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LOAD GAME →青空にて 残り時間00:35:00

 「ふざけんないい加減にしなさいよおッッッ!!!」


 青い空へと沈みゆく中で、バターは怒りのあまり誰にも見せられないほどの悪態をついていた。


 文字通り怒り狂った彼女の視線の先では、無謀にも浮遊島から飛び降りたティーがテイルウィンドを連発し、流星のように凄まじいまでの勢いで落下してきたのである。あまりの速さに彼女の風鳴鳥すら追随できず、肝心の本人すら押し寄せる位置情報のフィードバックの前に顔面蒼白だった。


 彼女の顔は押し寄せる不快感と落下の恐怖に耐える様に、美しい顔を見るも無残なまでに顰め、どこか泣き顔のような表情でそれでも細められた瞳だけはバターを捉えて外さない。


 「私ッ!! やっぱりあんたなんか大っ嫌いよッ!!! いつもそうやって私の必死の努力をあざ笑いやがってッッッ!!!」


 他方、押し寄せる不快感も湧き起る落下の浮遊感も、バターにはどうでも良くなっていた。それ以上に心の底から劣等感が呼び覚まされ、叫ばなくてはいられない。


 それは彼女が初めて会った時からずっと蓄え込んできた、ティーへの嫉妬である。


 バターは最後の最後まで、ティーに勝つことはできなかった。


 「――ッッッぁ!?」

 「この馬鹿ッ!? 速く鳥に乗って島に戻るのよッ!? お願いだから、私なんかの為に身体を張らないでッ!!! 何のために私がここまでしてると思ってんのッ!?」


 ティーの顔が苦痛に歪む。彼女はバターと違って身体がねじ切られそうになる不快感にも、内臓が氷に浸されるような浮遊感にも耐えられない。


 「もう……いい加減に……ッ……!」


 中空に爆音が響くと同時に、彗星の如き落下を見せたティーは真っ逆さまに速度を上げる。バターは泣いていた。


 「馬鹿ッ! 大っ嫌い! 大っ嫌いなんだから! あんたみたいな人の気持ちもわからない冷血女ッ! 一生一人で生きてなさいッ! 」


 バターの瞳から涙が零れ落ちる。彼女は嬉しかったのだ。そして憎らしくもあった。自分が体を張って相討ちに持ち込んだ努力が無に帰そうとしていて。されど、ずっと憧れていた親友が自分なんかの為に身体を張ってくれて。


 ティーはいつだって自分本位で他人の気持ちなんて顧みず、そして誰よりも正しかった。


 悔しいがティーは彼女が命の危機も忘れて負け犬の遠吠えを喚き散らす程、強い。


 「紗耶……香……ッ…………手を……伸ばし……」

 「あぁもう! 信じらんないッ!」


 負けん気の強いバターとしても、誠に残念ながら認めざるを得なかった。目前の親友はその兄と同じく、バターにとって決して敵わない強者なのである。


 それを受け入れた瞬間、バターの心から劣等感が消え去っていた。


 同時にバターの身体も限界を迎える。いくら空中戦闘に適性があるとはいえ、スターファイアとの戦いを終えて限界だったのだ。


 そして高度の方も余裕は幾ばくも無い。


 ――最後の……一撃をッ!


 限界を超えた結果徐々に意識がブラックアウトしていく中、バターは最後にティーと同じ道を選んでいた。


 突き上げる様なテイルウィンドの衝撃が彼女の身体を飲み込み、その体を上空の親友へと打ち上げる。


 「……かはぁッ!」


 同時に激しい衝動の前に、ついに彼女は屈服するとその意識を手放していた。


 「紗耶香ッ!」


 そして、それは確かにティーの元へと届いていたのである。ティーは親友の命を助けることができたと涙を浮かべて喜び、直ぐに厳しい表情に戻る。


 彼女の上空には必死で追い縋るものの、決して届かない高さにいる愛鳥の姿。このままでは2人とも地獄の底へ真っ逆さまだった。


 「……うッ……!? これは……流石にキツイわね……!」


 何より、ティーの身体はバターと違って空中戦闘に適応できていない。バターを受け止めたおかげで勢いが一時的に和らいだが、直ぐにまた強烈な落下が始まるのだ。美しい顔を台無しにしながら、彼女は一瞬たりとも躊躇しない。


 片手には親友。もう片手には長い槍。頭の上には鳥の影。短い時間の間に頭脳がフル回転し、回答を導き出す。


 「私は……ッ! 力でもって成し遂げるッ!」


 刹那彼女の槍が激しい光を放ち、鳥の悲鳴が響き渡る。


 ティーは竜炎槍を容赦なくペットにぶち当てる事で、強引に鳥の速度を上げたのだ。レベルの高いペットは甲高い笛の音のような悲鳴を上げつつも、健気なまでに追い縋る。


 ティーはそれを見て叫ばざるを得なかった。


 「くッ……!? 僅かに足りない……!」


 涙目の鳥との間には、僅かに一鳥身ほどの距離があったのだ。だが、その距離は2人分の重量を抱えるティーにとって見る間に開いていき、


 「だからなに……? 足りないのなら、足せば良いッ!」


 それ以上に距離が開くよりも先に、彼女の槍が閃いていた。雷光のような速度をもって槍が振るわれ、その銀色の切っ先は遠慮容赦一切なく彼女の愛鳥を貫いたのである。


 今度こそ鳥の断末魔の声が上がる中、彼女は傷を抉る様に槍を回転させ、槍でもって強引に愛鳥を引き寄せたのだ。


 そうしてHPゲージの減少には目もくれず、一目散に宝物を抱えたまま鳥の鞍に居座る。


 驚くべき傍若無人さだったが、それが正解だったのだ。激しい上下移動に伴い薄れゆく意識の中、彼女は最後の力を振りしぼって回復アイテムに手を伸ばす。


 それは辛うじて鳥を、そして2人をギリギリのところで押し留める事に成功していた。


 「紗耶香、見てくれた……? やっぱり、私とあなたのコンビは最強ね……。どんな未来も切り開いていける…………ッ」


 愛よりも正しさを選んだティーは、結果的に力でもって両方を獲得することができたのだ。


 そこで限界を迎えたティーは、バター共々気を失っていたのである。バターにとっては不本意だろうが、少女2人の仲良い寝姿はとても絵になった。


 それを乱さぬよう、風鳴鳥は必死で翼をばたつかせ、天を目指して飛んでいく。




 「……そろそろ諦めたら? 貴方にはパフほどの脅威を感じない……」

 「うるさい黙れPKめッ! そんなことは言われなくとも分かっているッ!」


 浮遊島の片隅で激しい演舞を披露していた2人には、決着の時が近づいていた。


 涼しい顔のままアイテムで回復を図っているネウロポッセとは対照的に、パックは息も絶え絶えで血走った眼だけが敵をギロリと睨みつけている。


 「無駄な抵抗ね」

 「無駄かどうかは、終わってみなければ分からないッ!」


 パックは一方的なまでにネウロポッセに追い込まれていた。


 これまでの戦いで、パックはネウロポッセに立て続けにクリティカルを叩き込み、そのHPを半分以下に削ったのも一度や二度ではない。そこだけ見れば彼が優勢を確保していると言えるだろう。


 「無駄よ。貴方の攻撃で受けるダメージ以上に、私のアイテムでの回復量の方が上だもの……」

 「くッ……! だが、何か手があるはずだ……ッ!」


 だが、パックは悔しそうに敵を見ることしかできない。彼はこれまで数多の死線を乗り越えてその首を切り落とし、それでもネウロポッセの回復の前で無に帰されていた。


 一方でその苦痛に満ちた表情が物語る様に、疲労は溜まっている。いくら現実の世界で無いとはいえ、精神的な疲労は発生する。そして披露して精彩を欠いた動きではネウロポッセとの間にある技量差が徐々に埋まっていたのだ。


 「そろそろ終わりにしましょうか……。さようならパック」


 そこでネウロポッセがスキップを唱えると、パックに斧を突き付け死の宣告を浴びせかける。


 「やってみろよ下手くそッ!!! 僕はお前如きに負けはしない! お前を倒して、胸を張って兄さんや姉さんと再会するんだッ! そしてそれから…………」


 ネウロポッセは何も言わなかった。ただ残像を残しながらも滑る様に浮遊島を疾走すると、下段から突き上げる様にパックへと斧を振るっていた。


 疲弊したパックはそれを眺めているだけであり、


 「死ね」

 「当たるものか!」


 紙一重で躱していた。ネウロポッセはそれを苦々しくも見逃すしかない。パックは疲弊してなお、ネウロポッセ以上に強かったのだ。


 「これで……どうだアアアアッッッ!」


 パックはただ躱したのではない。そのまま踊る様に一回転すると、強烈な反撃の一撃を女の顔面に突き刺す。ダメージは元より、眼球への攻撃にネウロポッセは本能的に目を閉じていた。


 それが彼の狙いなのだ。パックは狙いが的中したことに鋭い笑みを浮かべる。


 「貰ったぁッ!!」


 生まれた隙を見逃さずに速さを活かして背後に回り込むと、スイカを割る様に頭部に激しい剣撃を叩き込んでいた。


 “CRITICAL!”


 同時にパックの身体がぶれる。それはアメリアが必殺技として好んで使っていた剣舞である。剣スキルレベル9“木の葉落とし”。強制クリティカルの一撃が次々とネウロポッセの身体を貫き穿ち、HPゲージを減少させていく。


 「だから……何?」

 「くそッ!? やっぱりこの攻撃では相手を倒しきれないかッ!?」


 だが、止めを刺せなければ意味は無い。ネウロポッセは反撃や回避を一切取らずに、死なないと分かっている攻撃を平然とその身で受け止めながら回復を済ませていく。


 エリクサやネクタルといった最高位の回復アイテムは、清々しいまでに彼女に福音を、パックには絶望を与えていた。


 ――これで敵に使わせたアイテムは10個ッ! つまり、まだ最大40個は在庫があることになる…………。


 パックは心が挫けそうだった。善戦空しく、今正に彼は矢尽き刀折れようとしているのである。対照的にネウロポッセは最初から戦って勝つつもりなどなく、ただ物量で押し潰す魂胆だったのだ。


 その表情には一切の疲弊が無く、ただ無関心にパックを見下すのみ。


 「……ナーガホームの活躍もここまでね。ヨロレイホーを邪魔してくれたその罪は、万死に値する所」

 「はッ! なにがヨロレイホーだ! 僕たちの前に立ち塞がるが最後、敵は滅びる運命にあるッ!」


 言葉とは裏腹に、パックにはある考えがちらついて仕方ない。


 ――この敵には勝てる気がしない。


 必死で表情を取り繕ったパックに対し、それを見透かしたようにネウロポッセは不愉快そうに顔を顰めていく。


 「パフ、ティターニア。あなたの兄と姉? 確かに優秀ね。正直、私達の正体を見抜くどころか、ここまで状況を引っ繰り返されるとは思ってもみなかったわ」


 言葉とは裏腹にネウロポッセは余裕綽々だった。この戦いにしろ、ゲームの行方にしろ、彼女に負けは無いのである。それは間違いない。どれほどパックが死力を尽くして戦おうと、現実は甘くないのだ。


 「当然だ! 世界で一番賢い兄さんと、世界で一番強い姉さんっ! 僕にとって唯一胸を張って誇れる、自慢の兄姉だッ!」

 「だからこそ、たった一人残された今の貴方は厳しい状況に立たされている」


 的確な指摘に図星をつかれたパックは言葉に詰まってしまう。彼の最後の希望は、敵を倒した兄姉が颯爽と助けに戻って来てくれる事なのだ


 「うるさいッ! お前なんかに何が分かるッ! 僕の兄さんは誰よりも頭が良くて、僕の姉さんは誰よりも強いんだッ! チートに頼った卑怯者なんかに負けはしないッ!」

 「……勝利は近そう。良かった。ヨロレイホーに吉報をお持ちできる」


 疲労し混乱したパックは、もはや自分が何を口走っているのかも分からなかった。口をついた言葉は滅茶苦茶で、それでも何かを叫ばずにはいられない。死の恐怖と絶望を振り払うには、それしかないのだ。


 「例えどれだけ敵が強かろうが、絶対に勝てない相手だろうが、僕たちは負けない! だから……兄さん、姉さん……速く……」


 ――強力なPKを倒すのは、僕には無理だ。でも、兄さんか姉さんならッ!


 それは、優秀な兄姉に囲まれて育った彼の宿命とでもいうべき癖だった。少々の壁なら2人のバックアップを受けて安心して乗り越えられる。だが越えられないほどの高い壁に行きついた時、無意識の内に誰よりも頼れる2人に依存してしまうのだ。


 「安心しなさい。貴方を蜘蛛と同じところに追いやった後は、パフとティターニアの番よ。あの世で仲良く暮らすが良いわッ!」

 「黙れェェェェェェェッ!!!」


 苦しみから逃げる様に明後日の方向を見ているパックに対し、ネウロポッセは勝利を確信していた。ありもしない救いを求めるのは、追い詰められた人間に見られる特徴である。


 彼女は数多のプレイヤーを殺してきた経験で、それを知っているのだ。


 「キャンキャン煩い。さようなら、トリックスター」

 「アアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」


 彼女の斧が鈍色に光を放ち、必殺の一撃をパックへと向ける。追い詰められたパックはそれに対してただただ絶叫するしかなかった。


 それしか方法が無かったのである。


 「……ッ!?」


 斧を振るった瞬間、ネウロポッセを嫌な予感が襲っていた。目の前の男は疲労困憊なのを隠しきれていない。されどその眼にはいまだ生気が尽きず、彼女が殺してきた者達とは一線を画している。なにより、その面構えはどこか挑発するようで、


 ――彼が浮かべた引き攣ったような笑みは、彼女の嫌いなアレに似ていた。


 「来いやああああッ!!」

 「……!? しまった!? こいつッよくもッ!?」


 パックの笑顔は彼の尊敬する、そして彼女が蛇蝎の如く嫌悪する兄の笑い方に似ていた。


 慌てて攻撃を中断した時には遅い。


 「今だッ! 止めを刺せッ!!!」


 ネウロポッセが慌てて空の彼方を視線送ると、そこでは正に彼女の愛鳥がパックの鳥の隼の如き一撃に撃墜されて墜落していく所だったのだ。


 その断末魔をかき消すようにパックは雄たけびを上げていて、


 「お前ッッッ!!! 最初から私の鳥を狙っていたのッッッ!!!?」

 「その通りッ! 残念だけど、お前に勝てないのは分かっていたからね!」


 パックは最初から勝てるとは思っていなかった。だが、確かに勝てるとは思ってもいなかったが、負けるつもりも無かった。


 彼は柄にもなく騒ぎ立てる事で、遥か彼方で戦う愛鳥の戦闘音や敵鳥の悲鳴をかき消していたのだ。


 「ざまあ見ろ! これでお前はめでたく足手纏いだッ!!! 」

 「……ッッッ!!!」


 それは、パックが真の意味で自立するために必要な儀式だったのだ。雛鳥が親鳥の巣から旅立つように、パックも兄姉の強さから逃れなくてはならない。自身の力だけで強敵相手に勝利する必要がある。彼はそれを達成していた。


 同時に役目を終えたパックは鳥に合図を送ると、一目散に浮遊島の淵へと駆け出していた。天空へと逃走してしまえば、彼女に追い縋る手段は再び鳥を育てることだけ。


 「お前エエエエエッッ!!! よくも、よくもこの私をォォォッ!!」

 「じゃあね三下! お前には地べたを這いつくばるのがお似合いだッ!!!」


 驚きのあまり目を大きく見開いたネウロポッセは、一転して憎悪の視線をパックに浴びせかける、情念の籠ったそれにパックは思わず怯むものの、その足は決して止まらない。


 そもそも彼の足はネウロポッセよりも速い。彼の勝利は確定していたのだ。


 「殺す……! 絶対殺す! よくもヨロレイホーの邪魔をッッ!!! 許さないッ殺す殺す殺す殺す殺す……!」


 実に良い気分だった。パックは敵の負け惜しみを背に、爽やかな気持ちで走り去る。背後に突き刺さる怨嗟の声すら気にならない。


 だから、その一撃を躱せたのは幸運だったとしか言いようが無かった。


 背後にいたはずのネウロポッセが姿を消すのを察して、彼は本能的に回避行動をとっていたのだ。そしてそれゆえ、ネウロポッセの殺意の乗った攻撃を避けたのである。


 「なにッ!? これは、ステア!?」

 「そのとぉぉぉりよぉぉぉッッッ!!! あの男に一泡吹かせるために磨いた、私の牙ァッ! お前如きに披露するのは癪だけど、殺しちまえば問題ないわアアアァッ!!!」


 悪鬼の如き表情に冷静と憤怒を同居させたネウロポッセは、奇襲が失敗したことに微塵も動揺しない。彼女が憎むあの男なら有り得ることだからだ。そして、その対策も既に完了している。


 「オラクル……! 今よッ! こいつを地獄に連れて行けエエエエッッ!!!」

 「そんなッ!? い、いつのまにッッ!?」


 ネウロポッセ渾身の一撃に呼応するように、浮遊島の下から竜が現れたのだ。その口腔には溢れんばかりの火花が舞い散っている。


 「糞野郎があああッ!!! 死ねエエエエッ!!!」

 「このオオオッ! 負けるものかッ!!」


 刹那、竜のブレスが至近距離から発射される。それをパックは強引に倒れ込んでスレスレで躱すものの、逆光を浴びて鞍から飛び降りた相手には無防備な姿を晒してしまっていた。


 「良いわオラクルッ!!! 息の根を止めてッッッ!!!」

 「うおおおおおオオオオッ!!!」


 舞い降りる影に対して、パックにできる事は無かった。彼が起き上がるよりも先に刃が捻じ伏せるだろう。それでも、彼は最後までその戦意を劣らせていない。


 彼の気迫の籠った雄叫びの中、上段から振るわれた渾身の一撃は体を穿つ激しい打撃音を奏でて彼の戦歴に花を添えた。


 「……まさかッ!!」

 「ぎぎぎ……貴様ァァァァァッ!?」


 パックはその展開に仰天しながら仰ぎ見る。思わず涙が出そうなほど頼もしいその背中は、ブレスを直撃させた後に必殺の一撃を容赦なくネウロポッセに叩き込んだのだ。


 その不敵な面構えを、パックは暫く忘れられそうにない。


 「ブラックウィドウゥッ……見参ッ! 散々磨き上げた復讐の牙の味はどう? さぁぁぁぁぁぁ天誅の時間よッ! 覚悟しやがれPKの糞どもめがぁッ!」


 濃い化粧で覆い隠された表情は眩いばかりの愉悦に輝いている。平均的な身長に大き目の、それでいて禍々しさすら感じさせる赤みが特徴的な投げ斧を構えた少女。


 ブラックウィドウはライバルの危機に馳せ参ずるという最高にクールな展開に、興奮のあまり獣のような雄叫びを上げていた。


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