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「異世界は金で強くなるらしいので、現代から稼いで成り上がります」  作者: れいじ


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第62話「空へ続く都」

第62話です。


再び異世界へ戻り、物語は王都グランセルへ。


移動の中で少しずつ成長していく悠真と、

変わらず広がり続けるこの世界。


そしてついに、その姿が見えてきます。

翌朝。


 Lumiere Kitchenの一階は、いつも通りの賑わいだった。


 焼ける音、湯気の匂い、客の笑い声。

 戦いや移動の連続だった数日とは違い、穏やかな時間が流れている。


 テーブルに並んだ料理を前に、悠真は箸を動かしながらふと思い出したように口を開いた。


「そういえばさ」


 ユウジが顔を上げる。


「ん?」


「闘技場ってどうなったんだ?」


 あの大会。


 バランが関わっていた、あの異様な空間。


 ユウジは少しだけ考えるように視線を上げてから答えた。


「ああ、あれか」


「大会は続くらしいぞ」


「続くのか?」


 悠真が少し意外そうに言う。


 ユウジは頷いた。


「闘技場がなくなると、人が来なくなるからな」


「この街、あれでかなり回ってるんだよ」


 横で師匠も口を挟む。


「客が減れば店も減る」


「そうなりゃ全部終わりだ」


 ユウジが続ける。


「だから商業ギルドが中心になってさ」


「いろんな団体とか商人から金集めて、運営することになったらしい」


「へえ……」


 悠真は感心したように頷く。


「ただ」


 ユウジが少しだけ声を落とす。


「ボーナスステージはなくなるみたいだけどな」


 あの悪魔。


 あの異常な戦い。


 それを思い出し、悠真は苦笑する。


「まあ……そりゃそうか」


 あれは、あっていいものじゃない。


 だが大会そのものは続く。


 この街にとって、それは必要なものなのだ。


「優勝賞金は変わらないらしいぞ」


「五百万マニー」


 リズが目を丸くする。


「すご……」


 悠真は少しだけ考えるような顔をした。


 だがすぐに首を振る。


「……今は石版だな」


 やるべきことは決まっている。


 話はそこで一区切りとなり、四人は食事を終えた。


 準備を整え、店を出る。


 ララが一歩前に出た。


「行こうか」


 その言葉と同時に、魔法の絨毯が広がる。


 空気が揺らぎ、布が宙に浮かび上がる。


 四人が乗り込むと、ゆっくりと浮上した。


 地面が遠ざかる。


 建物が小さくなる。


 そして。


 一気に、空へ。


 風が頬を打つ。


 視界が開ける。


 広がる大地。


「……すげえな」


 悠真が呟く。


 何度か見てきた光景のはずなのに、やはり慣れない。


 ララが前方を見ながら言う。


「一気には行けないから」


「途中で休みながら進むよ」


「ああ」


 悠真が頷く。


 王都グランセルまでは距離がある。


 魔法の絨毯でも、連続飛行は難しい。


 しばらく進むと、ララが高度を下げる。


 草原へ降り立つ。


 その瞬間。


 気配が動いた。


「来るぞ」


 レオンが短く言う。


 茂みの奥から魔物が飛び出してくる。


 狼型。


 素早い。


 悠真はすぐにカードを取り出す。


「いくぞ……!」


 短く詠唱。


 赤い魔法石が反応する。


 熱が集まる。


 次の瞬間、炎が放たれる。


 魔物に直撃。


 爆ぜる。


 倒れる。


「……よし」


 だが。


 パキン、と音がした。


 魔法石にヒビが入る。


 そして砕けた。


「……やっぱりか」


 悠真が苦笑する。


 ララが隣で言う。


「出力が強すぎる」


「もう少し抑えて」


「ああ……」


 まだ慣れていない。


 だが、前よりは確実に扱えている。


 リズが笑う。


「でもちゃんと戦えてるよ」


 レオンは腕を組んだまま言う。


「無駄は多いがな」


 その言葉に、悠真は肩をすくめる。


「分かってるよ」


 短い休憩の後、再び空へ。


 移動と戦闘を繰り返しながら、少しずつ距離を縮めていく。


 そして。


 しばらく飛んだ先で。


 ララが静かに言った。


「……見えてきた」


 悠真が前を向く。


 最初は、小さく見えた。


 遠くの影。


 だが。


 近づくにつれて、それは形を持つ。


 巨大な城壁。


 どこまでも続く外壁。


 その内側に広がる建物群。


「……あれが……」


 悠真の声が自然と小さくなる。


「グランセル……」


 圧倒的だった。


 グラード・マーケットとは比べ物にならない。


 規模が違う。


 密度が違う。


 そして。


 その背後。


「……なんだ、あれ」


 思わず声が漏れる。


 王都の奥。


 そこにあったのは。


 空へと続く、巨大な階段だった。


 途切れることなく、上へ。


 ただ上へ。


 まるで天へ昇るように伸びている。


 その先は見えない。


 雲に隠れている。


 そしてさらにその奥。


 雲を突き抜けるように、ひとつの山がそびえ立っていた。


 異様なほどに高い。


 この世界のどの山とも違う。


 ただそこにあるだけで、空気が変わる。


「……すごい……」


 リズが呟く。


 ララも無言で見つめている。


 レオンは目を細めた。


「……変わってねえな」


 だがその声には、わずかな緊張が混じっていた。


 悠真はただ、見上げていた。


 この世界の広さを。


 その奥にあるものを。


 まだ知らない何かを。


 確かに感じながら。

第62話を読んでいただきありがとうございます。


今回は移動回でありながら、

世界のスケールをしっかり見せる回となっています。


・闘技場のその後(世界が動いている描写)

・魔法の絨毯による移動

・悠真の魔法の成長と限界

・そして王都グランセルの圧倒的な存在感


特に後半の描写は、

これまでの街とは明らかに違う“規模”を意識して書いています。


さらに、王都の奥に見える巨大な階段と山。


ここではあえて詳しく説明していませんが、

今後の重要な舞台となる場所です。


見えているのに、まだ辿り着けない。

この距離感が、物語に奥行きを持たせてくれます。


次回はいよいよ王都グランセル編へ突入。


引き続きよろしくお願いします。

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