第41話:同調率
実に不思議な光景だった。
喜屋武はペンを走らせる。
それに併せてキャシーが、口速にリアルタイムで応えた。
《え?喜屋武さんって、英会話・・・》
キョトンとする結城に、喜屋武は窘める様に、
「いいかい、結城クン。俺は一度も、英会話が出来ないとは言ってないぜ。情けない話だが、俺はどうも英語の発音ってヤツが苦手でね。話す時はいつも筆談なのさ」
結城は唖然として、
「じゃあ、キャシーの早口も・・・」
「あぁ、勿論、全部理解出来るさ」
喜屋武はニヤリと笑い、
「まぁ、見ていたまえ」
喜屋武の筆談によるキャシーへのインタビューは、食堂の中で異彩を放ち始め・・・、結城が気付けば、あちこちの警官達から注目を受ける事となったのだ。
喜屋武は静かにペンを置くと、
「成る程ね・・・。理解した。ありがとう、キャサリン捜査官」
キャシーはノー・プロブレムと目を細め笑うと、また煮込みハンバーグを食べ始める。
「ち、ちょっと、喜屋武さ~ん。何が成る程なんなんですか?」
結城は気になり尋ねた。
《そりゃそうだ、ボクにも関わるんだから》
喜屋武は咳ばらいをし、
「結城クン、俺はコーヒーが飲みたいな。キャサリン捜査官は氷抜きのアイスミルクを」
結城はスクッと立ち上がり、
「“ヒトの話を聞く時には何かしらの情報を。それが無ければ、報酬を”でしたよね」
《喜屋武イズムの極みだ。仕方ない・・・》
「ホットで良かったですね」
「悪いねー、いつも」
喜屋武は屈託なく笑う。
氷抜きアイスミルクをキャシーの前に、ホットコーヒーを喜屋武と結城自身の前に置き、
「さあ用意しましたよ。教えてくれませんか?喜屋武さん」
喜屋武は、コーヒーを一口啜り、
「いいかい、結城クン。もしかすると、キミは凄い才能を持っているかも知れない」
《は?何なんだ?》
「才能ですか?ははは・・・・」
喜屋武は真剣な眼差しで、
「笑い事ではない。キャサリン捜査官が言うのにはだね、『少なくとも弁天はキミに“心”を開きかけており、キミが聞いたのは弁天の“声”』らしい」
結城は驚きつつも、疑問を口にする。
「アレって弁天の声なんですか・・・、じゃあノイズは?」
「ノイズについてはだね、『恐らく弁天との“同調率”がまだ高くないから、起こってる可能性が高い』そうだ」
「その“同調率”って?何なんですか?」
結城は身を乗り出す。
「まぁ、落ち着きたまえ。“同調率”ってのは、どれだけ猫と心を通わせ一体化してるかの数値らしい。『その数値が一般人よりは高いと猫の声が聞け、場合に依っては乗っかってくる猫の重さも感じなくなる』んだと」
「重さもですか?」
喜屋武は口を尖らせ、自身の頭を指差し、
「んー、少し理解りにくかったかな。つまり、そうだな・・・。例えると、頭、頭蓋だ」
「頭ですか?」
「そう、頭だ。結城クン、キミは自分の頭の重さを感じた事はあるかね?」




