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「異世界は金で強くなるらしいので、現代から稼いで成り上がります」  作者: れいじ


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第42話 魔法国家アストリアと、神殿の石版

第42話です。


ついに一行は、魔法国家アストリアへ到着します。


空に浮かぶ橋。

白い塔。

魔法が日常に溶け込んだ街並み。


これまで訪れた国とはまるで違う、新たな世界が広がります。


そして神殿には、新たな石版――清水寺の絵が刻まれた一枚が保管されていました。


しかし、ララの帰郷は歓迎ムードだけでは終わりません。

白い塔が、空へ伸びていた。


遥か遠くから見えていたその都市は、近づけば近づくほど現実感を失っていく。


空中に浮かぶ橋。


宙を滑る小舟のような乗り物。


淡い光をまとった街路樹。


街全体を包む透明な膜のような輝き。


悠真は言葉を失っていた。


「……すげえ」


それしか出てこなかった。


リズも隣で目を輝かせている。


「綺麗……」


レオンでさえ、少しだけ感心したように街を見上げていた。


「金の街とは全然違うな」


ララは少し誇らしげに微笑む。


「ここが魔法国家アストリア」


「私の故郷よ」


門をくぐると、さらに別世界だった。


通りを歩く人々の多くが、指輪や杖、魔法石の飾りを身につけている。


荷物は宙に浮き、店の看板は淡い光で文字を描き、子供たちが小さな光球を追いかけて遊んでいた。


「魔法が生活に入り込んでる……」


悠真が呟く。


ララは頷く。


「この国では、魔法は特別なものじゃないわ」


「学問であり、技術であり、生活そのもの」


悠真は胸が高鳴るのを感じた。


自分にも、魔法カードと魔法石があれば使えるかもしれない。


そう思うだけで、目に映るものすべてが宝物のように見えた。


だが、ララの表情は少し硬い。


リズがそれに気づく。


「ララ、大丈夫?」


「……うん」


ララは短く答える。


「まずは神殿に行きましょう」


「そこに、石版の一枚がある」


一行は王都の中央を抜け、白い階段を上がっていく。


高台の上に建つ神殿。


柱は白く、屋根は青。


壁面には古代文字のような模様が刻まれている。


神殿の奥へ進むと、空気が変わった。


静かで、冷たい。


中央の広間。


そこに石版があった。


「……これが」


悠真は息を呑む。


灰色の古い石。


そこに刻まれているのは、崖の上に張り出した大きな舞台のような建物。


「清水寺……」


悠真が小さく言う。


リズが覗き込む。


「これも、悠真の世界の場所?」


「ああ」


「間違いない」


ララは石版の前へ立つ。


「この石版を研究しているの」


「もう何年も」


「でも、まだ分からないことばかり」


悠真が聞く。


「他にもあるんだよな?」


「王都にも一枚」


ララは答える。


「でもそっちは王宮管理」


「簡単には見られないわ」


レオンが腕を組む。


「面倒だな」


その時だった。


「ララ」


冷たい声が響いた。


全員が振り向く。


神殿の入口に、上品な服を着た女性が立っていた。


銀に近い金髪。


ララと同じ色の瞳。


年齢は四十前後だろうか。


美しいが、表情は厳しい。


ララの顔が強張る。


「……母様」


悠真たちは一瞬で察した。


家族だ。


女性はララではなく、悠真たちを一瞥する。


「また外の者を連れてきたのね」


ララは背筋を伸ばす。


「必要な人たちです」


「石版のことを知るために」


母は静かに息を吐いた。


「また石版」


「あなたは何度、その危険な研究に関われば気が済むの?」


ララの手が、わずかに握られる。


「危険だからこそ、調べる必要があるの」


「何も知らないまま放置する方が危ない」


母の表情が少しだけ揺れる。


怒りというより、心配だった。


「あなたには他の道があるわ」


「王宮魔導師への推薦も来ている」


「名門フェルシア家の娘として、もっと相応しい未来がある」


ララは俯かない。


「私の未来は、私が決めます」


空気が張り詰める。


悠真は口を出していいのか迷った。


リズも黙っている。


レオンだけは腕を組んだまま、少し退屈そうに見えていた。


母はララを見つめる。


「その研究で、あなたの師は消えた」


ララの表情が変わった。


悠真も息を止める。


師。


失踪。


母は続ける。


「石版に関わった者がどうなるか、あなたは知っているでしょう」


「それでも続けるの?」


ララは少しだけ唇を噛んだ。


それでも、目は逸らさなかった。


「続けます」


「私が逃げたら、誰も真実に近づけない」


母は悲しそうに目を伏せた。


「……頑固なところまで、あの人に似ている」


それだけ言うと、母は悠真たちを見た。


「あなたたち」


悠真は背筋を伸ばす。


「はい」


「この子を危険に巻き込むなら、許しません」


悠真は少し迷った後、はっきり言った。


「巻き込むつもりはありません」


「でも、俺たちも石版のことを知りたいんです」


「知らないまま集めるのは危ないって、ララが教えてくれました」


母は黙る。


悠真は続ける。


「だから、ちゃんと調べたい」


「危ないなら、危ない理由を知りたい」


ララが驚いたように悠真を見る。


リズも小さく笑う。


母はしばらく悠真を見つめていた。


そして、静かに言った。


「……なら、覚えておきなさい」


「石版は宝ではありません」


「多くの研究者がそう言い残して消えました」


悠真の背中に冷たいものが走る。


母はララへ視線を戻す。


「今夜、家に戻りなさい」


「話があります」


そう言い残し、母は神殿を去っていった。


しばらく誰も話さなかった。


やがてレオンがぽつりと言う。


「飯、出るのか?」


ララが思わず吹き出す。


張り詰めていた空気が少しだけ緩む。


「……たぶんね」


リズも笑う。


「レオンらしい」


悠真は石版を見る。


清水寺の石版。


そしてララの母が残した言葉。


石版は宝ではない。


その言葉が、いつまでも耳に残っていた。

第42話を読んでいただきありがとうございます。


今回はアストリア編の本格スタート回でした。


まず描きたかったのは、魔法国家アストリアの“格の違い”です。


・空中橋梁

・魔道具による生活インフラ

・街全体に漂う魔法文化

・学問としての魔法


これまでの街が商業都市だったのに対し、

アストリアは文明国家として描いています。


読者にも、


「次の舞台は一段上の世界だ」


と感じてもらえる回になっています。


そして神殿で登場した四枚目の石版。


今回は清水寺でした。


日本を知る悠真だけが意味を理解できる、

この構図は引き続き物語の大きな強みです。


さらに重要なのがララの家庭事情です。


ララは自由に見えて、


・名門フェルシア家の娘

・将来有望な魔導師

・家の期待を背負う立場


でした。


それでも石版研究を選んでいる。


ここに彼女の覚悟があります。


母親が反対するのも、単なる支配ではなく、


危険だからやめてほしい

娘を失いたくない


という愛情が根底にあります。


そして最大の伏線はこの言葉です。


石版は宝ではない。


ここで物語は、


集めれば得する秘宝探し


ではなく、


触れてはいけない何かに近づいている話


へ変わっていきます。


かなり大事な転換点です。


次回はララの実家、あるいは王都側の石版調査へ進めても面白いですし、

家族会議から感情面を深掘りしても強いです。


よろしければブックマークや評価をいただけると励みになります。


引き続きよろしくお願いします。

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