泳げちゃうのよね、私
なんだよ、なんなんだよ。なんで…………
「こんなに見学者が多いんだよ……」
ギラギラと輝く真夏の太陽の下。俺は女子専用のビート板に両手を乗せて、水面にプカプカ浮かびながら独り呟く。
見学者用のテントはいかにもガラの悪そうな女子で埋まっていた。
ナイスバディーのくせによぉ…………。
ぺたんこの俺が頑張ってるってのに……!
男子とは違い、女子は未だにビート板を使った泳法を学んでいた。軽い軽い。余裕だね。
「せんせーい! すいませーん!」
「はい? 霜北さん、どうしたの?」
さあ、この辺りでちょっと遊んでみようかね。
「あのー、もっとばしばし泳ぎたいんですけど……」
「え!?」
え!?って、おかしくないか?
なんで中二で小学生レベルをやってんの?
「ダメですかね?」
「あなた……泳げるの?」
「よゆーですよ?」
男子は四泳法はもちろん、メドレーまでやっていたんだよ。しかも小学生時代に水泳教室に通っていたという実績もありだ。
「じゃあ、6番レーンで泳いでみて?
先生、あなたが本当に泳げるか見極めるから。」
「了解しました!」
軽い身のこなしでプールから上がり、水着を軽く引っ張る。男子の水着よりもぴっちりとしているというのが一番の感想だ。
先生には秘密らしいが、恵が日焼け止めクリームを塗ってくれた。女子にとって日焼けは厳禁らしい。
「よーし! 久々に思いっきり泳ぐぞー!」
帽子とゴーグルをセッティング。
プールサイドに立ち、くっしん、しんきゃく。
かーらーのー……飛び込み!
ザブンとスタイリッシュに水に入る。
人魚よろしく、ドルフィンキックで25mを泳ぎきる。
ぺたんこ最高!水の影響を受けないぜ!
「ぷはぁ! 気持ちいー!」
水から顔を上げると、俺は注目の的だった。
約30人の女子の目線が全て俺に向けられていたのだ。これを「視線で穴が空きそうだ」というのだろう。
「あははー……、どうもー。」
『『『『柚姫ちゃん、すごい!』』』』
無人だったはずの6番レーンに人が押し寄せてきて、割と小柄な俺は揉みくちゃにされる。
「あうー。」
この後、俺はたっぷりの撫で撫でを受けた。