訪問者
「で? 学校はどうだった?」
「んー、意外とふつー。お、これ美味しい!」
「でもねー、これからが大切よ?
あんた可愛いから、男に絡まれないようにね。」
「大丈夫大丈夫。たま蹴って撃退するよ。」
ダイニングテーブルに向かい合って座り、姉ちゃんの得意料理であるこんにゃく多めの肉じゃがを頬張っているという場面だ。
「うんうん! で、今日は何の授業があった?」
「それがよー、体育でプールだったんだよ。」
「ぷっ、あはは! 大丈夫だった?」
「ったく……。笑い事じゃねぇっての!」
「ま、あんたは女の子なんだから。そのへんは気にしなくても大丈夫なのよ?」
「まぁ、これからは仕方ないよな……」
ピンポーン!
「はーい! ったく、こんな時間に誰よ……」
ボヤきながらも玄関へ向かう姉ちゃん。
まずインターホンから確認したらいいのに。
「どちらさま? あ、柚姫のお友達かしら?」
「あ、はい。俺は柚姫さんのクラスメイトの……」
「寄土 博詩といいます。」
「寄……土……」
クーラーの効いた冷ややかなリビングの空気が更に冷たく、一瞬にして凍りついた。
寄土 博詩。今、一番会いたくない奴だった。
姉ちゃんとは初対面だったのが幸いしたが、この家に遊びに来たことはある。
引っ越したって設定なのに、家具が変わっていないとなると怪しまれること間違いなしだ。
「あの、柚姫さんいますか?」
「ええ。柚姫ー? 出てきなさーい!」
出て行かない方が不審だ。
ここは潔く、柚姫を演じるしかない。
「はぁーい!」
玄関に出ると、むしむしとした真夏の外気に身体を覆われるような感覚になった。
が、身体は芯から冷えたように冷たく、冷や汗が流れ出す。
「あ、寄土くん。どうしたの?」
「ちょっと話したいことがあってね。」
「わかった。お母さんは中に入ってて。」
「ん。あんまり遅くならないようにね。」
お母さん、もとい姉ちゃんは家に入った。
これで完全に二人きりの状況が完成する。
「寄土くん、どこで……」
「中央広場の工事現場に行こう。」




