生徒会VS??? 前振り
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「太一と伊藤は、明日も生徒会か? 今は普通の授業だからいいけど、もうすぐ異能力の訓練も始まるぞ?」
二人が最初に生徒会に呼ばれてから、数日後の夜。
俺は心配になっていた。
彼らは連日、日中のかなりの時間を、生徒会の人たちを過ごしていた。
それこそ、授業の遅れが気になるくらいに。
太一は、チキンライスの上に卵をのせながら、
「それがなあ、なんか面倒なことになってて」
◆◆◆
〈太一目線〉
「奇襲対策?」
聞いたときに、思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
それを不快に思ったのか、氷室会長の表情が冷たくなる。
「相手はルールなんて考えないような奴らだ。『四月中には生徒会の椅子に座ってやる』と断言されたら、こちらとしても対策をせざるを得ない。そんなこともわからないのか?」
二年生たちのせせら笑う声。
しかし、奇襲か。
「その二人って、どんな生徒なんですか?」
伊藤の質問に、倉橋先輩が答える。
「一人は、《障壁》の異能力。もう一人は、《振動操作》の能力者。この子たちと同じ2年生だけど、実力は学年でもトップクラス。正直、生徒会の面子だけでは難しいの」
何となく納得した。
優哉と同じ《障壁》の能力者はともかく、問題は《振動操作》の先輩だ。
その気になれば、大地震も起こせる、非常に危険な能力だ。
衝撃波だって起こせるだろうから、真正面から衝突すれば、甚大な被害が出る。
なにより、この能力は
「遠隔でも有効だから、俺の能力が必要ってことですね?」
「なんだ、やればできるじゃないか」
機嫌は直してくれたらしい。
要は、見えない場所からの攻撃を想定しているのだ。
俺が呼ばれたのは、先輩たちの能力では、遠くの索敵は難しいからだろう。
そうなると、伊藤が呼ばれた理由は。
「《障壁》の方ですか」
「……思った以上に頭の回転が早いみたいだな。そうだ。奴は近距離での戦闘に長けている。あの厄介な壁を突破しなければ、俺たちに勝機はない」
優哉の能力ばかり見てきたから、忘れてしまっていた。
《障壁》の能力者は、その《壁》の形を自在に変えることができる。
それこそ、円錐の形にすれば、コンクリートの壁を突き刺せる槍になる。
また、一見すると普通の壁に見えても、触れてみるとおろし金のように細かい刃状になっていて、大ケガをする場合もある。
もちろん、形状だけではなく性質も変化させることもできるから、それを使ってトラップを仕掛けることもある。
それでいて、省エネな能力なため、持続時間は最長の部類に入る。
攻防に関して、非常に応用力の高い異能力なのだ。
「でも、《無効化》がこっちにいるなら、問題はない。さっさとゴミどもぶちのめして、平穏な生活を取り戻したいものだよ」
氷室会長は勝利を確信したように、込み上げる笑いを押さえていた。
◆◆◆
「あれじゃあさあ、なんか、俺たちの方が悪役みたいじゃないか……?」
全くもって同感だ。
「それに、生徒会の評判って、あんまり良くないんだ。軍人が家族にいるってだけで、なにやっても怒られないんだから」
実際、春休みに二瓶さんを襲っていた連中もそうだった。
もし彼女が一般人だったら、抵抗は許されず、体を差し出す結果になっただろう。
「そう考えると、その生徒会に楯突いてる二人ってスゲーな」
興味が湧いてきた。
「優哉ぁ、余計なことするなよ?」
俺の心情を察したのか、太一はきっちりと釘を刺してきた。
◆◆◆
翌日も、伊藤と太一は生徒会に呼び出された。
あの日以来、太一は俺の分の弁当しか作らなくなっていた。
争奪戦を恐れるというよりは、食べる暇がないかららしい。
ちなみに、あの争奪戦の翌日は、二瓶さんの予想通り、弁当には卵焼きが入っていた。
彼女に食べさせてもらったものと、全く同じ味。
羨ましい奴らめ!
…………が、ここ数日、一つ異常事態が起きていた。
夕方、寮に戻ってから、俺は二瓶さんを自室に呼んだ。
玄関先で立ち話。
話題はもちろん、太一の料理である。
「いや~、ビックリするほど同じ味だったよ。しっかし、なんでまた?」
「太一の料理を食べて、他の料理食べるくらいなら、再現する努力した方がいいと思わない?」
……納得。
しかし、太一の行動には疑問がある。
「でもさあ、いくら作っても、相手に食べてもらえないんじゃ意味ないよね? なんか最近、おかずが毎回同じなんだけど」
「あ~、やっぱり?」
彼女曰く、「別に私に食べさせるわけじゃないんだけど、私のこと考えながら作ってると、中身は私の好みになるんだよね」
……
…………
なにこの熟年夫婦のような安定感。
実際、太一の心情を反映するかのように、弁当のおかずは見事に偏っていった。ふたを開けると、いつも同じおかずとご飯。
不味いとは言わない。飽きるわけでもない。
ただ、あまりにも毎日同じ弁当だと、少し恐怖を覚えてきた。
まるで機械で作ったかのような、そんな印象。
俺もさすがに悪いと思って、自分で何とかすると申し出たのだが、「料理しない日を作っちゃうと、太一の精神が崩壊する」と二瓶さんからキツい忠告を受けた。
いくらなんでもそれはないだろう、と太一に相談したところ、「……頼む、おまえ以外に弁当作れる余裕がない」と、若干スレスレな発言をしたので、おとなしく弁当はもらうことにした。
しかし。
なんだろう。味は悪くないのだが、最近の彼の料理からは、妙な重圧を感じる。
この状態について二瓶さんは、「ストレスが溜まる→料理したくなくなる→いつもしていることをしなくなるので、調子が狂う→ストレスが溜まる」の負のスパイラルを回避するための苦肉の策だと言っていた。
「何がそこまでストレスになってるの? 二瓶さんがあのホルスタイン先輩に嫉妬してるの知ってるから?」
「それもあるけど、多分、こんなに長期間になると思ってなかったからだと思う」
彼女が言うには、太一は規則正しい生活が習慣になっているので、夜8時に帰宅するなど、今までしたことがないのだとか。
「しかも相手が生徒会だし。あいつにとっては仇みたいなもんだよ。嫌いな人と長時間一緒にいるって、辛いでしょう?」
今の太一にとって、生徒会の人たちと過ごす時間は拷問に近いのだろう。
「そっからご飯作ってってなると、あいつの体には相当負担かかってると思う。原動力がなきゃ、いまごろはあいつの料理は破綻してる」
「もしかして、その原動力ってのが、二瓶さんのこと?」
「…………」
無言で照れてんじゃねーよ!!!!!!
◆◆◆
このままでは、毎食がだし巻き玉子になってしまう。
いや、もうなってるけど。
卵の割合が高すぎる。
3人分しか作ってないのに、1日で10個入りを消費するのは尋常ではない。
俺は個人的に、生徒会と対立している勢力を調べることにした。
春休みの一件で、俺は上級生にも広く知られていた。
幸いだったのは、ほとんどの先輩方は、俺に悪印象を持っていなかったことだ。
泣いて感謝した先輩もいた。
……あの3人、どれだけの人を泣かせてきたんだろう。
それはともかく、生徒会に反抗する勢力について質問すると、快く教えてくれた。
ただし、教えたあとになって、少し心配そうな顔をして
「でも、そんなの聞いてどうするんだ? まさか、あの二人に協力するのか?」
「いえ、そこまでする勇気はないです」
「まあ、いくら生徒会の奴らが横暴でも、君らに実害があるわけじゃねえからな」
生徒会の評判はすこぶる悪かった。
さて。
教えてもらった情報をもとに、その二人がいるという場所に向かった。
屋上とか、使われていない教室とかならベタなのだろうが、二人が根城にしていたのは、なんと保健室。
え、不登校?
今回、やや長編になりそうです。
主人公、ようやくガチ戦闘…………?
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次回は8月19日更新予定です。




