3-11話 お前達の筋肉は、そんなもんか!!!!
森の中で、戦いが続いていた。
柵衆と一班の交戦は、長引いていた。
柵は分かっていた。
柵衆の小鬼族たちが、三人の傭兵相手に数の利で押しているが——三人とも、腕が立つ。
「柵衆よ!!囲め!!押し込め!お前達の筋肉は、そんなもんか!!!!」
「「でちーーー!!!!」」
小鬼族たちが、一斉に動く。
傭兵の一人が、舌打ちをした。
「……数が多すぎる」
「死なないよう戦え、か」
別の傭兵が、苦い顔で言った。
「言うのは簡単だが——」
傭兵達が顔を見合う。
柵が、その隙を見逃さなかった。
「今だ!!」
柵はただ脚力で、一瞬で敵の目の前まで迫り、柵の太い足が、傭兵の一人の武器を叩き折った。
小鬼族が、傭兵の足に絡みつく。
柵の足撃で、一人、また一人——武器を失い、動きを封じられた。
「……クソ。」
傭兵の一人が、両手を上げた。
残りの二人も、顔を見合わせて、静かに武器を下ろした。
「柵衆の勝ちでち!!!!」
「「「でちーーーー!!!!」」」
森に、歓声が響いた。
ミクラが、俺の隣に立ったまま言った。
「森の戦線が、収束したようです」
「……向こうも勝ったってこと?良かった〜」
俺は、石畳に目を落とした。
傭兵が六人、膝をついている。
拠点の中は、静かだ。御座衆の小鬼族たちが、遠巻きにこちらを見ている。
「ミクラ」
「はい」
「木の魔物たちは」
ミクラが、少しだけ間を置いた。
「……生きています。ただ」
「ただ?」
「全員、両断されています。動くことも、声を出すこともできない状態です」
俺は、目を閉じた。
俺が生み出した魔物たちだ。ミクラを助けようと、手当たり次第に魔物化させた木たちだ。
助けを求めて生み出して——傭兵に両断させてしまった。
「……俺のせいだな」
「殿」
ミクラが、静かに言った。
「今は、目の前のことをお考えください」
俺は、目を開けた。
ベルトルトが、こちらを見ていた。
膝をついたまま、まっすぐに。
「……お前に、聞きたいことがある」
俺は、ベルトルトに向かって言った。
「俺たちは、ただここで暮らしたいだけだ。誰かを傷つけるつもりはない」
ベルトルトは、何も言わなかった。
「それでも——お前たちは、また来るか」
沈黙。
ベルトルトが、静かに答えた。
「……それは、俺が決めることじゃない」
「そうか」
俺は、それ以上聞かなかった。
「ミクラ、ミクラ衆に頼んで、森の三衆呼んでてきてくれ。全員、拠点に」
「御意」
柵が、三人の傭兵を連れて、拠点に戻ってきた。
合流した瞬間、ベルトルトが三人の状態を確認した。怪我はない。武器を失っているが、全員無事だ。
「全員揃いました!!!!殿!!!!!」
柵が、筋肉をバキバキに膨らませながら言った。
「ありがとう、柵」
「はい!!」
俺は、九人の傭兵を見渡した。
ベルトルト、そして八人。
「今夜は、ここにいてくれ。話は、明日する」
ベルトルトが、わずかに眉を動かした。
「……殺さないのか」
「今はまだ、殺す理由がない」
ベルトルトは、しばらく俺を見ていた。
それから、静かに頷いた。
「……分かった」
夜。
焚き火の前に、俺は一人で座っていた。
ミクラが、隣に来た。
「殿」
「うん」
「木の魔物たちは、大樹が診ています」
俺は、焚き火を見つめた。
「大樹に、治せるか」
「……分かりません。ただ、大樹は諦めていないようです」
そうか。
俺は、手袋をはめた手を見た。
今日、手袋を脱いだ。御座のために。
結果、木の魔物たちを生み出して——傭兵に両断された。
「ミクラ」
「はい」
「お前が戻ってきてくれて、よかった」
ミクラは、少し間を置いた。
「……殿が、呼んでくださいました」
「俺が?」
「はい」
ミクラが、静かに続けた。
「“頼む”と。それだけで、十分でした」
焚き火が、ぱちぱちと音を立てる。
曇天の空に、星は見えない。
でも——なんか、悪くない夜だと思った。
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