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武器を馬鹿にする男に戦いで武器の強さを見せるため、俺は男と対峙する。

次の瞬間、カウントダウンをしていたPvPの表示が0になり、ゴングが鳴った。


「えっ?」


びゅん、とすり足で間合いを詰める。

だが一撃を突きこむ前に、相手の乱暴な動きがそれを阻害した。


「このっ!」


相手は次いで右手を振るってパンチを放つ。

が、鈍い。俺は剣の腹で相手のパンチをいなすと、そのまま勢いに乗って相手の体に沿う様に周り、1回転して背中を切り上げた。


「なにっ!?」


次急いで振り返ったゴーレムの挙動に合わせて顔面に突きを放つ。

剣は鼻っ柱をえぐり石がこぼれた。


「ぎゃぁ!」


あわてて顔を押さえる。痛覚があるのだろう、これで良い的だ。


「ッチェリャァァ!」


ガキッ!


裂帛の気合いを込めた一撃は、とっさに組んだ腕に阻まれ、そのまま押し合いになる。

……まずい!

パワーならゴーレムの方が強いのは明らかだ。このままでは押し負ける。


「ヤッ!」


そこで俺は相手の膝に軽い蹴りを入れ、相手が一瞬剣から離れた隙に、俺も剣から手を離してゾンビに変身した。


「テリャァァッ!」


そして空中の剣を掴み、八双に構え直して怒濤の連打を掛ける。相手は目を白黒させ、両手を組んで乱撃を受け止めていた。


「な、何で変身してんのに剣もってんだよ!」


「キエェェェェッッ!」


しかし俺は意に介さない。こちとら世界が白黒でゆっくりに見えるくらい集中しているのだ。

怒濤の剣がついには腕を削り切り取らんとしている。


「こ、こええ!やめてっ!ぎゃぁああああッ!」



「チェストォォォッッッ!!!」



そして懇親の気合いを込めた一撃が、相手の両腕ごと顔面を切り裂く。

バキッと核の砕ける音がして、ゴーレムはばったり倒れて動かなくなった。

俺は八双のまま残心をとると、フゥーっと大きな息を吐いた。

……世界に色が戻ってくる。

対人ならこんな物だ。


「勝った!」


「ぃやったぁー!!」


「おっしゃー!!」


「おーすげー!」


「いいぞー!兄ちゃん!」


いつの間にやらギャラリーが出来ていたらしく、その人たちが盛大に騒いでいた。

メイと店主もハイタッチなんかしている。

俺はとりあえず手を振っておく。

で、相手の方に向き直ると――光球が浮かんでいた。


「えっ?」


すうっと光球が俺の体に吸い込まれる。

ステータスを見たら妙な物が増えていた。




ライト ゾンビ・スピリット

強さ:素人ではない。


身体:鈍いが馬力はある。

精神:いまいちだが一部は無敵。

魔法:よわい。


所持スピリット

ヒト・スピリット

ゾンビ・スピリット

ジャッカロープ・スピリット

オルトロス・スピリット


所持ソウル

ソコラビット・ソウル×2

マンキー・ソウル

フォレストビー・ソウル

ヒト・ソウル




ヒト・ソウル?ヒトもソウルを出すのか?

ああでもこの世界の住人は全てスピリットだから出るのか。


「なに!?ソウル出るの!?ていうか勝った!!」


「多分、スピリットだから出るんす。あ」


「そんなことよりソウルよソウル!なんてソウルなの!?」


言う間にゴーレムが消えて、次の瞬間には無傷の青年が立っていた。

青年は最初ヒィッ!と少し恐慌していたが、こっちはそれどころじゃない。

緑の髪の少女がぴょんぴょん跳ねてこっちに質問してくる。

そう、小さくて一部の大きい女性がぴょんぴょん跳ねてだ。


「お、落ち着くっす!ソウルはヒト・ソウルって名前だったす!」


「俺……負けたのか……」


「あ、そうっすね、自分の勝ちっすからお引き取り願うっす」


「ヒッ!ハイ!」


そして怯えた顔をした青年は逃げるように去っていった。

猿叫がちょっと効き過ぎたらしい。


「とりあえず、この剣返すっすよ。いい剣だったっす」


多少刃めくれができてしまったけど……そこは砂岩相手だから仕方がない。


「そういってもらえるとうれしいわ。私はミミ。鍛冶屋をやってるの」


「自分はライトっす。こっちはメイっすよ」


「よろしくー」


そして俺はヒトに戻り、ミミさんに、先輩に鉄の剣について聞いた事を切り出した。


「……で、鉄の剣が欲しいならミミさんの所って先輩、ええと、ケンに言われたんすよ」


「あー、ケンの紹介かぁ」


「有名なんですか?」


「あいつはトッププレイヤーの一人だからね」


その剣も私が作ってるけどね!とミミさんは腕まくりする。

先輩トップだったんっすか……


「で、剣を売ってくれるんすか?」


「だめかな」


「なんでっすか!?」

「なんでその流れで断るの!?」


二人そろってつっこみを入れてしまった。

しかしミミさんはこちらの反応に対して笑顔で言う。


「ケンの紹介だからね。直接は売ってあげない」


「じゃ、じゃあどうするんすか?」


「……じゃあ、鉄作る所から行こうか!」


「マジすか」


「マジよ」


「マジかー……」


そして俺は剣を鉄から作ることになった。





東西南北の中で鉄がありそうと言えば、赤茶けた地面が広がる西の荒野だろう。

俺達は露店を畳んだミミさんを連れて、鉄を作りに西の荒野へ行った。


「ふーむ、西ねぇ」


ミミさんは面白そうにこちらを見ている。


「まずかったっすか?」


「ううん、そんなことないわよ。じゃあ、ノーヒントだとかわいそうだから、ここでの鉄作りに必要そうな物は教えてあげるわ」


ただし、そっちが聞いた物しか教えないわよ?とのこと。


「聞いた物だけっすか……うーんと……」


「まず鉄鉱石よね。ここの赤い砂になるまえの固まりがどこにあるか」


「そうっすね。それに、石炭なんかあればいいんすけど」


無い場合北の森林を伐り出して燃料にする必要がある。


「おっけー、どっちもあるよ、ついといで」


そういってミミさんが虎?に変身して走り出す。

俺もオルトロスに変身して、メイはそのままで後を追いかけた。



「ミミさーん、その変身てなんて言うんすかー?」


俺は走りながらついでに気になったことを聞いてみる。


「えーっ!これね!フォレストっ!タイガーっ!北の!森の!奥にいる!」


ミミさんは躍動するフォレストタイガーの口からとぎれとぎれに声を出した。

こういうとき顔が二つあると呼吸と喋りに振り分けられて楽だなぁ。

なんてどうでも良いことを考えていると、一行は荒野に空いた穴に辿り着いた。


「ここっすか?」


「洞窟?みたいだけど……」


「そう、洞窟。ここで石炭も鉄鉱石も採れるわ」


そういってミミさんはヒトに戻り、背負っていた鞄からピッケルを数本取り出した。

次いで荷物の中からカンテラを取りだして火を付ける。

そして彼女は二つ括りにした緑の髪を後ろに流し、着込んでいるオーバーオールの具合を少し確かめた。


「っし!行くわよ!」


「待つっす」


と、ミミさんが洞窟に行こうとするところで、俺は待ったをかけた。

ぴた、と止まったミミさんが不思議そうにこっちを見てくる。


「そんないきなり入って酸素なんかは大丈夫なんすか?」


鉄があるということは空気中の酸素を鉄に吸われている可能性があり、石炭があるということは爆発性の粉塵が漂っているかもしれないと言うことである。

物理現象がリアルなこのゲームでそれがないとは言い難いのだ。


「ってわけで、そういうの調べなくて大丈夫なんすか?」


「あー……痛いとこ突くわねぇ。そこら辺何ともならないから死に戻り覚悟でヒトで行くのが一番効率的なのよね……」


「そんな力技な……」


「せめてヒト以外で道具が使えたら……って使てたじゃん!キミどうやってたの?」


ミミさんが俺に詰め寄ってくる。

そんな事言われてもものは単純で……


「じゃあ、ちょっとピッケル貸してくださいっす」


「うん、使って?」


そしてピッケルを前に置いてもらった俺は、ゾンビに変身してピッケルをつかむ。


「これで使えば終わりっすよ?」


「えっ?でも装備って反映されないじゃない」


「そりゃ変身を跨いで反映はされないっすけど……」


ジワッと体がぼやけで俺がヒトになる。


「ほら、こんな風に手ぶらになるっす。けど」


俺は手を開いてピッケルがない事を示し、次の瞬間にはまたゾンビになる。

するとその手には……ピッケルがある。


「変身ごとに装備が持ち越しされるっすよ?」


「えぇー!?」


「そうよ、だからこんな風に……」


メイもそういってヒトに戻る。

すると鍋や水袋が背中に現れた。


「荷物持ちも出来るのよね」


そしてメイはエンプーサに戻って軽やかにステップを踏む。

身軽さは言われないでも解るけれども。


「ちょっ……えっ!?……ってことは!!」


「あー、変身ごとに装備が必要だし、荷物持ち変身を持てばインベントリの代わりになるっすよ」


「うーわーすっごいじゃない何で今まで気付かれなかったの!?」


「多分武器を使うことにこだわるヒトがあまりいなかったせいじゃないかと……」


「まだ私たちで第2陣なのもあるかしらねぇ」


「そりゃこのゲームって検証屋があんまり居ないのは有名だけど、気付かないってひどいわよ!」


ミミさんは興奮した面持ちで言葉を続ける。


「あ!もしかしたら解ってて隠してるのかも、あいつとかあいつはそういう事しそうだし!」


「だれかわかんないすよ……まあ、俺達は気付いたんで、適当に人に教えたりしといてくださいっす」


「いいの?お客さんにばらまいちゃうよ?」


「それで客が増えてくれればいいっす。つきあってくれる恩返しっすよ」


メイも横で頷いている。


「うわーおなんて心の優しい子たちなんでしょ!わかったわあとで私の秘蔵の鉄を教えちゃう!」


「あざっす!」


「ありがとうございますっ!」


そして一通り騒いだ俺達は、製鉄に必要な鉱石を集めるため洞窟に向かうのだった。



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