6-2 中学生と知り合い
正悟が住む街にはゲームが置かれた店は存在するが、スーパーの隅のコーナーに置かれた園児たちが楽しむ程度のものしかない。そこで目指すは隣の市にある巨大ショッピングモール。そこには広いスペースにメダルやビデオゲームなどをはじめ大人子供が楽しめるゲームセンターが入っていた。
祥子のMINIに乗ること40分。タワーの駐車場に止めて2人の足は遠回りすることなくゲームセンターに向かった。
「結構広いねー」
「うん。お姉ちゃんは初めて?」
「日本に戻ってきてからはこれが初めてだね」
「アメリカでは?」
「アメリカでは行ったことはないなー。ショッピングセンターの隅には数台置いてあるのは見たけど。でも少なくともこれだけ大規模なのはないと思うよ。この上のレベルとなるとラスベガスのカジノくらいかもね」
「へー、意外。そうなんだ」
「それにしてもこれだけの間に進化したねー。あれってプリクラだよね? メダルゲームも派手になって、景品の質も上がっているし」
祥子が懐かしむように歩きながら周囲を見渡していると1つのクレーンゲームの台の前で止まった。
「かわいい~」
見つめる先はクマのマスコットぬいぐるみが山積みで置かれていた。
「……そう?」
目を輝かせる祥子に対して、正悟は一瞬顔を曇らせた。
クマのぬいぐるみ。それだけ聞けば実に可愛らしいイメージだが、よく言えば色彩豊か悪く言えば子供にやらせてもこうはならないだろうという配色だった。茶系統などどこを探しても見当たらず、眩しいの一言に尽きるピンク・ブルー・イエロー・グリーンなど。どのようなコンセプトでこれらのキャラクターが生み出されたのか開発者に聞いてみたいが、それなりの理由と需要はあるのだろう。しかし性別の差か年齢の差か正悟にはこのクマたちがかわいいとは思えなかった。
祥子は100円玉を入れてボタンを押した。アームが目指している所に向かい、クマの胴体部分をしっかり捕捉。左右のアームで掴んで持ち上げ……ずに優しく撫でた。
「えーー!?」
そう声が漏れながらすかさず100円を投入し、再度チャレンジする祥子。しかし結果は同じだった。毛並みを整えるように、時に振動で少し手前の穴側へずれたように感じるが、あまり変わらないようにも見える。
「正ちゃん、両替してきて!」
「う、うん」
ここまで祥子がはまるとは想像していなかった正悟は完全に蚊帳の外だったが、存在を忘れていたわけではなかったようだ。1000円札を受け取った正悟は近くの両替機を探した。少し歩くとすぐに見つけた。
ちょうど制服姿の女子中学生2人組が両替をして小銭を取っている所だった。スクール鞄に西中のエンブレムが貼られている。
大人しく正悟が待っていると、そのうちの1人のスクール鞄についているマスコットに気が付いた。
「あ、さっきのだ」
まさしく祥子が今狙っているクマのマスコットだった。となると少なくとも年齢差ではなかったみたいだ。
その正悟の声に振り返った1人の女子中学生。赤ぶちの眼鏡に耳より下で2つ結びにさせた黒髪の少女が正悟を見ると目を輝かせた。
「わ、かわいい~。え、なになに。どうしたの?」
学年は不明だが同じ中学生だ。なのに負けている身長差のせいか、ほぼ完全に小学生的な扱いをされた。正悟はその誤解を解こうとしたが予知できない急な事と少女から瞬間的に放出された特別なオーラがそれを困難にさせた。
「え、あの……そのクマのぬいぐるみが……」
「え? ああ、これね。かわいいでしょ。ボクも好きなの?」
「い……あ、うん。今ちょうどやっている所で……」
「へー。じゃあ、お姉ちゃんが手伝ってあげるよ。どこどこ?」
少女はそう言いながら正悟の手を取り引き連れて先頭で歩き出すのだった。




