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体力160000超えってどーよ?

 何度見直しても、体力は163000。僕の見間違えじゃないらしい。


 以前に親に連れられて見た、プロアスリートの体力が1000近くて驚いたのを覚えている。単純計算で、その163倍。プロアスリート163人分。僕の身になにが起こった。


 物は試しと、近くにあった岩を素手で軽く殴ってみる。

 ……痛くない。


 今度は強め。

 やはり痛くない。


「…………」


 ちょっと自棄気味に、某おらおら連打をかましてみる。

 ――が、やはり痛くない。ってか、マジですか!


 ―――――――――――――――

 レベル13


 体力 162852

 魔力 0


 筋力 65  敏捷 58

 知性 73  器用 52

 ―――――――――――――――


 あ、ちょっとは減ってる。

 でもこれって、昨日までの僕なら、瀕死レベルのダメージなんですけど。


「あ、もとに戻った」


 見る間に数値が上昇していき、163000に戻った。

 これはあれでしょうか。この程度のダメージでは、自然回復の範疇という……?


 なんだか人外な様相を呈してきたので、無理やり気にしないことにした。

 まずは、ここからの脱出が先決。それしかない、うん。


 とりあえずは、荷物を選別する。

 制服や下着類は必要。スマホやゲームは捨てるには勿体なさ過ぎ。お菓子類は持っていこう。教科書は……水に濡れたし、いっか。

 濡れたバッグを絞り、次々と詰め込む。


 空の感じからして、夕暮れまでは後2,3時間といったとこだろう。暗くなるまでにねぐらを探さないと。


 なにせ、周囲を山々に囲まれた森の中。野生の獣くらいはいるでしょ。狐とか狸とかだったらいいけど、熊とか狼とかだったら洒落にならない。

 ニュースでは、山にはペットが捨てられて野生化した犬もいるらしいし、気をつけておくに越したことはない。


 サバイバルの経験は当然ないけど、ゲームでは夜のエンカウント率は高くなる。まして山や森はさらにアップ。

 そしてここは山で森。ついでに夜で、どんだけのエンカウントか、考えたくもない。


 でも、考えてしまったので、背筋が震えた。


「ま、だいじょぶでしょ。考えすぎ考えすぎ。こんな広そうな場所で、そうそう都合よく出会うわけないし~♪」


 僕は恐怖を払拭すべく、鼻歌などを歌いながら、振り向いたら――


 10の瞳と目が合った。


 あれ?


 噂の野犬、もしくは狼。

 この際どっちでもいいが、5匹の獣の群れだった。


 出会い頭で――いや、きっと出会い頭でなくてもそうだったろうけど、僕の思考が停止する。

 逃げなきゃ――なんて考えは浮かびもしなかった。ただただ、真っ白。


 獣たちは唸り声すら上げない。威嚇する必要もないということだろう。

 のんびりとも思える足取りで僕に近寄り、1mほどの距離までくると、申し合わせたようなタイミングで飛び掛ってきた。当然、僕は反応もできない。


 両の手足と首筋。剥き出しの素肌の部分を狙って、獣たちの犬歯が深々と突き立てられた。


 あまりの激痛に意識が薄れ、死を覚悟して――ということもなく。


「……おや?」


 たいして痛くない。というか、疼痛といった感じで、どちらかというと痛気持ちいい。

 家に置いてある、父が通販で買った、足裏ツボマッサージ機のような。


「…………」


 首筋に咬みついてぶら下がっている狼っぽい獣と目が合う。

 なんともいえない表情。うん、わかる、それ。


 5匹の獣をぶら下げたまま立ち尽くすシュールな状態は、5分ほども続いた。


 根負けしたのは獣のほうで、尻尾を巻いて逃げていった。


 ステータスを確認してみると――


 ―――――――――――――――

 レベル13


 体力 161670

 魔力 0


 筋力 65  敏捷 59

 知性 73  器用 52

 ―――――――――――――――


 あ、敏捷が1上がっている。

 ……今のどこにそんな要素があったのだろう。謎仕様。


 ともあれ、体力はかなり減ってはいたが、それでも総量の1%にも満たない。

 ということは、今の獣が500匹ぶら下がって、ようやく死にかけるということ。そんなに面積ないけど。


 などと馬鹿なことを考えている内にも、体力が自然回復した。


 これってもしかして、案外、安全なのかも。


 いきなり出鼻を挫かれたが、結果的に現状を知れて、これはこれでよかったのかもしれない。


 よし、じゃあさっそく――


 僕は即座に取って返し、泉で肌をごしごしと洗い流した。生臭い涎まみれの体臭まみれ。だって、あいつら臭いんだもん。

 ダメージより、こちらのほうがよっぽど深刻だった。


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