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 久しぶりの投稿です。異世界恋愛の溺愛に憧れて執筆をはじめました。あま〜い溺愛系が好きで、そんな話を書いてみたいと思っています。話を進めていくうちに戦いだったりスリリングな展開も入ってきますが、あくまでも恋愛メインです!良ければ最後までお付き合いいただけたらと思います。よろしくお願いします!


 貴族令嬢の結婚は、自分で相手を選ぶことなどほとんどない。たいていは親同士が決めることであり、恋愛感情によって結ばれるというのは、夢のまた夢である。結婚という儀式は家門が幸せになるための手段であって、女性はその道具に過ぎないのだ。

 自分の行く末を知っている未婚の淑女たちは、だからこそ、みな眉目秀麗な殿方に夢を抱く。そして誰が好きかと話し合っては、興奮したり共感したりして、目をハートにして儚い夢を見るのだ。例えば庭園に集まって、お気に入りのドレスを着飾って。すっかり冷めた紅茶を片手に、こんな風に。


「先日、噂の貴公子さまを街で見かけたんですが・・・もうっ、ほんっとうに素敵でしたわぁ〜」

「私もあのお方が好みですの!」

「あぁ、麗しの銀髪の貴公子さま♡」


 楽しそうに語らう彼女たちの向こう側では、丸みのある緑の葉が生い茂っていた。葉のふちには棘がある。少しフェードアウトすると、ローズピンクの薔薇が咲き誇っていることに気がつく。目が覚めるような鮮やかな花色は、このティーパーティーの主催者の性格を表すように、華やかで、可愛らしい。

 薔薇の庭園の持ち主は、ロイヤル子爵。私のお父様が治める街の、隣の街を治める貴族だ。お父様はこのロイヤル子爵を友人と呼ぶが、実は自分よりも身分の高い爵位を持つ領主のことを、こっそりとライバル視している。


 手で口元を隠し、ほわぁっと欠伸をした。

 私はロイヤル子爵の娘の招待を受け、今こうしてティーパーティーに参加しているのだけれど。実のところ、彼女たちのように殿方の話をして浮かれるのって、あんまり好みじゃないんですの。

 ロイヤル子爵の娘が私に向き直り、にこりと微笑んで口を開いた。


「カルヴァン男爵令嬢は、どんな殿方がお好きなんですの?」

「私は・・・特に誰が好きとかは、ないんですの」

「そうですか。あぁ、でもだから」


 彼女は手にしていた扇子で口元を隠すと、クスリと笑った。それを待っていたかのように、テーブルを囲む他の令嬢たちもクスクスと笑いはじめた。その理由が分かっているから、私は何も言い返せず、少し俯いて紅茶に口をつけることしかできなかった。

 ティーカップの中に目を落とすと、焦茶色の水面に自分の顔が映っていた。

 長い金髪をゆるく巻いた、悲しげな空色の瞳。今年二十歳になる私、リーネ・カルヴァンには、まだ婚約者がいない。

 たいていの令嬢は、十六歳で社交界にデビューし、次の年には婚約者が決まりはじめる。二十歳になる頃にはほとんどの令嬢は婚約しているのが通例なのだ。が、私には、まだいない。だからこうやって、年端もいかない女子たちに嘲笑されるってわけ。


 あぁ、もう。私を馬鹿にするために招待したのかしら? 腹が立ちますわ。


 けれど、今まで縁談を自分から避けていたのも事実。だって私の性格は強気で、結婚に向いていないのだから。こうして笑われるのは仕方のないことだと分かっているからこそ、あえて黙っているのだった。

 ロイヤル嬢が、私の隣に座る令嬢に声を掛けた。


「あなたはどの方が好みですの?」

「私も、もちろんあの殿方ですわ♡」

「きゃあ、やっぱり!」

 

 淑女たちが次々と黄色い悲鳴をあげ悶絶する、あの殿方。それはどの殿方だったっけ? 

 私はこの国のイケメンの面々を思い出してみることにした。

 令嬢が噂するってことは、もしかしたら王子様のことかもしれない。でもこの国の王子様はまだ十歳だから候補から外す。なら、シェニパー領を治めるレナード公のご子息? 歳の頃合いはちょうど良いけれど、あの一族は、みな黒髪のはずだわ。デビスクロー領の公爵家の子息たちは、みな結婚しているし茶色の髪だから、これも違う。


 一体、誰の噂をしているのかしら? 


 なんだか興味が湧いてきて、話に耳を傾けることにした。


「私もこの間、街で銀髪の貴公子さまを見かけたの。噂に違わない美形だったわぁ。でも冷血な方らしいのよね。みんなに平等に冷たく接するらしいのよ」

「王子様のようなルックスでクールだなんて、最高じゃない! 一度睨まれてみたいですわぁ」

「きゃあぁぁー! 私も冷たくされたい♡」


 きゃぴきゃぴと盛り上がる、うら若き貴婦人たちの会話に呆れながら、「冷たい」というワードで誰のことなのかピンときた。


 私が住むのはシャスティスという国。この国の中央には王都があるんだけど、その北に位置する、極寒の地ヘルベリー。常に雪が降る北の大地を治めるヘルベリー侯爵は、泣く子も黙る近衛騎士団を率いているので有名なんだけれど。その侯爵のひとり息子が、銀髪だと耳にした覚えがある。たしか、名前はーー


「あぁ、麗しのハロルド様!」

「一度でいいから、王子様のように美しいと謳われるお顔を拝んでみたいですわ!」

「彼となら、一晩でいいから同じベッドで夜を・・・」

「まぁ、はしたないですわよ!」


 あら、この方は婚約者がいるのに!

 でも、そうそう。イケメンといえば必ず名前が挙がる。それがヘルベリーの銀髪の貴公子、ハロルド・グレイなのだ。

 もう分かったと思うけど、今をときめく貴族たちの中でも、その風貌は王子様のように美しいと評判なのだ。まぁ、私には関係のない話なんだけどね。


 頬杖をついて、はしゃぐ令嬢たちの向こう側の薔薇に、再び目をやった。


 ぽとり。


 風もないのに、ローズピンクの薔薇が突然落ちてしまった。


 やだ。不吉ですわ。


 これから良くないことが起こりそうな気がした。と、門の方から召使いが走ってきた。彼はこちらへ来るなり「カルヴァン嬢はおられますか!?」と血相を変えて私を探し始めた。皆が一斉に私を振り返ったところで、召使いが青い顔のまま、一通のカードを差し出してきた。ゆっくりと受け取り、目を通した。そして読み終える頃には、血の気が引いていた。まるで頬を叩かれたような衝撃だった。


「父、危篤・・・ですって?」


 今朝まで元気に過ごしていたお父様の顔が脳裏をよぎった。周囲にいた令嬢たちが何事かを察し、何かを囁き始めた。瞬間、私は席を立ち門に向かって駆け出したのだった。


⭐︎今日のうちにあと四話投稿予定です。

 2話→10時10分

 3話→12時

 4話→15時10分

 5話→17時

拙い文章ですが最後までお付き合いいただけると嬉しいです! よろしくお願いします!!!

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