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プリミティブ・プライメイツ ~暴君転生~  作者: 翠碧緑
2章:思春・王都動乱編

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112話 『人間』


 フィンナの計画した“大掃除”の対象にならなかった貴族たちは、小さな会議室で今後の動きを相談していた。


 彼らの行いによって、王国は圧倒的な力に屈した敗北者たちの国だと、歴史には残るのだろう。


 しかし、()()()()()()()()()()()()()()


 所詮は人外の力を借りて得た自由なのだから、再び人外に支配されるのが必然だ。


 その場にいるのは“聞こえる者(ウィスパード)”と呼ばれる権力者たち──いや、能力者たちだった。


 この国が貴族という位を作ったのは、能力差が原因だ。


 人間の独立を助けた“三人の王”の声を聞くことができた者たちが、単純に中心にいただけのこと。


 なぜ、世襲制なのか。なぜ、血の繋がりを重要視するのか。


 それには決まり切った理由が存在する。


 彼らはその理由を正しく理解していた。


「グラン公爵……!」


「いかがなされた、ジーク侯爵」


 大きな音とともに、ジーク・ブレイブハート侯爵が入室してきた。

 その表情には焦りがあった。


「……学園が襲撃に遭っているようだ。おそらく暴走した反王軍だ」


「──!」


 それはまさかの事態だった。

 なぜなら()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。


「こんな大事な時に申し訳ない! 私は加勢に向かう!」


 あの学園にはジークの娘がいる。

 そして、お飾りの王女も。


「兵をつけよう。頼むぞ、ジーク侯爵殿」


「かたじけない!」


 颯爽とジークは去っていった。


 グラン・ルクレヴィス公爵とジーク・ブレイブハート侯爵は派閥違いに属しているはずだった。


 この会議室にいる面々も敵対派閥同士が同席している。


 彼らは派閥の違いなど気にしていない。


 親魔も反魔も、人間を判別するために作っただけの派閥だ。

 その勢力図を作り上げた彼らがそんなものにこだわるわけがない。


 いちいち自分の所属する場所を気にするなどという無駄な時間を彼らは作らない。


 それに、もし彼らが自分たちの所属する場所をあえて言うのならば──『()()()()()』だった。


「さて……あとは、魔王()()の動き次第か」


「そうですな」


 酒の臭いが強くなった。

 彼らは半ばやけになっている。


 自らの力で成し遂げられるものなどない。

 人間の力で変えられるものなどない。


 彼らが魔王と結託し始めたのはいつからだろうか。


 同盟を結んでからだろうか。

 ──いや、違う。


 オリジェンヌの襲撃で、特使であるミーナがやって来たときだろうか。

 ──いや、違う。


 “魔王と休戦条約を結んだときから”──である。


 あのとき、グラン・ヴォル・ルクレヴィスは魔王から()()()()()()()()


 全ての原因を。

 全ての動機を。

 全ての理由を。


「……はあ、我らにできるのはこうして無駄に酒を飲むことだけだな」


「……困ったことに、否定する言葉が出てきません」


 諦観を抱き、投げ出す者ばかりだった。


 抵抗などしてどうなるというのか。どうしようもなく無意味である。


 だから、彼らは魔王を崇めている。好きでいようとしている。


 彼女は自分を好いているモノを好きになる。


 彼らが魔王を崇めていれば、彼らは生きることが許されるのだ。


 それは彼女に飼われるということ。──“ああ、それでいい”。


 それが自らの王を裏切ってまで導き出した彼らの解答だ。

 彼らの中で必死に、無様に、足掻き続けているのはもう一人の公爵くらいだろう。


 なぜそこまでして、人間を裏切るのか。

 彼らにそんな大層な理由はない。


 グランの場合は、未だに結婚しない馬鹿な息子のためだった。

 まだ悲劇の王子の残滓を追いかける哀れな息子の幸せを見るまでは死ねなかった。


 その息子はまだ騎士として現役でいる。いい加減、ちゃんと政務を始めて欲しかった。

 今も王都の周辺を警備しているのだろう。


 ふと、そんな感傷に浸ったグランに訪れたのは、絶望の足音だった。


「……なんだ!?」


 会議室が突然揺れた。

 部屋にこもっていた彼らには知る術はないが、その振動は王都に巨人が出現したことによるものだった。


「また……反王軍か……」


「! ……フィンナ公爵の術式が起動したか」


 フィンナの抵抗を感じ取り、何かが攻めてきたことを彼らは把握した。


「よし。私が行こう」


「そんな、公爵自ら出ずとも……」


「ここにいても暇なだけなのでな。それに忘れておるのかもしれぬが、私も大戦争の生き残りなのだぞ?」


 宮殿の振動は収まらない。

 いよいよ援軍が必要だろう。


 グランが席から立ち上がった瞬間──会議室の扉が開いた。


 視線が扉に集中する。


「あら、こんなにたくさんいらっしゃったのですね」


 美しい女性の声を発する黄金の鎧が、その扉の向こうにいた。


 会議室の外には凄惨な光景が広がっていた。

 真っ赤な壁。真っ赤な床。真っ赤な窓。そして、真っ赤に染まった武器。


「…………!!」


 その鎧のスカートからいくつもの触手が伸びた。


「ぐあっ!?」

「かはっ……」


 戦いの心得の無い者たちが次々と絶命していった。


 グランはなんとか剣を抜いて、払い除けたが、あの触手は破壊できなかった。


 普通の硬さではない。

 その色を見れば、きっと魔石でできていることはわかる。


 それを操作し、鎧として、武器として使いこなす目の前の敵の技量は相当なものだ。


 やがて、“選別”が終わった。


 会議室で生きている者は三人ほど。その中で無事なのはグラン一人だけだった。


 触手をスカートに回収した鎧がグランへ視線を向けた。


 そして、左腕に装備された鉄球が地面に落ちた。じゃらじゃらと黄金の鎖を垂らしながら。


 その鉄球には人の全ての液体が付着していた。鼻を塞ぎたくなるほどの悪臭を放っている。


「くくく、お強いのですね。……ああ、貴方のことを思い出しました。申し訳ありません。私ってどうしても人の顔を覚えておくのが苦手でして」


「……知り合いだったのかな?」


 グランの問い掛けに、鎧は笑いながら答えた。


「ええ。お久しぶりですね、グラン・ヴォル・ルクレヴィス公爵。()()()()()()()()()()()です」


「────な」


 大きな球体がグランに向かってくる。


 その防御魔法がかけられた黄金の鉄球は魔法によって迎撃することはおそらく不可能だ。

 だから、避けるしかない。


 しかし、その一瞬の驚きが明暗を分けた。


 グランはそれを防ごうとして右腕を骨折したのだ。


 鉄球は彼の剣を吹き飛ばし、後ろの壁に衝突した。


「くくくくく」


「……なるほど。反王軍の指揮官『グリムプレート』。それが貴方でしたか。

 納得しましたぞ。ならば、王国を恨んで当然ですな……」


 グランは膝をついた。当然の因果だと思った。


 偽者の王女を立て、彼女の愛する夫の名誉を穢しているのだ。

 しかも、グランは王子の親友だった息子を持っている。


 息子に直接的な罪はない。だが、残っていれば王子は生きていたかもしれない。


 たとえ逆恨みだとしても、彼女がルクレヴィスを殺すのは当然だ。


「当然? まあ、そうですよね」


 しかし、彼女の態度は軽いものだった。


 復讐を動機にする女の態度ではなかった。


 全身を黄金で包む女が、右腕に持つ大剣を振り上げる。

 それは動けなくなったグランへまっすぐ振り下ろされた。


 肉が潰れる音が響いた。

 グランはなにもかも諦めていた。だから、その最期もあっけないものだった。


 それに幾分かの落胆を感じながら、女は次の標的を探した。


 メインディッシュは最上階に住まう悪女。


 そこに辿り着くまでは残った貴族たちを遊び殺していく。


 だって──()()()()()()()()()


 “夫を謀殺され、命を狙われた女が、復讐を誓う”。

 “その過程で、血に酔い、命に触れ、狂っていった”。

 “そして、その女は復讐という名の惨劇を繰り返す”。


 すごくわかりやすい理由だ。皆、納得する物語だ。


 だからこそ、彼女の殺人は人々に許容される。


 もちろん、そんなわけはない。詭弁である。

 それはただの彼女の気分だ。


 つまりは『ハディアの復讐物語』を演じているのである。


 自分を主役にして、敵役を設定して、遊んでいる。


 ただの“復讐ごっこ”。だから、最後の目標をフィンナに設定しているだけだ。


 “ああ、本当に理由をくれてありがとう”。


 女は兜の中で笑い続けた。





 サフィレーヌは動くことができなかった。


「何故、殺す?」

「楽しいからです」


「何故、壊す?」

「楽しいからです」


「──何故、笑う?」

「──楽しいからですわ!」


 目の前で繰り広げられる母たちの戦い。


 それをサフィレーヌは観戦しているだけだった。


 ほとんど意味がないことはわかっているが、できる限りの防御魔法を自分の周囲に作っていた。

 宮殿に使われていたフィンナのものを見様見真似で展開している。


 しかし、ないよりはあったほうがいいだろう。


 なぜならば、あの理性的に狂っている女が()()()()()()()()()()()()()()()()()


 戦いの起点は全てサフィレーヌとなっていた。


 故に変に動いて母の行動を阻害するわけにもいかなかった。


 逃亡しようにも相手は触手を使って害虫のように壁や天井を移動している。


 それに、出口は“家族たちの墓標”で塞がれていた。


 あのハディアと名乗った女は、出口を塞ぐためにフィンナの家族を殺した。

 いやもしかすると逆なのかもしれない。


 家族を殺そうと思ったついでに出口を塞いだ。


 どちらにしろ最悪な女には違いなかった。

 あれがサフィレーヌの義理の母だというのだからさらに最悪だ。


 二人の母の激闘は続いている。


(お母さま……)


 サフィレーヌは自分にできることだけに集中するしかなかった。



 フィンナがサフィレーヌを守りたいことを知っているハディアは積極的にサフィレーヌに手を出していた。


 その度にフィンナが伸びる触手や、鉄球を弾き返していた。魔力で強化した肉体の力だった。


 フィンナは身に纏う最高級のドレスをボロボロにしながら、黄金の鎧を殴りつけていた。

 淑女たるべき女性の戦い方とは呼べない野蛮な動きだが、どこかに優雅さが残っていた。


「くくく、本当に素晴らしいです!」


「…………」

 

 フィンナに蹴り飛ばされながら、ハディアは笑う。

 どれだけ殴られようと、蹴られようと、その鎧は壊れない。


 フィンナが宮殿の魔力砲撃をハディアへ向ける。


 それは小型のものだが、連射性に優れていた。


 スカートから伸ばして展開している触手を壁や天井に突き刺し移動するハディア。

 その上下左右前方後方全てを囲うように魔法砲撃の魔法陣を展開する。


 それら全てから魔力砲撃が連射された。


「あらあら」


 閃光と轟音が繰り返される。


 それはたった一人に向けられる絨毯爆撃だった。


 宮殿の最上階の豪華な部屋はもう見る影もない。

 破壊の跡があちこちに残る寂しい場所になっていた。


 小型魔力砲撃の連射を受けても、ハディアの鎧にダメージは入らない。


 だが、その衝撃自体は伝わり、魔力の暴力による拘束をすることはできた。


 ハディアは左腕の盾を使って魔力砲撃を弾くが、全ての方向から来る攻撃は捌ききれていなかった。


「サフィレーヌ!」


 その隙に娘に対してフィンナは声をかける。視線はハディアに向けたままだ。


 それはこの場を去れという母の合図だ。

 すぐにその意図を察したサフィレーヌは移動を開始した。


 向かうのは墓標に塞がれた出口。

 隙間がないわけではない。時間をかければ出られるはずだ。


「くくく……」


 だが、ハディアはそれを見逃すような女ではない。


「…………!」


 そこで動いたのは巨人の方だった。

 修復された両腕の銃砲がこちらを狙っている。


 そして、その砲撃が放たれた。

 しかもその銃撃は連射能力を得ていた。


 フィンナはすぐさま宮殿の巨大防御魔法を起動し、その攻撃を防ぐ。


 部屋の中では魔力砲撃の連射音が響き、外では大地から作り上げられた弾丸の連射音が響き渡る。


「…………っ」


 さすがにフィンナも限界が近かった。 

 現在の敵の攻撃は一発の威力はそれほどでもなかった。連射性能を上げたせいだろう。


 しかし、一度に起動する魔法の数が多すぎた。


 脳処理が限界を迎えようとしていた。

 一般人に比べれば、フィンナの処理能力は優れている。


 何十人という人間がいてやっと起動できる大魔法を一人で起動できているのだから。


 たった一人で全てをやろうとするその強さが、弱点でもあった。


 ハディアを攻撃していた魔力砲撃の一部がその力を弱めてしまった。


 そしてそこをハディアは正確に見抜いた。

 左腕の鉄球を振り回し、的確に弱まった魔法陣を破壊していく。


 あの鉄球にはある程度の魔法を無効化するような魔法が仕込まれているようだった。


 その破壊の旋風により、ハディアを取り囲んでいた魔力砲の包囲に穴が空いた。


 それは一瞬の穴だった。


 ハディアはそこから脱出を図り、ついでに()()()()()()()()()()


「────」


 それが狙うのはもちろんフィンナの娘だ。


 フィンナは思考能力をほぼ消費していた。


 なにも論理的な判断はできない。それ以上魔法は増やせない。

 増やせば外の巨人の大きな弾丸がここに直撃する。ハディアへの拘束が緩んでしまう。


 ハディアはフィンナの同時処理能力を読み切っていた。


 無様に娘が死んでいく様を見せようとしていた。


 しかし、思考能力がない故に、フィンナの体は考えるよりも前にサフィレーヌに向かって駆け出していた。


「…………あ」


 自分に向かってくる大地の棘に気付いたサフィレーヌが見たのは、大量の汗をかきながらこちらに向かってくる母の姿。

 そして、情け容赦なく左腕の鉄球をこちらへ放ち、母娘二人を撲殺しようとする女の姿。


 このままではサフィレーヌもフィンナも死ぬ。


 棘で。鉄球で。巨人の砲撃で。


 ハディアへの攻撃をやめたとしても、フィンナの防御魔法は一手足りない。


 ならば、()()()()()()()()()()()


「…………!」


 ハディアの笑い声が一瞬だけ止んだ。


「まさか……サフィレーヌ……」


 やっと、掌握できた。


 起動したのはフィンナには遠く及ばない小さな防御魔法だった。

 しかし、宮殿との接続は問題なくできていた。


 棘と鉄球を弾くほどの強固な守り。


 母の背中から学んだサフィレーヌは会得した。


 この宮殿に満ちる母の魔力との同期を開始する。


「いくつかの負担はこれでどうにかなりますか? お母さま」


「……ああ。ああ、その通りだとも。維持だけお願いできるかな?」


「はい!」


 一つの脳だけでは限界だった処理が、二つに増えたことで処理能力に余裕が生まれた。


 サフィレーヌは母の展開していた術を引き継ぎ、フィンナはさらなる行動が可能になった。


 一瞬だけ母は娘の頭を撫で、敵に向かって飛んでいった。


「くくくくくく」


 未だに魔力砲撃に殴られ続け、動きを制限されながら無様に拘束されるハディアはその親子愛とも呼べるものを見て笑っていた。


 破壊のしがいがあるからだ。


 人間の限界を超えた速度で走ってきたフィンナが、人間の限界を超えた力で拳を繰り出した。


 それが直撃し、ハディアは吹き飛んだ。

 鎧自体は無事だが、中身はとても痛みを感じた。少しだけ息が詰まった。


「…………ッ」


 吹き飛んだ先でも、魔力砲撃が追撃してきた。

 器用な少女だ。もうすでに母の魔法を受け継いでいる。


 新たに作ることはまだできないようだったが、すでにフィンナが展開したものは使いこなしていた。


 左の盾で防ぎながらも、ハディアは壁に追い詰められた。

 伸ばした触手は綺麗に撃ち落とされ、何かに突き刺して移動することはできそうになかった。


 またフィンナが迫ってくる。


 自分も魔力砲撃に撃たれる危険を顧みていない。

 おそらく娘に対する絶対の信頼があるのだろう。


 音を超えた速度で放たれた蹴りをハディアは盾で防いだ。


 右腕の大剣でハディアを叩き潰そうとするが、魔力砲撃が右腕に狙いを集中してきて、まともな威力を出せなかった。

 だから、簡単にフィンナに受け止められてしまった。


「くくく……器用な娘さんですね」


「…………」


 素直な称賛だったのに、無視された。


 それでもハディアは笑った。


 形勢は変わった。

 追い詰められるだけだったフィンナは敵を知る余裕を得た。


 サフィレーヌはどんどん技術を得ていく。

 このままならば自らの魔法を宮殿の魔力によって行使できるようになるだろう。


 だが、全てはこのままうまく進めばの話だ。


 勝ち得たのかもしれない。

 なんとかできたのかもしれない。


 もたらされた結果は組まれたものから生まれた偶然によるものだった。


「…………? なんだ?」


 振り回される鉄球と触手を掴み、ハディアを投げ飛ばしながらフィンナは何かを感じた。


 それは“地鳴り”だった。


 巨人の歩みとは違う。もっと深くから響いてくるようなものだった。


「あらあら。もうこんなところまで」


「? 何を知って────」


 フィンナの声は続かなかった。


 大きな衝撃が足元に走る。


 それは魔法ではない。攻撃ですらない。


 ただ大地が揺れただけだ。

 その揺れが大きかっただけの話だ。


 ──起こったのは建物を崩壊させるほどの大地震だ。


 その範囲は王国──いや、人間領域全土だ。


 この日、全ての人間がその一瞬だけ争いをやめた。


「!?」


 立てぬほどの大きな揺れ。

 建造物すらもその構造を維持できなかった。


 崩れていく宮殿。

 もちろん全てが壊れるわけではない。


 しかし、戦いでボロボロになっていた彼女たちの周辺は崩壊した。


 さらにその大地震によって宮殿と彼女たちの接続が切れた。

 何かの魔法陣が壊れてしまったのだろう。


 そのせいで未だに宮殿に攻撃を続ける巨人の連射砲が防御魔法をすり抜け、サフィレーヌの近くに直撃した。


「あ……」


 宮殿が無慈悲な一撃によって破壊され、サフィレーヌはその崩落に巻き込まれ落下した。


 恐怖を煽る大地が揺れる音を聞きながら、浮遊感を得たサフィレーヌが見たのはこちらに駆け寄ってくる母の姿だった。


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