第21話 異世界部
とある理由で休止していましたが、また再開します。 唐突で誠に申し訳ない。
「・・・部長は中村、副部長は神木に決定」
「「なんでだぁぁぁぁぁぁ!!!」」
どうして僕らがこのような仕打ちを受けているのか。
話は、数分前に遡る。
「・・・部長と副部長を決める」
「...」
うん、まぁ確かに、部活動をするにあたって部長の存在は必須だけど...。
「それって今決めないといけないの?」
「・・・今日にでも申請したい」
「なんで?」
「・・・部活動に勧誘された時に断る口実が早く欲しい」
葉加瀬の嫌そうな声が脳内に響いた。 意外と人見知りなのかな...?
「...部長を決めるのはいいけどよ、どうやって決めんだよ? 部長なんて面倒臭そうなもん進んでやるやつなんてこのクラスにはいないと思うぜ?」
「・・・立候補制じゃなくて推薦制。 それと、最初に異世界に行った先生を除く四人の中から選んで貰おうと思う」
「「異議あり!!」」
嫌だ! そんな面倒くさい仕事を押し付けられてたまるか!!
「裁判長! その四人の中から決める必要性が感じられません!!!」
「・・・ということで推薦したい人がいたら手をあげて」
「「話を聞けよ!!!!」」
そんなこんなで現在に至る。
「もう一回、もう一回だ! 俺は再選を求めるぞ!!」
「上に同じだこの野郎! 僕は絶対にやらないからな!!」
「・・・我儘な奴らだ」
「おいおい、諦めろよお前ら。 もう決まったことだぞ」
クラスメイトから憐みの視線が向けられる。くっ! 何という屈辱...!
「それにしたって、推薦の理由が『なんかおもしろそうだから』とか、『ロリコンは一生苦しむべき』とか、あんまりだろうが!!」
「僕なんて『なんか顔がむかつくから』だよ!! ただの悪口じゃんか!!」
「・・・ということで先生、申請で頼みます」
「分かりました。 ただ異世界部だとちょっとまずいので適当に名前変えておきますね」
「「聞けよ!」」
この人たち、僕に対する扱いが酷くない? 中村はともかく、僕は何もしてないと思うんだけどな...。
悶々としていると、鷲尾君が衝撃的な言葉を口にした。
「だがお前ら、部長はモテると聞いたことがあるぞ」
「「やります」」
「手のひらくるっくるだな」
「こいつらここが男子校だって分かってんのかな」
僕にもついにモテ期か...。 今ナンパしたら成功するんじゃないか? というか逆ナンされるまであるな。
「・・・じゃあ、そういうことで。 解散」
「ま、待った葉加瀬。 僕達、また異世界に戻らなきゃいけないんだけど...」
「・・・銃なら教卓の上。 後は好きにしろ」
あ、本当だ、教卓の上に銃が...って絵面大丈夫かこれ。 誰かに見られたら通報待ったなしじゃん...。
「葉加瀬、もうちょっと慎重に物事を....ってあれ?」
「通信が切れたな。 きっと忙しいんだろ」
「後は好きにしろ...って勝手に行けってことだよな。 どうする?」
まだ夜まで時間はある。 今から行ったとしてもきっと時間を持て余すだけだろう。
「ひとまず解散だね。 各々準備をして、また夜に集まろう」
「場所はここでいいんだよな? てか夜って教室開いてんのか?」
「鍵を掛けなければいいだろう。 校門も飛び越えて来ればいい」
不法侵入ってことか。 お安い御用だね。
「はぁ...。 仕方ありません。 校門は私が開けておきましょう」
「流石、話が早いっすね」
「それより、銃はどうするんですか? 流石に教卓の上に置きっぱなしにするのは危ないですよ」
「あ、そういやそうだな...」
うーん、やっぱり誰かが持ち帰るしかないんだろうけど...。 物騒だなぁ。
まぁ、かと言って他に方法もないし、ここは中村に異世界部の部長として持ち帰ってもらうのが1番いいだろう。
「おい、何故そこで俺を見る」
「やっぱこういうことは部長に任せた方がいいよなぁって思ってさ」
「関係ないだろ!? というかこの銃を家に置いとくとお袋あたりが勝手に触るからダメだ!」
...言われてみれば確かにそうだ。 それに、僕は中村に恨みはあれど、中村の家族に恨みはないしなぁ...。
「相変わらずムカつく顔だな...。 ...そうだ、お前が持って帰ればいいじゃないか。 お前も副部長だし、部長と似たようなもんだろ」
「いや、それは無理。 ただでさえ迷惑かけてるのにこれ以上迷惑かける訳にはいかない」
「ふーん...? ...だがまぁ、家族がいるのはどこも一緒か...」
中村は訝しげに僕を見つめたが、それ以上追求してくることは無かった。
「あー、じゃあ、間を取って赤池君でいいんじゃ...」
「吊るすのを止めてくれたら少しは考えてやるぞ」
「じゃあ無理だ。 赤池には例の罰として夜までここで吊るされてて貰う必要があるからな」
「重くないか!? 俺は彼女とデートしてただけだ!!」
「やっぱ死刑でいいか」
「「「「ラジャ」」」」
「うーん、死刑にされちゃうんなら赤池君が持ち帰るのは無理か...」
赤池君が死刑になるのは少しかわいそうだけど、彼も相当の罪を犯してるから擁護もできないしなぁ...。
「つまり、みんな家族が居て危険だから持ち帰れないってことでしょ?」
名波君がふとそんなことを言った。
「じゃあ僕に任せてよ。 一人暮らしだし問題ないよ」
「へぇ、名波君一人暮らしなんだ」
羨ましいな、と思った。 一人暮らしであれば何をしても文句を言われないに違いないから。
「そういうことなら...任せたよ、名波君」
「任された」
そうして、名波君に例の銃を手渡したところで各々解散となった。 ちなみに赤池君は教室で吊るされたままだ。
「さてと、どうにかして外で一泊することを了承させないとな...」
「あー、それ割と問題だよな。 俺は最悪家出に近い形になるかもしれない」
校門を出たところで、僕の独り言を聞きつけたであろう鷲尾君が近付いてきた。
「前一緒に帰った時も思ったけど、鷲尾君の家もここら辺なの?」
「いや、全然。 電車使わないと帰るまでに日が暮れるくらいには遠いぞ」
神木の家は近くていいなぁと、鷲尾君は小さくため息を吐いた。
「ん、まぁね。 朝早く起きる必要がないのは非常に助かってるよ」
「羨ましいことこの上ないな.....で、話は変わるんだが...」
鷲尾君は小声で、
「泊まりの際って何持ってけばいいんだろうか」
「あ、それ僕も困ってた」
簡単に『今日は泊まり込みよ』とか言ってた因幡だったけど、持ち物や事前にする準備については何も説明してくれなかった。 食事や風呂はどうするのか、もし途中で襲撃があったら、などと疑問は尽きない。
「...ただでさえ女性の家で夜を明かすって事実に驚愕しているのに、これ以上考え事をしていたら頭がはち切れそうだ」
「緊張してるの?」
「あぁ、割と吐きそうだ」
「予想の10倍くらい緊張してた!」
とはいえここで吐かれても困る。 僕達は、少し休憩しようと近くのコンビニに入店した。
「取り敢えず何か飲み物でも買ったら? 少しは気分が落ち着くんじゃないかな?」
「では俺はこの『唐揚げちゃん』とやらを買おう」
「話聞いてた?」
それぞれ会計を済ませて、イートインスペースに座る。
「悪いな、気ィ使わせて」
鷲尾君が唐揚げを口に放り込むのを横目に、僕も缶コーヒーのプルタブに手をかける。
「いや別にいいんだけど、揚げ物ってまた気持ち悪くなりそうなものを食べるなぁ...」
「なに、心配するな。 俺は神だ」
「その設定、『あっち』ではともかく『こっち』ではやめよう? 鷲尾君と話してる僕が変な奴だと思われたらどうしてくれるんだ」
「ハッ、今更だろ」
「なんてことを言うんだ!」
全くもってどいつもこいつもお話にならない。 僕が変人だったら中村はどうなるんだ。
「それ以前にあのクラスの中だったら相対的に僕はマシな人間の筈で、というかそうでなくても僕はどこにでもいる一般ピープル」
「そんなことより、結局何を持っていけばいいんだ?」
「ほんとに君達は僕の話を聞かないなぁ!」
まだ持ち物のこと気にしてるよこいつ! 修学旅行と同じでいいだろそんなもん!
「なるほど、修学旅行か。 確かにその時の持ち物で行けば間違いはないだろう」
「だからって律儀に全部持ってこないでよ? 因幡達にドン引きされる未来しか見えないから」
ただの一泊にめちゃくちゃ大荷物を持ってくとか、どんだけ気合い入ってんだよって感じだ。
「だが、トランプはいるだろう?」
「何しに行くつもりなのお前?」
どうも鷲尾君といると調子が狂う。 思わず彼から視線を外して携帯に目をやると、時刻は既に夕方に差し掛かろうとしていた。
「僕はそろそろ帰るよ」
「え? まだ色々と疑問点が...」
女性と同じ屋根の下、女性と同じ屋根の下、とうわ言のように呟く鷲尾君の姿は完全に変態のそれだった。
「じゃ、僕は帰るね。 また後で」
立ち上がり、空き缶をコンビニ備え付けのゴミ箱に放り込む。 依然として神妙な顔で悩む鷲尾君を横目に、僕はコンビニを出た。
更新は続けますが、1ヶ月に1回程度になってしまうかもしれません。




