23,王宮へ
王宮騎士の騎士服を身に纏ったフューネはナバルに呼ばれて王宮に足を運んでいた。野生の勘で、兄やアンナに言えば大ごとになりそうだと嗅ぎつけたので誰にも言わずにこっそりと学園の寮を抜け出してきた。身体能力の無駄に高いフューネには誰にもバレずに寮から抜け出すことなどお茶の子さいさいなのだ。
「フューネ・ニューウェーストです。殿下に呼ばれましてこちらに馳せ参じた次第に御座います」
ただ、貴族の常識は持ち合わせていなかった。学園から王宮まで体作り感覚で走って来たフューネはちょっと息を上げていた。
ニューウェーストの一人娘は可愛くないというデマが流れる中、その名を告げた美しい娘。王宮の門兵は戸惑っていた。デマが本当にデマであり、目の前の娘がニューウェーストの名を騙る侵入者なのか、デマは嘘で目の前の娘がニューウェーストの娘なのか。
ちなみに王宮に先触れは出していない。ナバルも、国の重要人物にしかフューネが城に来ることを告げていない。そして、なぜ騎士の服を着ているのか。
大変混乱した門兵は「確認して参ります」と告げて城の中に去っていった。
さて、一人残されたフューネだがおとなしく待っているはずもない。
ほうほう、ここが王宮か、西洋感あるお城だなあ、と怪しい動きで王宮を眺めていた。たまたま巡回していた護衛騎士が挙動不審なフューネを見つけて攻撃を仕掛けた事は仕方ない事だったのだ。
ーーー
「フューネ嬢はまだ来ないのか?」
ナバルの父、この国の王は何杯目かの紅茶を啜りながらナバルに問うた。ナバルも少々不安になって来ていたのだ。約束の時間から一時間も過ぎている。約束の時間の10分前行動を心がけているというフューネにしては珍しい事だと最初の方は思っていたが……。
「振られたのでは?」
ナバルの母、王妃はクスクスと笑った。息子が失恋したと思って笑っているのだろうか。なかなかにひどい性格をしている。
何か言おうとナバルが口を開いた時、ドタバタと騎士が入ってきた。
「失礼します!」
「あら、どうしたの?随分と青褪めているようだけれども」
「ニューウェースト家から怒りの書が速達でやってきました、あと、地下牢にとても美しい方がいるのですが、『まあ、これも騎士になるための忍耐試験なのでしょう?拷問でも火炙りでも何でもして下さい!』といきいきとしているのです。あと、門兵からフューネ・ニューウェーストを名乗る人物が来たと言っていましたが今は行方不明だそうです」
「……地下牢に案内してほしい」
ナバルは震える声で騎士に言った。
「あら、まさか地下牢にいる美しい方、っていうのがあなたの恋のお相手?」
「の可能性が高いです」
並々ならぬ騎士への執着。時間から言ってその可能性が高い。
ニューウェースト家からの抗議の手紙も気になる。何に対しての怒りなのか。早く処理をしないと後が怖いことを知っている王はため息をついてナバルと王妃に言った。
「ニューウェースト家への説明は私がしておくから二人で会いにいってくれ。私が行けないことを丁寧に説明し、謝っておいて欲しい」
「ええ、分かりました。じゃあ、地下牢に案内して」
知らせにきた騎士にそう言って王妃とナバルは王の元を去った。
「面倒なことになりそうだ……」
王は一人、頭を抱えてニューウェーストからの手紙を見、書斎に向かった。返事をどう書けば良いのかを考えながら歩いていたので柱に何回もぶつかる王がその日何度も見られたという。
久々の更新、そして短めになります




