1話
初投稿です!暖かい目で見てください!
目の前に映る光景は、きっと夢だから。
そう言い聞かせながら、私は俯く。
嗚呼、私はなんて最低なんだろうか。
「おはよ!」
月曜日の学校ほど憂鬱なものは無くて、私は俯いていた。
そうしていたら、後ろから聞き慣れた声が聞こえたので顔を上げて振り向いた。
「おはよう」
「土日終わるのはやすぎ。時空ちょちょいって誰か歪めてるんじゃないの?」
「だとしたら良い迷惑だね」
他愛もない会話は私の日常で、あって当たり前なものだ。
「華恋、そういえば課題は終わった?」
「え!課題あったっけ!?」
「あったよ〜もしかしてまた忘れた?」
ニヤニヤと私は親友の華恋に問い詰める。彼女とは小学校から今の高校1年まで、ずっと仲が良い。
「うん…。ねぇー!茜助けてよー!」
「自分でやりな」
彼女は私にとって日常の一部で、今や華恋のいない学校生活なんて想像できない。
「ちぇー」
少し拗ねた様な顔をしては、どんどん間近に迫る校門へ二人で向かう。
教室へついて、各々席へつく。今の席は一つ斜めの位置にお互い居るので、話しやすくて良い席だ。
「もー嫌なんだけど〜…怒られるし」
それをみて私はふふっと笑って
「仕方ないじゃん。ちゃんとノートにメモしなよ」
「だって眠くてそんな暇ないし」
「ちゃんと寝ろ」
そう話していると、朝礼の始まりを告げるチャイムが鳴る。
そのまま1限が始まる。課題提出の時間になると華恋が明らかに焦っているのが分かって、少し面白い。
「ねぇ!茜どうしたらいいと思う?」
華恋が小声で話しかけてくる。
「素直に言ったらいいと思いまーす」
「そう言う事じゃなくて〜!」
「えへへへ」
結局、次はないようにと怒られていた。
2限、3限、4限。どんどん日常は進んでいく。お昼休みになれば、2人で机をくっつけて弁当を食べる。
「華恋、今日は早弁してないんだ」
「そんな高頻度でしてるかなぁ〜…私」
「週1くらいの頻度ではしてるけど」
「えー?そんな?」
「うん」
すっぱい梅干しを口に入れて、もぐもぐと咀嚼する。
「そういえばさ」
「うん?」
「昨日動画みてたら面白いの流れてきて〜」
少し声色が明るくなっているのが分かる。
「なんかね、人は亡くなったら天国に行くとか、生まれ変わるとか言われてるけど1回別の世界に同じ人間として生まれ変わって、そこでまた前世の大切な人と巡り会えたら今の世界に戻ってこれるみたいな話でさ」
「へぇ〜…面白いね。1回別の世界を挟むんだ」
「でしょ?」
少し満足げに華恋は言う。
「言ってることはなんとなくは分かるんだけど…同じ人間として別の世界に生まれ変わるってさ」
「うん」
「そんでまた前世での大切な人、に出会わなきゃいけないんだよね?」
「そうだね」
「それって片方が生きてるうちは無理だよね?」
「あー…」
「その人も死なないとそっちの世界に行けないわけじゃん」
うーん、と私が考えていると華恋が口を開いた。
「そうだね。なんか、一応大切な人から相手を見ることはあってもちゃんとその世界で実体を持って、そこに同じ人として"生まれ変わって"会わないとカウントされないらしいんだ」
「へぇ〜…なんか複雑だね」
「その大切な人も亡くなってその世界に生まれ変わってからそこで巡り会うから、一度別れちゃったら今世はもう会えないんだな〜って」
「…なんか、悲しいね」
「そうだねー」
「まぁ、あくまで都市伝説みたいなものでしょ?」
「あはは、まー、そゆこと」
こういう幻想の話をするのも嫌いじゃない。想像力が掻き立てられて楽しい。
そうしていればいつの間にかお昼休みは終わる。
5限、6限と続き、ようやく終礼が終わる。
「疲れた〜」
華恋が後ろから背中を叩いてきた。
「びっくりした」
「課題提出間に合わなかったし」
「いつまで引っ張ってんの」
「ずっと」
「もー、帰るよ」
何日も何日も繰り返している日常なのに、毎日楽しいと思える。
もし私が死んだら、その大切な人は華恋なのだろうか。
「じゃーまた明日!」
笑顔で手を振る華恋に手を振り返し、自分の家の方向へ向かう。
明日も、明後日も明々後日も、ずっとこの日常が続くんだろうか。
そう思ってた。
「え」
華恋が事故に遭ったと連絡が入った。
帰り、居眠り運転トラックに轢かれたらしい。
「華恋」
私はすぐに病院へ駆けつけたが、遅かった。
そこからの日常はよく覚えていない。
華恋の遺族からの連絡が溜まり、葬式。
『今世はもう会えないんだな〜って』
「違う」
あの日の会話が頭の中でリピートされる。
目の前に映る光景は、きっと夢だから。
そう言い聞かせながら、私は俯く。
私はなんて最低なんだろうか。
親友の死を受け入れられずに夢だとかいって逃げるなんて。
『おはよ!』
ああやって、俯いた顔を上げさせてくれる人はもういない。
呪いの様に、お経が繰り返される。
早く終わって。
心底そう思っていた。
きっとこれは、長い夢。長い夢であって。そう思っていた。
葬式が終わって、私はベッドの上で天井を見つめていた。
…いや、眺めていたに近かった。
朝。目を覚ます。
いつの間にか眠っていたようだ。
「…違う」
カーテンの隙間から見える景色が今までとは違う。
同じ場所。何年も過ごした家、部屋。
でも、空の色や植物の色。
見慣れなく、異様な光景だった。
よく見ようと、カーテンを開けようとする。
「え?」
手はカーテンを通り抜ける。
「まって、なにこれ」
何度試そうにも、カーテンに手が触れることはない。
すっかり目が覚める。ベッドから降りて、部屋から出ようとするが、ドアが閉まっている。今はドアノブに触れて開く事が出来ない。
「壁、通りぬけれるかな」
腕をドアに突っ込む。すると予想通り、通り抜けた。
そのまま急いで外へ出る。
「…なにこれ」
太陽と月が同時に昇っている。空の色は、明け方の少し明るい紺色といった具合だ。
植物の葉は緑の他に、赤、黄、水色、オレンジ、黒…無色まで。
人々はみんな当たり前のように皆それぞれの生活をしている。
『別の世界に同じ人間として生まれ変わって、そこでまた前世の大切な人と巡り会えたら今の世界に戻ってこれる』
華恋の言葉が頭に響き渡る。
「…だとしたらなんで?」
自分も死んだのかと、少し焦る。でも、そんなことはないはずだ。
「ただの夢…なのかな。よくできてるけど」
そう考えていると、遠くに見慣れたような、懐かしいような、そんなシルエットが見える。
「華恋!」
ひたすら走る。
どんどん近づく。でも華恋はこちらには全く気付いていない。どれだけ大声で名前を叫んでも、ちっとも聞こえていないようだ。
「まって!華恋──」
部屋の天井が目に映る。
「…あれ?」
手を握る。カーテンを開けようとすれば、それは何の変哲もなく開く。
「夢…か」
少し残念だ。また会えたと少し思ってしまった。
毛布を畳もうと枕をどかすと、1枚の紙が出てくる。
こんなのあったっけな、と不審に思いながらもその紙を開いてみると
“あなたは、出会うべき人。こちらの世界への訪問を許された人です”
そう書かれていた。
「え?」
困惑するしかない。ふと、華恋の話を思い出す。
『一応大切な人から相手を見ることはあっても───』
「…そういうことなの?」
手紙をギュッと握る。
まだ夢の中なのだろうか。頭が追いつかない。
『今世はもう会えないんだな〜って』
「もう、華恋には会えないんだな」
ズキ、と心が痛んだ音がする。
それが私の不思議な物語の序章だった。
初投稿です!暖かい目でみてください!




