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第三十二話

 ゲームの中から出る。

 狭山は、はっきりとそう言った。


「それで狭山。それが三曲しかやらない事とどう繋がるんだ?」

「祐樹でもイメージ出来ないか?」

「なんとなくはわかるけど……」


 彼は、もう一枚紙をだす。太田のゲームの画面をプリントしたものだ。


「バンドでオープニングムービーってあるだろ?」

「登場前のバンドのロゴとか見せるアレ?」

「そう……アレを最初考えてみたんだけど、知らないバンドのロゴなんて見ても期待には繋がらないだろ?」

「ま、まぁ……」

「そこで、ゲーム画面でメンバーを紹介したら入り込み易くていいんじゃないかと思ったわけよ」


 狭山が言うには、エロゲーの出会いをそのまま僕たちと出会っていくストーリーに変えると言う。アテレコしてゲームの印象付けた所で、同じ格好でライブを始めるのだ。


「必要なのは、他のバンドとの違いを見せつける事だ。だから、太田の技術は真似できないだろうと思ったんだ」


 確かに、ゲームの動画画面からならインパクトを与える事が出来る。コレはアリかも知れない。


「いい……いいよ狭山!」

「うん、コレは真似できないよねぇ」


 高田さんもいいと思っているのか、そう言って深く頷いている。美波ちゃんは頷きながら僕の方をチラリとみているのが気になった。


 早速僕らは当日の流れを纏める作業にはいる。太田に何を頼まなくては行けないのか、またアテレコする日程はどうするかなど、それぞれのスケジュールに合わせて纏めると、狭山がそれを持って太田と話し合う事になった。


 ただ、僕は良いと思っていたもののヒロさんに全く話さないまま進んでいる事が少し気がかりに思えていた。



♦︎



 三曲にする。そう言ってくれた事で少しだけ肩の荷が降りている。今まで以上に新曲に打ち込めるし、より良い物になると感じていた。


 だが、ヒロさんは違った。


「三曲で出る気なのか?」

「はい……」


 いつもとは違う、どこかピリついたような空気。


「マジかよ……」


 そう言うと彼は無表情のまま目を合わせようとしない。


「あの……ダメなんですか?」

「バンドでそう決めたなら仕方ないだろ」

「ヒロさんに相談しなかったのは悪いと思ってますけど……」


 そう言うと、彼は溜息をついた。


「正直、俺は反対だ……」

「いや、でも……」

「わかるよ。今のままじゃ曲は間に合わないだろうし、狭山の判断は理にかなっている。だけどな……」


 ヒロさんは少し落ち着いたのか、ゆっくりとした口調になる。


「俺は、バンドマンの本質は音楽だと思っている。それは形がどうなろうと変わらないと思う」

「でも……」

「言いたい事はわかるし、少ない曲数でするバンドはいないわけじゃ無い。だけど……それって本当にミュージシャンなのか?」


 理解はしている。だけど、音楽で勝負して来たかれとしてはどこか納得しない部分が有るのかも知れない。


「思っているより早く時代は変わっているのかも知れないな……」


 少し寂しそうな表情を見せると、彼は僕の部屋を出て行ってしまった。だけど僕は、追いかけようとはしなかった。追いかけてもかける言葉は言い訳しか思いつかなかったからだ。


 その日、二曲目を完成させる為にギターを弾いた。一人で考えるアレンジは道標がなくなった様に行き場を失う。


「ダメだ……何を変えたらいいか分からない」


 日付が変わり、それでもヒロさんが帰ってくる事は無かった。彼は幽霊、衣食住の必要が無い彼に意思以外に僕の家に帰る理由は無いのだと思い始めた。



♦︎



「祐樹、なんだよ寝不足か?」


 結局一睡も出来ないまま、学校へ向かうと狭山がすぐに気付く。


「ちょっとアレンジが煮詰まってて」

「まあなぁ。時間が出来るって事はその分悩んでしまうのかもな!」


 理由はそれだけでは無いのだが、僕は軽く頷いた。


「とりあえず、納得出来るまで考えてみようぜ? 俺も時間が出来たら手伝うからさ!」


 ライブの手配、見せ方、その他色々と一人でこなしている狭山に弱気は通じない。それは最初から分かっていたんだと思う。


「僕なりにやれるだけやってみるよ」


 意思なのか、逃げなのかよく分からない気持ちでそう言うと狭山は肩を叩いて笑った。


「頼んだぞ!」


 本来は一人で戦う物なんだ。誰かが助けてくれるなんていう事は無い。今までが特殊だっただけなんだ。


 だけど、僕はもやもやした気持ちを払う為、帰りに公園に寄ることにした。


 あの日、初めてヒロさんに会った場所。もしかしたら彼は待っているかも知れない。そう思った。


 公園に着くと、木々が青く夏を迎える準備をしているように見える。夏服に変わる直前ということもあり、汗が頬を伝うのが分かる。


 ベンチに向かうと、派手な人影が見えた。


「ヒロさん?」


 一瞬、走り掛けて直ぐに止める。


「え……誰?」


 金色のロン毛に、上半身は裸。そのくせ髭が伸びて少し神秘的にも浮浪者にも見える。近づいていくと派手なゼブラ柄のパンツが見えた。


 ヤバい人だ……。


 そう思った瞬間。彼がこちらを見た。

 どう見ても怪しい……。


 僕は横目でその人をチラリとみてヒロさんを探し始めると再び目があった。


「今、ヒロタカって言わなかった?」

「えっ……」


 その言葉に、僕は驚く。


「あ……いや、あなた誰なんですか?」


「私は神です、ゴッドです」


 そう言って怪しい人は左手をOKサインを出し、右手を肘に添える様に手を構えた。いや……それ仏だから……その前になんで英語にいいなおしたんだよ……。

お読みいただきありがとうございます。


少し間が空いてしまいました……

♪♪♪


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