一括りで片付けてしまってた
光と良多と『友達』になったのは中学生になってから、同じクラスで隣の席になってからだった。
良多は男にしては小柄で、そして男とは思えないくらい可愛かった。色素の薄い髪と瞳。学ランでも、男装に見える辺りすごいと思う。
そのせいで同級生は勿論、接点の無い上級生からもいきなり名前を呼ばれたり、話しかけられたりしていた。とは言え周りも、そして本人もそれをモテていると勘違いはしなかった。
扱いがどう見ても恋愛対象としてではなく、小さい子供や愛玩動物に対するものだったからだ。
「女はすぐ、それに何にでも可愛いって言うよな」
「否定はしないけど。それを女全部って括られると、困るかな」
入学して一ヶ月程のその時、光と良多はまだ『友達』ではなく、単なる隣の席なだけの同級生だった。
愚痴に対して口出しする程、話したことなどなかったが(隣の席とは言え、わざわざ挨拶などしない)決めつけるような良多の言葉に、光は思わず反論してしまった。
「……そうだな、悪い」
驚いた。男は言いたい放題言うだけで、謝らないと思っていたからだ。反論してマズいと思ったが、それも怒られるかと思ったからだ。
(お父さんが、そうだから)
光の父は、飲食店の店長で。店はそれなりに繁盛しているが、それは女性客に愛想を振りまくからだ。
それだけではなく、誘われればその客と出かけたり――いや、はっきり言おう。浮気するのである。
更にマズいのはそんな『接客』の方が生活のメインになっていて、母と光の住むアパートには気の向いた時にしか帰ってこない。
流石に生活費は入れてくれているようだが、なまじ外面が良い父を見ているだけに光の男性への印象は最悪だった。
「わたしこそ、ごめん」
同じように一括りにして、決めつけてしまっていた。そう思って謝ると、良多はその大きな目を更に見開いて――次いで、笑って細められたのに驚いた。
「お前、いい奴だな」
「あんたもね」
そう答えた光の頬は、気づけば良多の笑顔につられて緩んでいた。
……こうして、男に幻滅していた光と、女に幻滅していた良多は仲良くなった。
いや、良多の屈託ない笑みを向けられて『可愛い』じゃなく『嬉しい』と感じた辺り、光はすでに恋に落ちていたんだと思う。