら、あの事件についてお話ししましょう! ボイド・ギャトレ―子爵!」
エルゼは叫ぶように言いながら、当時の事を話した。
「当時父と母にギャトレー子爵の事業の相談をするため、あなたの父と一緒に来ていましたね。その時に父は無下に断っていたのを、私は自分の部屋で聞いていました。そして母の悲鳴と大きな物音が聞こえて、私はこの刀を持って父たちのいる部屋に行きました。するとあなたはナイフを持っていて、両親は血まみれで床に……」
「いや、違う! 強盗が来たんだ!」
「私の両親は強盗に殺されたと証言したようですね。ですが私の記憶では強盗には来ていなかった」
「いや、押し入った!」
「どこから? 窓から? でも開いた窓など無かったでしょう? では、玄関? だとしたら、もっと荒れていたはず。そして物は取られていましたでしょうか? 強盗達の足跡は? 強盗達を目撃した者達は居なかったはずだ! それに私は強盗の声なんて聞こえませんでしたよ!」
「……」
「ローエングリン家の近くを通りかかった人間は、走って行く女の子の姿を見たと言っていましたね。しかも長い棒を携えて。多分、私でしょう」
当時の信頼性の高い貴族向けの新聞の記事を出しながら言い、エルゼは「それから」と言って、左腕を指さした。
「あなたは私を脅すため、ナイフを突きつけようとしました。ですが私は刀の鞘を抜いて、あなたの左腕を切りつけました。普通のナイフや周辺諸国にある剣で斬られた傷とは違っていると思います」
そう言うとボイドは左腕を無意識に隠して、エルゼを睨む。それに怯むこと無く、エルゼは説明する。
「それから、あの事件の時にあなたは懐中時計の蓋が壊れて落としたはずですよね。そして最近になって、その蓋が制作した工房から送られたと思います。ええ、あの事件当日に犯人につながると思って、私が拾ったからです。そして最近、私が制作した工房にお願いして蓋を送らせてもらいました。工房に聞いたら分かるはずです。エルゼ・ローエングリンが送らせた事と拾った場所も私が工房にお伝えしましたから」
婚約破棄で悩んでいたシルビアに紹介してもらった工房だ。確かにあそこに頼んで蓋を持ち主に返したのだ。
ボイドの顔が真っ青になって来たのを見て、エルゼは口調を変えて「ボイド様」と呼びかけるように言った。
「私がエルゼ・ローエングリンであること、両親を殺したことを認めれば、決闘をしません。また私は両親の遺産は受け取りません。ただ自分を証明できればいいと思っているだけです!」
そう宣言をするエルゼにボイドは「そんな訳ないだろ!」と叫んだ。
「和解した後、遺産の話しをするだろう! 犯罪ばっかりするピクシの民だ! 決闘で決着する!」




