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ミッドガーデンの神プレイヤー ― 無課金の俺が伝説の救世主になるまでの軌跡 ―  作者: まさな
第三章 つながる場所

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第八話 突然のアカウント抹消

 ミッドガーデンの最初の広場、神聖フェルディア王国の中央広場。

 ゲーム内では〈冒険者の広場〉とエリア表示される。

 石畳の広い円形の広場で今日も大勢の冒険者で賑わっている。

 いつもと変わらない広場は、だが、今の俺にとってはどこか違ったものに見えていた。


 ここは何なのだ?


 VRゲームの作り出した世界。

 では、VRとは?

 仮想現実などと言うが、結局は電気信号に過ぎない。

 いや、現実ですら目の網膜に入る光を神経細胞が電気信号に変換するに過ぎない。

 ブーツ越しの足の裏に感じる石畳の硬い質感すらも電気信号だ。


 しかし、目の前にいる冒険者達は本物の人間が意識を宿している。

 彼らの発する言葉は確かに現実のモノなのだ。

 そして、母さんがこの世界で俺に伝えた情報は真実だった。


 では、情報という限定された部分において、現実との違いはどこにあるのか――


 実在の定義について考えをめぐらせたが『我思う故に我あり』ではかえって混乱しそうだ。


 システムメッセージで『MG運営から重要なメッセージが2件あります。読みますか?』と表示されているので、俺は先にそちらを読むことにした。




『MG運営です。ミッドガルド・ガーデンをプレイ頂きありがとうございます。


 エリア変異体モンスター〈ブラックゴースト〉のバグにより、当該エリアでプレイされていたお客様方には大変ご迷惑をおかけしました。

 このバグはパラメーターの設定ミスによるものです。

 対応として直ちにモンスターデータの修正を行い、開発のチェック体制の見直しをすでに実施しております。


 外部からの不正アクセスの痕跡も部分的に確認しておりますが、直接の関係とは考えておりません。

 運営として不正アクセス、データ改ざん、改造コアの使用等については法的措置を含むアカウント永久停止など、断固とした処分で望んでいく所存です。

 なお、お客様の個人情報に関するデータ領域とは異なるため、情報漏洩の心配は全くありません。


 遅くなりましたが正規の討伐報酬を追加させて頂きます。

 また、お詫びの品として【〈聖騎士ミルフィーユ〉の手作りアップルパイ】をプレゼントさせて頂きました。

 ゲーム内限定ではありますが、ご賞味頂ければと考えております。


 今後ともミッドガルド・ガーデンをよろしくお願いします。

 担当責任者 GM森里

 FUGGソフトウェア株式会社』



 そして二件目のメッセージ。



『MG運営です。ミッドガルド・ガーデンをプレイ頂きありがとうございます。


 他プレイヤー様からの情報提供により〈南の遺跡〉エリアにおいて、4月27日午後9時頃、重大なバグが発生したことを確認しました。

 当該エリアでプレイされていたお客様方には大変ご迷惑をおかけしました。

 特に水沢様には先日の〈ブラックゴースト〉に続き度重なるプレイの支障となり、誠に申し訳ございません。


 お詫びの品として水沢様には特別に【レア・スキルエッグ】をプレゼントさせて頂きました。

 使用するとレアスキル種確定でスキルが一つ増える大変お得で強力なレアアイテムです。

 どんなスキルが出るかは開けてみてのお楽しみ!

 ぜひご利用頂き、楽しくプレイしていただければ幸いです。

  

 現在、〈南の遺跡〉地下四階の一部を封鎖し、原因を調査中ですが、残念ながら原因究明に未だ至っておりません。

 そのままプレイして頂いて問題ありませんが、原因が判明するまでは当該エリアの封鎖地域には入ることができません。

 ご理解のほどお願い致します。


 今後ともミッドガルド・ガーデンをよろしくお願いします。

 担当責任者 GM森里

 FUGGソフトウェア株式会社』

 



 原因不明か。ま、アレが簡単に説明が付くようなバグだとは思えない。不正アクセスの痕跡というのが気になるが、誰が何の目的でそんなことをするのか……よく分からない。

 母さんはこの手のプログラムなんててんで(・・・)ダメだったし。


 とはいえ、もう一度あそこに行こうと思っていたが、封鎖されているとなると困ったな。

 あの場所に一緒に行ったユキと話してみたいが、遺跡に行ってみれば会えるかな?


『全員:宝石〈マラカイト〉を手に入れました』 

『個人:呪術符(スクロール)【アイスニードル】を手に入れました』

『MVPボーナス:呪術府(スクロール)【サモン・ゴーレム】を手に入れました』

『〈レア・スキルエッグ〉を手に入れました』




「おはようございます、〈リュート〉さん」


 ミルフィが笑顔でやってきた。こちらの時間では朝のようだ。


「やあ、おはよう。調べ物は終わった?」


 俺は聞いた。ミルフィは黒いゴーストについて調べると言っていた。


「ええ、残念ながら城の書庫にはあのモンスターに関しての記録はありませんでした。大司祭と宮廷魔術師には話してありますので、後は彼らが調べてくれると思います」


「そう」


「それから、あの…これ、作ってみたんですけど…、よかったらどうぞ。アップルパイです」


 ミルフィが少し目をそらし、はにかみながらバスケットを差し出してきた。


「ありがとう」


 その笑顔と仕草がすでに美味しいかも。


 と、さっきまで無関心そうに雑談していた冒険者達が一斉にこちらに注目した。


「何そのイベント」

「おい…マジか…」

「え? ミルミルって攻略できんの? じゃ俺もたっぷり自家製ミルクを後ろから中――ピー《利用規約に違反したため、アカウントが即時削除されました。本ゲームは全年齢対象です。他プレイヤーもご注意願います》」


「うおっ! BANされた!」

「即BANかよー!!!」

「バカすぎるぅ」

「こわっ。NGワードは中ピーか?」


「中出――ピー《利用規約に違反したため、アカウントが即時削除されました。本ゲームは全年齢対象です。他プレイヤーもご注意願います》」


「ちょっ」

「ヤバいヤバい、完全にNGワードじゃん!」

「いや、前にオレは言ったことあるけど、平気だったぞ?」

「状況によるんじゃないのか? NGワードを特定するのがマズいとか」

「いや、近くに未成年プレイヤーがおるはずや」


「おお、ねえねえ、リアル小学生のみんなー、お兄さんが優しく遊んであげるから自己申告してご――ピー《利用規約に違反したため、アカウントが即時永久削除されました。本ゲームは全年齢対象です。他プレイヤーもご注意願います》」


「永久垢BANンンンンー!!!」

「それもアウトなんー?!」

「厳しいな、おい」

「今の絶対冗談で言っただろ…可哀想」


「止めて! それ以上はみんな止めて! アホすぎてオレの腹筋がよじれて死ぬから!」


「うぜー、小学生はプレイすんなっての《警告! 利用規約に違反しています。他のプレイヤーが不快になる言動は慎みましょう》」


「何を言う。小学生女子なら誰でもウエルカ――ピー《利用規約に違反したため、アカウントが即時永久削除されました。本ゲームは全年齢対象です。他プレイヤーもご注意願います》」


「あああああああ!!!」

「今のはアウト違うだろ」


「ウエルカ――ピー《利用規約に違反したため、アカウントが即時永久削除されました。本ゲームは全年齢対象です。他プレイヤーもご注意願います》」


「ちょっ」


「ええええええええ???」


「ウエル――ピー《利用規約に違反したため、アカウントが即時永久削除されました。本ゲームは全年齢対象です。他プレイヤーもご注意願います》」


「あっ」「うわ」


「ダメ、ウエ――ピー《利用規約に違反したため、アカウントが即時永久削除されました。本ゲームは全年齢対象です。他プレイヤーもご注意願います》」


「やめてー!!!」


「喋るな! みんな喋ったらあかん、特にウ――ピー《利用規約に違反したため、アカウントが即時永久削除されました。本ゲームは全年齢対象です。他プレイヤーもご注意願います》」


「だからー!」

「また逝ったぁああああああ!!!」




 なんだか騒がしいことになってるが、清純なミルフィを巻き込みたくは無い。


「行こう、ミルフィ」


「は、はい」


 俺は彼女の手を引き、その場を走って離れた。



 外壁近くの石段までやってきた。


「ふう、やれやれ」


 ここまで来れば大丈夫だろう。誰も追いかけては来ていない。

 俺はずっと掴んでいたミルフィの手を気付いて慌てて放した。


「今の…冒険者の方はアカウントなるものを永久削除されると、二度とこの世界に入って来ることはできないと聞いています」


 難しい顔をしたミルフィも多少の知識はあるようだ。NGワードについては俺も危ないので触れないようにしておこう。


「ああ、その辺は俺もよく知らないけど、まあ、そうなんだろう」


「そうですか。いくら神の怒りに触れたとは言っても……」


 神か。確かにミルフィ達にとってはこの世界の開発者は創造主で神なのだろう。

 逆らえば一瞬で消されかねないという絶対的な力の差。

 まぁ、逆らうようなプログラムはされてないだろうから、すべては開発者の都合や気まぐれか。


「リュートさんは気を付けて下さいね?」


 心配そうなミルフィの顔。


「ああ、気を付けるよ。大丈夫だ。普通にプレイしてりゃ、まずそんな事にはならないし」


 元気づけてやろうと俺は笑顔で太鼓判を押す。


「はい」


「じゃ、さっそく、お手製のアップルパイでも食べようかな」


 俺は石段に腰掛ける。ミルフィもその隣に座ってきた。


「はい。焼きたてですから、美味しいと思いますよ」


 ミルフィの言葉通り、手作り感があふれるアップルパイは香ばしくてとても美味しかった。

 リンゴの果肉の程良い柔らかさと自然な甘みが癖になりそうだ。

 どこか懐かしい味だと思ったが、そう言えば母さんもアップルパイをたまに作ってくれたっけ。

 ミルフィの方がずっと美味しかったけれど。

 俺は幸せを噛みしめつつ、二人きりの時間を楽しんだ。

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