第13話 幼馴染×初恋×失恋
サジとの騒ぎの後、居合わせた人々が騒ぎ出して試飲会どころじゃなくなったので、僕らはさっさと片付けて喫茶アンタルテへとすたこら帰還。
で、カウンターで一息ついくみんなに確認。
「えと……あのサジって人と勝負することになっちゃったんだけど……大丈夫かな?」
僕が勝手にお店の宣伝になると思って口に出しちゃったからね、勝負……。
「いいのだ! 胸がスカッとしたのだ! ソフィーのコーヒーと投げ捨てるなんてありえないのだ! 万死に値するのだ!」
「にゃ。あの御主人様の啖呵は見事でしたにゃ~」(ฅ•ﻌ•´ฅ)
「ソフィーはどう?」
「あら~、いいんじゃな~い? サジくんは一度痛い目を見た方がいいと思うの~。いつも独りよがりで突っ走るから~。うふふ~」
笑顔が怖い。
それにしても二人は知り合いみたいだったけど、一体どんな関係だったんだろう。
(大人な二人の関係……! 聞くのが憚られるぜ……!)
な~んて思ってると。
「ソフィーは、あの男とどんな関係なのだ?」
ヨルが聞いてくれた。ナイス子供! 子供は空気を読まない!
「ん~……話すと長くなるんだけど~……」
ソフィーは少し困った顔で天井を見上げた後、ゆっくりと話しだした。
「私が三歳の時なんだけど……」
「そんなに前の話!?」
「うん。私、おままごとが好きだったのよね~。でも、周りに女の子がいなくて~。で、その時に付き合ってくれてたのが、近所に住んでたサジくんだったの~」
「幼馴染にゃ!」
「うふふ、そうね~。幼馴染ね~」
ニャモの頭の上にピンクの霧で「幼馴染!」「腐れ縁!」「わけあり?」「初恋……!?」という文字がぽわぽわと作り出される。
おぉ……ニャモ、お前意外とゴシップ好きなんだな……。
「その幼馴染が、どうしてあんなに揉めてたんです?」
「ん~……私、途中からおままごとよりもコーヒーに凝っちゃったのよね~」
「へ~、そんな昔からコーヒーに」
「うん。でも、サジくんは逆におままごとにハマっちゃったみたいで。本格的なフライパンとか持ってきだして~。で、私なんか引いちゃったのよね~。で、そのままサジくんとのおままごとな関係も自然消滅したんだけど……」
サジが料理を頑張りだしたのはソフィーのせいなのか……。
「え~っと……。で、スカウトされたって話は?」
「そうそう! 気がついたらサジくん、料理人になっててね~! 十八の時かな? いきなり私をスカウトに来たのよ~! 驚いちゃったわぁ~。もちろん断ったんだけどね~。だって、私コーヒー屋さんになりたかったんだもの~」
おぉ……サジ……。
お前、初恋の相手を振り向かせるために十五年間も料理を……?
そして……失恋、を……?
うぉ……なんて不憫なやつ……。
やっぱ恋なんかするものじゃないな……。
恋愛と無関係な十七年間でよかった……。
ニャモの頭の上に作り出される「初恋×失恋=ソフィー鈍感」という文字をそっと手で払い消す。
「サジくんってば『料理の締めにキミの珈琲があれば五つ星を狙える!』なんて言ってね~? 心外だわ~。私のコーヒーはみんなのお友達みたいな存在なの~。五つ星を獲るためのコース料理の締めの道具なんかじゃないのよ~」
ソフィーがぷんぷんと怒る。
すると背後で音。ズビズバ!
振り返ると、ヨルが滝のような涙&鼻水をズビズバー! と垂らしたり吸い込んだりしてた。
「コーヒーは友達……! 我はソフィーの心構えに感動したのだ……! ど~りでソフィーのコーヒーは優しい味がするわけなのだ~! うわ~ん!」
「あらあら、ヨルちゃん~。せっかく飲んだコーヒーが全部出ちゃうわよ~」
「いいのだ~! 出し切ったらまたソフィーのコーヒーを飲むのだ~!」
「にゃ! ヨル、涙を拭くのにゃ!」
シュッ──ピッ!
ニャモが頭上の収納空間(?)から取り出したハンカチを、謎物理法則でヨルの顔面に投げつける。
「うぅ~……ありがとうなのだ、ニャモ~!」
ヨルはハンカチを鼻水をズビっ! と噛むと、椅子の上にダンッ! と立ち上がった。
「こんな素晴らしい店を潰すわけにはいかないのだ! サジとの対決に勝つために究極の『軽食』のメニューを決めるのだ! ということで、早速作戦会議なのだ!」
さてさて。
軽食メニューだ。
ね? なんにしようかね?




