騎士団長はまだ十歳 ―勇者を守る大人たち―
兵舎建物の応接間――、巨大な円卓のテーブルがあり、その周囲に椅子が並べられている。
観覧式を終え、諸王国の幹部たちが集まり、カリナたちが応接する。
全員が席に着いたのを確認してカリナは声を発した。
「皆様、この度はご来訪いただき誠にありがとうございました」
カリナの言葉にエーテルノヴァのシルヴィアもアルカナヴァンガードを高く評価する。
「結成から約4ヶ月、当初から志と意欲の高い優秀な人材が集まっていると見ていましたが、その見方は決して間違っていなかったようです」
そして彼らとの会話をまとめるように勇壮なる騎士であるセリアスが言葉を続けた。
「まずは当初の目的は無事に達成できていると考えて良いだろう」
それに対してグレインリーフのレイモンドが言った。
「そうだな――、合格点は付けてもいいだろう。だが、貴族連中のお偉方の中には、勇者カリナの肝入の軍隊ということもあり、何かにつけて食い込もうとしているという話を聞くぜ?」
レイモンドはそれまでの飄々とした人柄とは裏腹に鋭い視線を投げかけた。
それに対してカリナは答えた。
「おっしゃる通りです、すでに1人、ある貴族の紹介で入った女性の財務担当が不正な資金操作をしていることが分かりました。その件については先月、軍警察と軍への査察を担当している紋章局に告発をいたしました」
するとそこにヴァルハイトのアルトゥール卿が言葉を添える。
「それについては7王国の情報共有書簡にもしたためられて居たな。事件の発生から解決までの時間。迅速かつ隙のない行動だ。やはりカリナ君を中心とするこの4人の幹部級が非常に優秀だということだ」
アルトゥールの言葉にカリナたちは聞き入っていた。レイモンドはなおも語る。
「おそらくはそいつのケースみたいに、貴族やお大臣の推薦で、アルカナヴァンガードに自分の息のかかった人間を送り込もうとするやつがこれからどんどん増えるはずだ。こればっかりは嬢ちゃん達の自主努力ではどうにもならん」
レイモンドはそう語ったところで、他の国の人物たちに鋭い視線を投げかけた。
「だからこそだ、この魔法剣士騎士団への人材推薦は七王国軍部が検証するべきだろう」
レイモンドは軍師だ。普段から情報を集め、知識を研鑽し戦場の状況を冷静に判断する。それができる人物として切れ者として知られていた。その素顔が、遺憾なく発揮されていた。これに関してはセリアスは同意する。
「あなたのおっしゃる通りだ。レイモンド卿、カリナ嬢との連携を強化し、難事には手を差し伸べよう」
「あぁ、これからもこういう事案は起きるだろう。嬢ちゃん達が困らないためにもよろしく頼むぜ」
「肝に銘じる。貴族階級の件は、上層部にも伝えてすぐに対策を練ろう」
カリナはレイモンドたちにそっと頭を下げた。
「ご配慮いただき誠に感謝いたします」
「ああ、君たちの頑張りを、外部の人間のくだらぬ欲望でねじ曲げてしまっては申し訳が立たないからな」
そして老獪なオーシアがまとめるように言った。
「それぞれの国に帰った時に外部からの魔法剣士騎士団への介入への対策を早急に行うということでよろしいか?」
「異議なし」
「同じく異議なし」
こうして、カリナと7王国の諸将との絆は深まった。すると諸将の中でも高齢のアクアリスのオーシア卿が思いを口にした。
「カリナはまだ10歳だ、これからまだ伸びる。すべてを任せるのは酷ってもんだ」
この場の誰もが頷いたのである。そしてエーテルノヴァのシルヴィアが笑顔でカリナに語りかけた。
「アルカナヴァンガードはあなたの下で順調に発展しているわ。これからもさらに上を目指して頑張ってちょうだい」
お褒めの言葉が出たことでカリナも緊張が解けてほっとした表情になる。
「恐縮です、これからも諦めることなく精進していこうと思います」
カリナの言葉に全員が頷いたのだった。そこにレイモンドがカリナに問いかけた。
「時に今朝は寝坊したって言うけど本当か?」
「え? ど、どうしてご存知なのですか?」
「やっぱり本当だったのか」
「はえ?」
いわゆるカマをかけたというやつである。カリナは見事な誘導尋問に引っかかり、顔を赤らめる。レイモンドは笑顔を浮かべながら続けた。
「ここの兵士たちの中には、元はうちの軍属だったやつも少しいる。ここに来てからそいつらと少し話ししてたんだが、俺たちが来る前に、ソフィアさん達が慌ててバタバタと準備をしていたという話を聞いたんでもしやと思ってな」
レイモンドは冷静にカリナを見つめる。
「夜ふかし――、ルミナリア王家の血脈の公爵家令嬢が拐かされたって聞いたぜ?」
その一言にセリアスが驚きの表情を浮かべる。
「レイモンド卿、なぜそれをご存知か?!」
事件が起きたのは昨夜の深夜――、公式書簡にも出ていない。セリアス以外の彼らも驚きをにじませていた。レイモンドはにやりと笑うのみだ。
だが、カリナは整然と回答する。
「はい、その通りです。昨日午後から出動し、深夜まで対応いたしました」
「魔族も関与していたんだってな」
「はい、私を含めた幹部4人でこれを討ち果たしました」
レイモンドがカリナを労いながら称賛する。
「見事だカリナ――、そうやって戦績を積み重ねれば、お前さんがたとえ10歳の子供でも、誰も舐めてかかることはなくなるだろう」
「はい!」
カリナはその言葉にはっきりと頷いたのだった。
( 'ω'o[ 読者さまへ ]o
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