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ついに最終回です。

ちかちか。

星のような物が流れる。

これはVR空間に入る時に共通するエフェクトだ。

そしてしばらく時が流れると、俺ははじまりの町にいた。

噴水広場前だ。

いつもより世界が広い気がする。

高級VRマシンを使っているせいだろう。


「ねぇ」


横から声を掛けられた。

振り返るとメイが居た。


「やっぱり……行くんだね?」


「そんなわけは……」


「うそだね」


メイはくすくす笑いながら言う。

実際、それは本心だった。

差し違えても。俺はそう思っていた。


「差し違えてでも。そう思ってるでしょ」


「……あぁ……」


「ばーかばーか、ぶじゅつばかー」


メイは鮮やかな唇をゆがめて罵倒する。


「そんなあんたにさ、未練、作ってあげようか」


そしてメイは蠱惑的に微笑み、俺に近づいて――



――頬にキスをした。



「…………はじめて……なのよね」


メイはうつむき消え入りそうに呟いた。


「メイ」


「う、うん」


「君の気持ちは受け取ったよ。俺は、是が非でも帰ってくる」


「っす、て言わないんだ」


そして俺は、ははは、と笑った。


メイも、笑った。


そうしてしばらく笑っていると、俺の体が光に包まれた。


「じゃあ、行ってくる」


「おう!次はもっと過激なことしてやるぜぇ!」


メイは挑発的なポーズを取り、投げキッスをこちらにした。

――俺は、笑った。





そして、俺は殺風景な部屋に居た。

毎度ながらここにいるカミタニさんは苦々しげな表情で口を開いた。



「キミは、これから西の荒野の向こうにある火山地帯の先の山岳地帯で敵と戦ってもらいます」


異存はありませんね?とカミタニさんは言う。

もちろん、異存はない。


「相手は後ろにバグの黒い空間を連れています。そこに落ちないよう、注意してください。


「わかった」


「それでは……御武運を……」






光に包まれ、気が付くと俺は山岳にいた。

視界の向こうには闇が広がっている。


……そして、遙か彼方に、黒い翼を広げた龍人が居た。

今なら相手の表皮も、骨格も、光彩も、全てが手に取る様に見えた。


『バオォォォォオオンッ!!』


そいつは威嚇だろうか、無意味なのだろうか、巨大な雄叫びを上げた。

俺は抜刀し、そいつの行動に備える。

と瞬間、奴の口が光った。

――ヤバイ!避けろ!

俺は瞬間的にレッドドラゴン・ドラゴニュートに変身するとその超スピードを生かして跳躍する。

するとさっきまでいた所を閃光が薙ぎ払った。

やべぇ!

蒸気を化した岩がしゅうしゅう音を立てている

ええい、あいつが飛べるなら俺も飛べるはずだ!

俺は背中に意識を集中した。

そしたら羽が生えた!

俺は羽を広げて飛びかかる!

しかし相変わらず体の芯から熱が勝手に出てくる変身だ。

だが今はこの熱が有り難い!

死の恐怖に震える心に鞭を打ち、俺は加速する世界で奴に切り掛かった。


ビシュゥン!


!?光の剣!!


敵は手元から光の剣を出し、こちらの刀をいなしたのだ!

エネルギーがそのまま固まったような棒状の光の剣が豪速で俺を狙う。

凄まじく速い!!

だが、まだまだ。

俺の意識が異様な高揚感で暴走しかける手前で、冷静さを取り戻し続けるという綱渡りで加速し、連撃を打ち込む!

そしてしばらく一瞬の一進一退の攻防が続き、俺達はその衝撃で一旦離れた。

衝撃波の連打がお互いの鱗をそぎ、それなりのダメージになっていた。


『ガァルゥ……』


「シィィィ……」


俺は正眼に構え、相手の喉に剣気をピタリつける。

対して向こうは解っているのかどうかだが、八双に構えて乱雑に殺気をばらまいていた。

――しかし、強い!

再び俺達は切り結び、いなし、いなされ、狙い、狙われた。

体の奥の熱はどんどん力を増し、思考が暴走しようとしていく!


ガギンガガギガガギガギガギギガン!!!


凄まじい早さの斬り合いが、衝撃波の乱打がどんどんエスカレートしていくが、両者にまだ深い傷はない。


――決定打が出ない!


乱雑なのに相手の動きは巧みだ。

そもそものスペックの高さのせいもあるのかもしれない。


「クッソッォォォ!!」


俺は容赦ない打ち込みを続ける。

しかしいなされる!

そしていなしての一撃をギリギリつばぜり合いで止めると、ヒリヒリと熱が伝わり、俺は剣先を回して相手に斬りかかろうとした。

だが次の瞬間、奴はもう一本手からの光の剣を出した!

ギリギリで体に刺さることは避けたがズンッとしたショックが羽根に伝わる。

反応しそこねた!!


「う、うわぁああッ!!」


片羽根を破られた俺は、そして俺はバランスを崩し錐揉みに落ちていく。

足下は黒い世界!ヤバイ!


「ガォォォォンッ!!!」


「!?ッドラゴン!!」


いつぞや助け、俺達を乗せてくれたドラゴンが助けに来てくれた!


「ありがてぇ!!」


そして俺はドラゴンの上にどしっと乗ると、ドラゴンは一鳴きして急激に上昇していく。

――が。遅い!相手の速度に比べるとドラゴンの飛翔は悲しいことに遅かった。


「ガオォォォォオ!!!」


すると奴はなぜかこちらを攻撃することなくほえて空中にとどまる。

その数秒後翼の生えた龍が飛んで降りてきた!

なぜか羽が生えているが間違いない!サーペントだ!

もしかして……奴は対等の勝負をしたいのか!?

加速する頭の中で奴の一挙手一投足を見ていると、奴が笑ったような気がした。


『ガオーーーーン!!!』


「このぉぉおおお!!!」


「ギャオォォオオオン!!!」


そして俺達は加速し、岸の試合の様に互いがすれ違う。


ギギギギギギン!


龍とドラゴンが一合する間に俺達は無数の剣をぶつけ合う!

剣閃は加熱し、俺の手元はびりびりと衝撃に震える。

衝撃波は竜たちの表皮をも削ぎ、血液が噴出し。


「キエェエエエエエッッ!!!」


『ギャオオ!!』


「ギャギャァ!!」


『ガッハハハハ!!!』


コイツ……笑ってやがる!

その顔、潰してやるぜ!!

ドラゴンが踵を返して反転する向こうで、龍も反転してこちらに向かってくる。

殺してやる殺してやる殺してやる!

俺は体を突き動かす熱に半ば支配されかけながら、奴に向かっていった。


『ガハハァッ!』


「テヤァァアアアッ!」


ギィッン!


両者は衝撃波を出しながら組み合う。

力は互角だ!

そしてギリギリとはがかみ合っていると、脚がドラゴンの肉に食い込み始めた。


「グオオオオオ……!!」


「ッ!大丈夫か!」


食い込むのは向こうも同じようで、龍が苦しんでいるのが解る。


『グギャァアア……!!』


痛みのあまりだろうか、竜達は滑空で地面に降り始める。

俺と奴はその様子を見送り、しばしじりじりした時間を過ごす。

そして竜が地に着いた瞬間、奴は斜面を衝撃波を出しながら突っ込んできた!


「うぉおおおお!」

俺も衝撃波を出しつっこむ。

そしてお互いの剣がぶつかり合い、衝撃はで地面にまっすぐの傷が出来る。


「おおおおおおお!!!」


『ぐがぁああああ!!!」


みしみしと剣が音を立てる。

ヤバイ!折れる!


ビキッ!


ひびが入った!

そして俺は間一髪で光の剣を磨り上げ、間一髪で斬撃を交わす。

その一撃をいなした刀はぱりん、と音を立てて折れた。


「クソッ刀が!」


激しい打ち込みに耐え切れ無かったのだろう。

むしろ、今までよく持ったほうだ。

せっかくの刀はあっという間に砕けてしまった。


柄を手放すと、体はヒトに戻り、素手で立ち向かうしかなくなる。

ここはダイスケさんの動きに習って……


と、思った拍子に、奴は光の剣を消した。

何事だ?と思ったが、どうやら素手で戦いたいらしい。


……もしかして、対等な条件で戦う事を望んでいるのか!?


敵はシュッシュッとボクシングのようにフットワークをしながら拳を繰り出している。


対等で戦いたいのなら……!アレがあった!一か八かだ!


そしてあるものを敵の前に放りなげた。

それは、粗末な銀の首飾り、『ヒトになる』首飾りである。 


「おい、そいつは俺と「対等」なヒトにに成れる首飾りだ。対等を望むなら、首にかけろ」


すると奴はなんでもないそぶりで奴は首飾りを着けた!


ボンッ!


『ガギィィイ……』


そこには……俺そっくりの人間が立っている!やはり……コイツは俺なのだろう。

それを見た俺は先輩の剣を抜刀し、礼をし、蹲踞する。

すると奴も光の剣を出し、礼をしてから蹲踞のポーズを取った!

そして立ち上がり、俺は正眼をピタリと喉に付けた。お互い正眼だ。

精神を集中する……

さっきまでと同じように時間がゆっくりに感じられる。

一度限界まで加速したのが俺のリミッターをはず易くしたのかもしれない。

今は相手の毛穴から息づかい……光彩の動きまで読める!


「イヤァァァァッッ!!」


俺が気合いを発すると、奴もそれに合わせて気合いを飛ばしてきた。


『ガァアアアアア!!』


一進一退、じりじりと互いの動きを読む間にも、俺達はわずかずつ横に動いた。

……学習している?

殺気までは乱雑な剣しか使わなかったはずだ。

それが今では……この剣気!

やつの正眼に射すくめられて喉がヒリヒリする。

これ以上上達する前に倒さなければ!!


「チェリャァァアアッッ!!」


俺は擦る様に手首を突きに掛かる。

すると相手の突きがこちらの胴を狙った。

それを体を開き片手持ちになる事で避けた俺はその剣の向こうの手を再度狙った。

すると剣身は相手の左手を浅く傷つけ、奴は低いうなりを上げる。


――こちとら剣道やってんだ!対人戦で負けるかよ!!


そして俺は両手で剣を握りなおすと、一足飛びに相手に斬りかかる!


「キィャァアアアアア!!」


奴はその打ち込みを剣をななめにすることで防ぐが、この鍔競り合いこそ狙っていた!

俺はしゅるっと剣を滑り込ませ、より深い鍔競り合いに移行していく。

そして刃根本まで押し下がると……


『ギャッ!』


ズバッ!


相手の右手の指が落ちた!

そう、光の剣に鍔はない!

そして右手が離れて力が弱くなった瞬間を俺は見逃さない。

一瞬一足飛びに後ろに引き、その後滑るようなすり足でまっすぐ相手の顔面を貫いた!

肉を裂き、骨を貫いて、その中を貫く感触が手に伝わる。

これが、奴の最後だ。


『ア……アァ……』


そして剣を抜き、残心を終えると……奴は倒れた。


「……勝った……のか?」


俺が呟くと同時に奴は光の粒子になって消えていく。

きっと、俺は勝ったのだ。





奴を倒したあと空の闇はどんどん消えてゆき、その後には青空が広がる。

なぜ奴は対等の勝負をしたがったのだろう……

……やはり、奴は俺だったのか。

全ては、きっとわかる時は来ない。

あとはカミタニさんに任せよう。

と、思っていると不意に耳元に声が聞こえた。


『あ、ライトさん、繋がりましたね』


「はい、カミタニさん、終わったんですね……」


「はい、この世界は、全ネットの危機は去りました……よくやってくれました、ライトさん」


「はは、何とかやっただけですよ」


「あなたは英雄と呼ばれてもいい所行をしたのですよ?」


「でも、あいつは俺だったんです」


「それでも、あなたは私たちの英雄ですよ」


「ははは、じゃあ、そういう事にしておきましょう」


笑う俺に、一陣の風が吹き付けた。


これで、終わったんだ。


「ところでライトさん」


「はい?」


「今はじまりの町にサーペントが飛び込んできて、戦闘になっているんです。加勢に行きますか?」


そして、俺は笑顔のまま答えた。



「もちろんっす!」





そこでは、みんなが戦っていた。

俺の知る仲間達が、まだ知らない人達が。

みんなが戦っていた。


「今帰ったっす!!」


「「「「おう!」」」」


『ギャァオオオオオ!!』


「大事なことは、後だからね!」


飛び降りてきたメイはこっちを見て優しい笑顔でいう。


「わかってるっす。今はコイツを倒すっすね!!」



さぁ、冒険のはじまりだ!!






モンスター・スピリット・オンライン


おわり?

これで物語は一旦おしまいです。

いかがでしたでしょうか?

未熟な筆で皆さんを困惑させたかもしれません。

でも、これが今の私の精一杯でした!

読了いただき、ありがとうございました!!


……でも2章に続くんですけどね!



…………多分

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