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「異世界は金で強くなるらしいので、現代から稼いで成り上がります」  作者: れいじ


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第1話 穴の向こう側

はじめまして。


この作品は、

「金があれば強くなれる世界」に迷い込んだ高校生が、

現代と異世界を行き来しながら“稼ぐ力”で成り上がっていく物語です。


剣や魔法の才能ではなく、

どうやって金を生み出すか――そこに焦点を当てています。


第1話は、すべての始まり。


異世界に落ちるまでの違和感と、

“戻れないかもしれない”という現実を描いています。


少しでも引き込まれたら、ぜひ続きを読んでいただけると嬉しいです。

夜だった。


風の音に混じって、わずかに違う音がした。


コツ、コツ……と、天井の上から響くような音。


神代悠真は、ベッドの上で顔を上げた。


「……なんだ?」


気のせいかと思ったが、また鳴る。


コツ、コツ。


一定の間隔で、何かが動いている。


ネズミにしては、妙に規則的だった。


耳を澄ませる。


音は、天井裏の一点から聞こえてくる。


そのとき、不意に昔の記憶がよみがえった。


幼い頃、天井裏に入ろうとして強く止められたこと。


「そこは危ないから、絶対に入るな」


あのときの母親の声。


ただの注意じゃなかった。


まるで、“触れてはいけないもの”に触れようとしたときの顔だった。


「……なんで今さら」


小さく呟く。


だが、音はまた鳴る。


コツ……コツ。


気になって仕方がない。


「……見るだけだ」


自分に言い聞かせるようにして立ち上がる。


押し入れから脚立を出し、天井の点検口を開けた。


ギィ、と古い音。


暗い空間。


スマホのライトを点け、体を滑り込ませる。


天井裏は静かだった。


さっきまでの音は消えている。


「……おい」


返事はない。


奥へ進む。


木の梁を踏みながら進んでいくと、やがて違和感のある場所にたどり着いた。


一枚の板。


明らかに周囲と違う。


後から塞いだような、不自然な形。


しゃがみ込み、ライトを当てる。


表面には細かい模様が刻まれていた。


意味は分からない。


だが、ただの傷じゃない。


「……なんだよ、これ」


指で触れた瞬間。


ガンッ


足を引っかけた。


バランスを崩す。


「うわっ――」


とっさに体重が板にかかる。


ミシッ


嫌な音。


次の瞬間、板が割れた。


「は――?」


支えが消える。


落ちる。


暗闇へ。


落ちる、落ちる。


時間の感覚がなくなる。


家の高さじゃない。


そう思った瞬間。


ドンッ


強い衝撃。


「っ……!」


息が止まる。


しばらく動けない。


やがて、ゆっくりと起き上がる。


スマホのライトが周囲を照らす。


見知らぬ天井。


石のような材質。


崩れた壁。


放置された空間。


「……どこだよ」


立ち上がる。


見上げるが、落ちてきた穴は遠すぎて見えない。


戻れない。


その事実だけが、はっきりしていた。


半壊した扉を押す。


重い音と共に開く。


外へ出る。


――違う。


それだけで分かった。


空が違う。


景色が違う。


空気の匂いすら違う。


言葉にならない違和感が、全身を包む。


「……マジかよ」


そのときだった。


ガサッ


背後の草むらが揺れた。


振り返る。


黒い影が飛び出してくる。


速い。


四足。


牙。


「――っ!?」


理解するより早く、目の前に迫る。


獣。


だが、見たことがない形。


体は犬に近いが、皮膚は硬質で、目が異様に赤い。


「うわっ――!」


逃げようとするが、足がもつれる。


間に合わない。


その瞬間。


ヒュンッ


風を切る音。


次の瞬間、目の前の獣の首が、斜めにズレた。


遅れて、血が噴き出す。


ドサッと音を立てて倒れた。


「……え」


何が起きたか分からない。


数歩遅れて、誰かが近づいてくる。


振り向く。


女だった。


短めの黒髪。


軽装の防具。


片手に剣を持っている。


血を軽く振り払うと、無造作に鞘に収めた。


「……ぼーっとしてると死ぬよ」


低い声。


淡々としている。


悠真は言葉が出ない。


ただ、その女を見ていた。


女は悠真の格好を見て、わずかに眉をひそめる。


「その服……」


一瞬、警戒するような目になる。


「どこから来た?」


問いかける声は鋭い。


悠真は答えに詰まる。


どう説明すればいい。


そもそも自分でも分かっていない。


「……分からない」


正直に言う。


女の目がさらに細くなる。


明らかに疑っている。


当然だ。


こんな状況で信用される方がおかしい。


数秒の沈黙。


女は小さく息を吐いた。


「まあいい」


倒れた獣を足で軽く転がす。


「とりあえず、あれに食われなかっただけマシだね」


そう言って、剣を持ち直す。


「この辺、弱いのでも普通に人殺すから」


さらっと言う。


悠真は、ようやく声を出した。


「……ここ、どこだよ」


女は一瞬だけ迷うような顔をしてから、短く答える。


「レグナード圏外」


聞いたこともない名前。


やっぱり、通じない。


その反応を見て、女は完全に警戒モードに入った。


「……ほんとに何も知らないのか」


「知らない」


即答だった。


嘘をつく余裕もない。


女はしばらく考えるように悠真を見ていたが、やがて肩をすくめた。


「変なのに絡まれたな」


そう言って、踵を返す。


「ついてくる?」


振り返らずに言う。


「このまま一人なら、次は死ぬよ」


淡々とした言葉。


脅しじゃなく、事実として言っている。


悠真は、少しだけ迷ってから。


「……行く」


そう答えた。


女は一瞬だけこちらを見て、軽く頷く。


「じゃあ来な」


歩き出す。


その背中を追いながら、悠真は口を開いた。


「……名前は?」


女は少しだけ振り返る。


「リズ」


短く、それだけ。


「リズ・アルフェン」


そして逆に聞き返す。


「あんたは?」


悠真は息を吸った。


この世界で、初めて名乗る。


「神代悠真」


その名前が、この世界でどういう意味を持つのか。


まだ、誰も知らない。


第1話を読んでいただきありがとうございます。


ここから物語は、

「金=強さ」という世界の仕組みを軸に進んでいきます。


次回は、

主人公が初めて“稼ぐ”という行動を取り、

この世界の現実を知る回になります。


そして、今回登場したリズも、

ただの助け役では終わりません。


この先、しっかり物語に関わってきます。


よろしければブックマークや評価をいただけると励みになります。


引き続きよろしくお願いします。

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