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 守護者の盾は修復が施されていた。

 日の光で盾のモチーフの継ぎ目が見え、明らかに違う素材を使っていたのが分かった。修復された継ぎ目とはもろい。


 そこに力を入れれば割れるはず!


 大きく踏み込み、私は刀をつなぎ目に当て、斬った。

 思っていた通り、盾は補修されたところは斬れ、地に落ちた。


 バスロ牧師よりも審判の方が絶叫して、「やめ!」と言った。その後にバスロ牧師は大声で叫んだ。


「待った! 和解のための話し合い……」


 それを打ち消すように守護者は私に向けて、剣を叩きつける。それをかわして、構えながら守護者を見る。


 人間は和解や逃げるという選択肢がある。だが我々にはそう言ったものが無い。相手が負けを認めるまで、勝つまで、戦い続けるのだ。

 そして私も同じ存在。つまり、どちらかが壊れるまで戦い続ける。


「おい! 決闘令嬢! その精霊を引っ込めさせろ!」

「その前にバスロ牧師、守護者をやめさせろ!」


 バスロ牧師と審判が叫ぶが、守護者は攻撃をやめない。エルゼも勝つまでやめない私たちの存在を知っているので、どうしたらいいか分からない顔をしている。

 だがエルゼも盾が補修だらけという事に気が付いた。綺麗に継ぎ目が見えないようにしているが、この盾は何度も修復されていて元の盾の部分が少なすぎる。

 我々は修復される事を嫌う。修復されるくらいなら、壊れる方がまだマシだ。確固たる意思を宿った我々が欠けていく。欠けたものが元に戻ることなど無いし、補える物など無いのだ。

 エルゼは「攻撃をやめさせろ」と言うバスロ牧師を無視して、そのまま私の戦いを見守った。


 バスロ牧師や審判の指示を無視して戦い続ける守護者。剣を振りかざして、私に立ち向かっていく。それをかわして、継ぎはぎの多い盾を斬っていく。


 斬っていくうちに私は推測した。

 この盾は全知全能の神の教えを守るために作られてきたのだ。だが古典的教えや後から付け加えた教え、それらを再び解釈して解読した普遍的な教えがある通り、元の形では無いのだ。時代の移り変わりで、どんどんと教えが変わってきてしまったのだ。

 そうして盾もまた継ぎはぎや装飾を変えていったのだろう。もう、元の形では無いのだ。


 教えを変えなければ、自分たちが【脅威になる者】になるだろう。

 だが変えたくない教えもあったのかもしれない。【自分たちの脅威になる者達と戦え】と言う教えがあるように。


 ついに修繕された部分はすべて割れ、地面に散らばっている。守護者が持っている盾はもう、持ち手の部分が残っている状態だ。


「お願いです。守護者様、もうお辞めください!」


 バスロ牧師が懇願するように言う。

 もうここからして、彼らは間違っている。私達は崇められる存在で無いのだ。自分たちが守る確固たる意志のために、我々は実体化して動くだけ。

 それが人間達に崇められるためでも、畏れられるためでもない。自分の意志に基づいて、姿を現しているだけだ。


 守護者は剣を振りかざして私に向かってきた。私は刀を握りなおす。


 彼が剣を振り下ろす前に私は盾を斬った。

 今度こそ、盾は持ち手と共に壊れた。


 守護者は最初から存在しないとばかりにフッと消えた。全身鎧で包まれていたので、どんな表情だったのか分からない。だか消える瞬間、殺気は消えて穏やかな空気がまとっていたと思う。


 傍聴席も水を打ったように静まり返り、痛いくらいの静けさがあった。私は決闘場に一礼してエルゼの元に戻る。


「ありがとう、助太刀。さすがです」


 こんな状況でもいつも通りの言葉を言う。とはいえ、声は震えていたが。

 私はエルゼに刀を預け、実態を解いた。

 刀を携えたエルゼは、困ったような笑みを浮かべて呟く。


「厄介な事になりそう」


 それは私も同意する。



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