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14


 銃声が鳴り響く前に私は刀を引き抜く。ガスラの目線と銃口を見れば、弾の軌道は把握できる。


 重々しい発砲音と共に、私の予測通りの軌道で弾は打ち出され、それを一刀両断する。

 更に大きく一歩を踏み出して、返し刀で銃口を斬った。


「え? あれ? ……うわ!」


 打った瞬間、勝ちを悟ったのかヘラヘラしていたガスラだったが、私が目の前にいて刀を突きつけているのに気が付いて腰を抜かした。

 銃口を斬った猟銃は手から離れて、地に落ちた。


 文句を言っていた傍聴人たちは一気に静かになり、審判も口を開けて呆然としている。

 ただ一人、エルゼは平然とした顔で口を開く。


「ガスラ様。ここで和解をしましょうか。クレアさんが……」

「和解する! クレアとは白い結婚だった!」

「つまりあなたが持ってきた契約書は偽物で、クレアさんが持っている契約書が本物って事でしょうか」

「そうだ! だから早くこいつを消してくれ!」


 涙目で私を見ながらガスラはそう訴えて、エルゼは「分かりました。和解しましょう」と言った。その言葉を聞いて私は刀を納めて、一礼をしてエルゼの所へと行く。


「ありがとう、助太刀。見事でした」


 エルゼの言葉で刀を渡して、私は実態を解いて普通の刀になった。

 その瞬間だった。


「おい! 違反しているだろうが!」


 ガスラが大声で叫んだ。

 その声にエルゼは「はあ? 意味が分からないのですが?」と、この場で誰もが思う言葉を言った。


「何でお前らは精霊なんて出しているんだよ!」

「それは私もクレアさんも女性なので、代わりに精霊が戦ってくれただけです」

「それが違反なんだよ!」

「……一応、ルールでは戦えぬ者は精霊を使ってもいいとあります。届け出も出しています」

「そんなの卑怯だろ!」


 そう言いながらガスラはエルゼに向かって歩き出す。そしていつの間にかナイフが握られていた。この男、弱い者にしか強く出れないようだ。

 クレアが「逃げて!」と叫ぶがエルゼは、その場から動かなかった。


「何でいう事を聞かねえんだよ!」


 突然、エルゼに向かって走り出してガスラはナイフを突き刺そうとする。

 だがその前にエルゼは鞘から抜かずに、刀である私をガスラの腕に当てる。ひじを強打させたので、ガスラがナイフを落とす。

 動きを止めずにエルゼはガスラの脳天を刀で叩いた。

 これにはガスラも跪いて、脳天を抑える。


「見苦しいですよ」


 跪くガスラにそう言って、エルゼはスタスタと決闘場を後にした。




***


「エルゼさん。本当にありがとうございます」


 決闘場を後にしたエルゼにクレアはそう言って駆け寄って来た。エルゼは「いえ」と言って微笑む。

 その時、バタバタと決闘場に憲兵たちが入ってきた。


「ガスラ・ジング! 教会の強盗を指示した疑いで逮捕する!」


 どうやらクレアがいた修道院以外にも、この国の教会の強盗を指示していたようだ。屈強の憲兵たちにガスラは「あ、え? ええ?」と驚き、立ち上がれない状況だった。

 憲兵たちに無理やり立ち上がらせ、ガスラは連れていかれた。


「これで終わりですね」


 この様子を見てエルゼがそう言うとクレアは「はい」と返事をした。




 ガスラを倒して一件落着ですが、ここで補足です。

 現実の決闘裁判はフェア・プレイを大切にしているので、銃を持ち出したり、剣を隠し持っていると審判から問答無用に取り上げられます。

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