幕間② ヒーローズ アウトサイド
町から町へ、歩き続けて数週間が経つ。
ツゲルは、隣を歩くロイをちらりと見た。
炎魔法のロイ。
幼い頃から、「絶対すごい属性もらう」と豪語していた男が、本当に炎魔法を授かった。羨ましいとは思わない。ただ、あの時の自分は確かに羨ましそうに見ていたのだと、今なら分かる。
「なあツゲル、そろそろ休憩しようぜ」
「もう少し先の町まで行く」
「えーー……」
ロイが、情けない声を上げた。
この人は昔から、こうだ。無駄口が多い。
でも、“この人のおかげで、一人旅より、全然心が和らぐ”とロイは感じていた。
「お前の兄ちゃんのこと、俺も他人事じゃないからさ」
出発の日の朝、ロイはそれだけ言った。
ツゲルは、何も返さなかった。
でも、ついてきた。
小さな集落の外れに、露店が出ていた。
老人が一人、台の前に座っている。
「おや、旅のお二人さん。ちょっとちょっと」
にこにこした顔で、手招きしてくる。
台の上に、丸い石が置いてあった。透明で、光を受けてきらきら輝いている。
「これはね、樹海の奥で採れる、特別な宝石でしてね」
「へえ〜!」
ロイが、目を輝かせながら身を乗り出した。
「幸運をもたらすと言われていましてね。旅人には特に効くんですよ」
「いくらっすか!?」
「ロイ」
ツゲルは、一言だけ言った。
「え?」
「それ、ただの硝子玉だ」
老人の表情が、一瞬だけ固まった。
「硝子玉を削って丸くして、油を塗って光らせてある。旅人向けの定番の土産物だ」
ロイは、目をぱちぱちさせた。
「……え、そうなの?」
「そうだ」
ツゲルは、老人を静かに見た。
老人は、しばらくツゲルの目を見ていた。
それから、にっこりと笑った。
「……目のいいお客さんだ」
そのまま、台の整理を始めた。
ロイは、まだ石を見ながら「でもきれいだよな……」と呟いていた。
「行くぞ、ロイ」
「あ、うん」
夜、宿の一室で、ツゲルは集めた情報を整理した。
ツーフ村を飛び出した少年が、魔物を引き連れて東へ向かっているという噂。グランガウ傭兵団が動いているという話。
情報は、少しずつ、集まってきている。
「なあツゲル」
ロイが、寝転がりながら天井を見上げていた。
「アゲルのやつ、どこにいると思う?」
ツゲルは、手を止めた。
「分からない」
「会ったら、どうする?」
しばらく、沈黙があった。
「……決まっている」
ツゲルは、手元の紙に視線を戻した。
枷が、胸の奥でじくりと疼いた。
「決まっている」
もう一度、繰り返した。
まるで、自分自身に言い聞かせるように。
最後まで読んでいただきありがとうございます(*´-`)
次回から三章に入ります。
三章は、1日1話ずつの更新の予定です☺️




