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 強盗団を国の憲兵に引き渡す者達と別れて、エルゼとラコンテは森近くの修道院に向かった。修道院の周りでは修道女たちがバタバタと慌てていた。

 慌てている修道女の一人にエルゼは「すいません」と話しかけた。


「あら、拝礼の参加者でしょうか? 実は今、大変なことが起こって……」

「もしかして強盗の襲撃がありました?」

「それもあるんですが……」

「実は森でキャンプした際、我々の仲間が強盗団を捕まえて……」


 エルゼが事情を話す前に、修道女はラコンテが持っていた聖女の像が目に入り、「ああ、聖女様!」と言い感極まって泣き崩れた。


 全知全能の神の予言を聞いた聖女の伝説が残っている。伝説によると彼女は事前に災害を予言したと言われており、全知全能の神のよりも信仰は厚い場所もある。

 ここは男子禁制のため、ラコンテは修道院の庭で待ってもらって、エルゼだけ中に入った。

 修道院の責任者である老婆の修道長が聖女像を受け取って、お礼を言った。


「ありがとうございます。あなた方に全知全能の神、そして聖女の祝福がありますように」

「いえいえ」

「それにしても今日の深夜に強盗に入られてしまい聖女像を取られてしまって……。更にトムという修道院の守衛もケガを受けて……」

「大丈夫ですか?」


 修道長は「骨折なので、一か月ほどで完治できそうです」と話し、「……ただ」と暗い顔になって礼拝堂へと入って行った。

 礼拝堂は小さいながらも厳かな雰囲気があった。全知全能の神のシンボルである大きな正方形の木枠を掲げ、それに祈りを捧げる椅子の列が続く。

 その最前列の椅子に祈りを捧げている修道女がいた。


「ああ、クレア。祈りを捧げていたのね」


 修道長の言葉で祈りを捧げていた修道女が振り返る。ようやく二十代くらいの女性だ。若いけれど、どこか落ち着いた雰囲気を持っていて他の修道女とは違っていた。

 修道長が「聖女様が戻って来たわ」と嬉しそうに言うが、クレアと呼ばれた女性は笑うも目は笑っていなかった。

 聖女像を正方形の木枠の近くに置いて、修道長とクレア、他の修道女たちもやってきて祈りを捧げる。そしてエルゼも祈りを捧げていた。一応、エルゼも全知全能の神の神父から洗礼を受けたことがあるので祈りの方法は知っている。

 私がいた国でも【祈祷】などの祈りがあったが、どこの国でも祈りを捧げるのは厳かな雰囲気がある。

祈りが終わった後、エルゼはクレアに話しかけた。


「あの、クレア様。この契約書ってあなたのものでしょうか」

「あ、そうです! これは離縁した夫と結んだ契約書です。あ、様はつけなくていいです。もう、貴族ではないので」


 そう言って手に取る。この会話に修道長や修道女たちも集まってきて「契約書が戻ってきたの?」と嬉しそうに言う。

 だがクレアの表情は晴れず、「それでも、もう遅すぎますわ」と言った。

 エルゼは「もしよろしければ、お話しを」と促すと、クレアは涙ぐみながら言った。


「実は私、訴えられていて決闘裁判を近いうちにやることになっているんです」

「……それは被告として?」


 エルゼの質問にクレアは「はい」と頷いて涙をこぼした。


「あの話しを詳しく聞かせてもらってもよろしいでしょう」

「……あなたは、何者なんですか?」

「決闘令嬢です」


 そう言って袋で包んである刀の私を見せて言った。



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