22,ピクニックイベント②
短めです
謹んで受け入れたが図々しかった。
「一つ、交換条件があります」
ピシ、と右に人差し指を伸ばしてフューネはナバルに言い放った。
「一週間に四日、騎士をさせてください。かなり譲歩しました。どうです?あとの三日は仕方ないので公務をしますが四日間は体を動かさないと錆びますので」
しれっと図太い事を言うやつであった。ナバルは図々しいフューネを愛おしそうに見つめてからしかと頷いた。
「それで貴女が私の妻となってくれるのであればお安い御用です」
よっしゃあ!とガッツポーズをしようとしたフューネはすんでのところで思いとどまった。私は令嬢、お淑やかよ。
「では、後々父から呼び立てがあると思うのでどうか王宮にその際はきちんと」
「ええ、行きますとも」
騎士になる約束を逃しはしない。ふふふ、と綺麗な笑みを浮かべる2人の美人が仲良く歩く姿が多くの生徒に目撃されている。
そして、その知らせを聞いたフューネの兄達は激怒して王宮に窃盗犯をやっつけてくれと申し入れるのだが、それは現在する話ではない。
ーーー
忘れてはならない。今2人がいるのはーーグルーネイはナバルから発せられる『邪魔だ』オーラを嗅ぎ分けて遠くから護衛しているーー静かな森の中だ。遠くの方から聞こえて来る学生の声を鬱陶しく感じたナバルがちょっと離れた場所にフューネを連れてきたのだ。
「フューネ嬢。多分気付いていると思うが」
「ええ。魔物の気配がします」
フューネの実力を知らない、この森に棲む魔物が人間を見て襲おうとしていた。ちょうど離れた場所にいるナバルとフューネはその魔物の標的になったようだ。
「一瞬でのしてきます」
スカートから優雅に暗器を取り出して常人であれば何の気配も感じないであろう場所をきりりと睨みつけた。ちょっと離れた場所にいたグルーネイはその時一瞬感じた殺気に震えていた。
少し殺気を漏らしたフューネは笑顔で草むらに暗器を何の躊躇いもなく複数投げ込んだ。ギャ、という声が何度も聞こえ、しばらくして草むらから紫色の血が流れ出した。
「草に偽造して人を食う、名無しの魔物です」
フューネは草むらに手を突っ込んで暗器を回収した。ちょっと顔を歪めて暗器にべっとりついた血をそこら辺に落ちていた誰かのスカーフで拭い元の場所にしまった。
その鮮やかな殺戮にナバルは見惚れていたがフューネが暗器を戻した瞬間に悠々とした表情を張り付けて微笑んだ。
「お見事ですね、この腕前を見せられては騎士にする以外手立てはありません。私の妻というミノに隠れて騎士をして頂かないと」
殺戮の表情も美しいフューネを妻に、と求める人が増えては困る、と焦ったナバルはよく分からないことを言ってフューネを褒め称えた。
騎士に絶対にしてやる、という意気を感じ取ったフューネはナバルに対する好感度をぐっと上げて右手をナバルの右手に重ねて頷いた。
「絶対ですよ!」
側でずっと見ていたグルーネイはフューネが鈍チンであり、ナバルの必死の告白に気づいていないことに心底ナバルに同情した。
そして、フューネが狩った魔物は後ほどナバルが呼んだ王宮騎士によって始末された。その際、王宮騎士たちから上がった声を2人は知らない。
「誰だ、こんなに綺麗に急所を的確につき、敵を苦しめずに死に至らせる腕前を持ったものは!是非騎士に迎えなければ!」




