202_『推し、燃ゆ』読了
おはようございます。きんぴらです。
今日は2021年2月6日。土曜日だ。
今日は練馬のカフェにいる。ここ最近は緊急事態宣言の兼ね合いもあったので、基本は家で過ごし、用事がある時だけ新宿のカフェに行っていた。
練馬のカフェに来るのは久しぶりだ。……と思ったが、よくよく考えると『猫がいなけりゃ息もできない』を購入した後、家まで我慢できずにドトールに飛び込んで読んだのを思い出した。
先日、新宿の書店で購入した書籍を今読み終えた。
私が読んだのは『推し、燃ゆ』。宇佐美りん氏による、『かか』に続く第二作で第164回芥川賞受賞作だ。
賞とは関係ないが、帯に「全国書店が選んだいちばん!売りたい本」と書かれている。書店の願いが叶ったのか、ブックファーストの売れている本ランキングの上位にいた。
私はあまりランキングなどは気にせず、タイトルで手に取り、目次で購入を決めるスタイルなのだが、『推し、燃ゆ』はランキングと帯に惹かれて手に取った。「書店が売りたいって、なんの目的で?」と疑り深い性格が後押ししたのだ。
目次を探すが目次はない。小説であれば不思議なことではない。タイトルが目次だと言われても、それはそれで納得できる。だが目次を見ずにタイトルだけでは私は購入に至らないので、そんな時は最初の一文を読む。
「推しがファンを殴った」
ほうほう、と首を2、3度小さく上下させて、最終ページの最後の一文を読む。
「綿棒を拾った」
推しがファンを殴って、最後には綿棒を拾うストーリーで、タイトルは『推し、燃ゆ』だ。見えた。
推しがファンを殴ったことで心の隙ができ、その隙にうまく入り込み交際をスタートさせるものの、理想と現実の乖離に精神が崩壊して推しを殺害してしまうのだ。激しい抵抗を受けて有象無象が元の姿を失った部屋で散らばった綿棒を拾うシーンで終結する、サイコサスペンスだろう。
稚拙な想像を限界まで膨らませて、なかなか面白くそうだと思い、左手に『推し、燃ゆ』を抱えてレジに向かった。
そして先程読み終えたところなのだが、ところがどっこい。私の想像していた以上に、何も起こらなかった。アイドルに夢中になる女性の、生活……というか生き様を切り取ったようなストーリーだ。
すごく簡単にまとめてしまったが、文面はそんな簡単ではなくて、目を見張る。
とにかく表現力がずば抜けていると感じた。特に心理描写に関して、多方面から解釈して文書化しているところが面白い。心理状態を体の内側からの視点で捉えたような表現を用いたり、外的要因による心情変化を色を用いて表現したり。
特に居酒屋の描写が好きだった。多くの注文に混乱している様子も読み取れるし、その上で客の一言からそれぞれの心情が伝わってくる。「こぼしたらからおしぼり持ってきて」のやりとりに関しては特に秀逸だと思った。
逆に表現力が見事ゆえに、心理表現に使っている文字数が比較的多く感じて、ストーリーのスピード感が私には少し物足りなかった。
ただ、これに関しては人の好みなのでなんとも言えない。一箇所に留まり、そこで多くの描写を楽しむ人もいるだろうし、私のように先へ先へと物語が進んで行くことを楽しいと思う人もいる。
好きな食べ物を口に入れると味を感じなくなるまで咀嚼する人と、次から次へと口へ運ぶ人の違いだと思う。ちなみに私はあまり噛まずに飲み込んでしまう早食いタイプだ。
いずれにせよ、この小説を読んだ感想は『すごい』だ。それは前述の表現力。ストーリー自体は簡単なものだし、家庭環境も少し複雑なくらいで、特に変わっているわけでもない。だけど、そんな平々凡々な状況なのに心情の機微を正確に表現できている点に度肝を抜かれた。
問題は感心に捉われてあまり楽しめなかった点か。人物設定、環境設定の問題ではなくて、何度も言うがとにかく表現力がすごい。逆に言うと、どんなテーマだろうが、どんなキャラクターだろうが、どんなジャンルだろうが、表現力で素晴らしい作品にできてしまうということだ。
だから、次の作品も楽しみだなと素直に思った。
今日は『推し、燃ゆ』を読んでしまったので新たに本を買いに行った。次の本はミステリー。ゴリゴリに感情移入しそうな本だから、それも内容が良ければ感想を書こうと思う。
それでは皆さん、今日もがんばっていきまっしょい!
きんぴら




