嵐の入学式 前振り
とても短いです。
章のプロローグと思ってください。
「きみ、入学前からアクティブなことやってるねえ」
鶴宮は卵焼きを頬張った。
向かい合う青年は、漬物にしか手を出していない。
「あのー、鶴宮さん?」
「ん?」
「聞きたいのって、『事件』のことじゃないんですか?」
青年の記憶が間違っていなければ「事件」が起こるのは、かなり先の話だ。
「え、僕は『君の起こした事件』全部を聞くつもりだけど?」
「ぜ、全部?」
青ざめた青年に、鶴宮はニコニコ笑いながら、指を折って数える。
「隠そうったって無駄だよ? 特に1年生の時の『生徒の能力リスト漏洩』事件と、2年生の時の『全軍総帥子息拉致』事件。表沙汰にはなってないけど、調べはついてるからね? それ以外にも――」
「ちょちょ、待ってください! 俺に聞きたいのは、『三・二九』事件でしょ!? 喋ります! 喋りますから!」
「ははは、僕はね、別に一番規模のデカいものに興味があるわけじゃない。君の犯罪歴を洗いざらいここで白状してもらうつもりだ。手始めに入学直後には――――――」
初めて、ここで鶴宮の余裕の態度が変わる。
彼の手元には、なんの資料もない。
あるのは、頭の中の記憶だけ。
「……ごめん」
突如、苦々しい顔になる。
「……君に悪知恵を仕込んだのは、僕らかもしれないな」
あまりの豹変っぷりに、青年は何かあるのではないかと勘繰ってしまう。
「な、何でです?」
「君の入学式の事件。あれは僕らの責任だ」
そう。
榎本優哉が、入学して初めて〈異能力犯罪〉と対峙した事件。
7月23日より、第1章スタートします。
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