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2-13話 それは


 二週間歩いた。


 千三百体超の大行列は、道中もじわじわ数を増やしながら、北東の森を進んだ。


 そして——。


「……着いた」


 俺は、思わず立ち止まった。


 森が、急に開けた。


 目の前に、谷が一本、まっすぐ伸びている。両側を、高い山と深い森が囲んでいる。外からは、まずここに辿り着けないだろう。


 谷の奥には、平たい大地が広がっていた。


 標高五百メートルはあろうかという山々に囲まれた、静かな盆地。奥の山頂から流れる湧水が、谷の真ん中を一本の筋のように、入り口へ向かってまっすぐ流れている。


 水音だけが、聞こえていた。


「……本当にあったんだな」


 誰に言うでもなく、呟いた。


 大地の中に、村の名残がある。崩れかけた石垣。朽ちた木材が積み重なった、かつての家屋の跡。蔦に覆われた、井戸らしき石組み。


 廃墟だ。人が住める状態じゃない。でも——確かに、ここには人が住んでいた。


 少し奥に目を向けると、斜面に段々と刻まれた跡が見えた。棚田だ。今は草に覆われているが、どこに田があって、どこに畑があったのか、見当はつく。


 水もある。土地もある。山に囲まれて、外からは見つかりにくい。


「……いいじゃないか」


 俺は、静かに息を吐いた。


「殿」


 御座が、隣に並んだ。


「この地、気に入りましたか」


「ああ」


 俺は、流れる湧水を見つめた。


「なんか……ここ、いい気がする」


「そうですね」


 御座(みくら)が、珍しく、少しだけ柔らかい声で言った。


「水があります。山があります。森があります。入り口は一本。……守るには、良い地かと」


「はっはっはっはー!!」


 大樹が、蔦をぶわりと広げた。


「主よ!!良い城じゃないか!!我、気に入ったぞ!!」


「声がデカい」


「殿!!ここに住むっすか!!」


 鍬が、掌をわくわくさせながら聞いてくる。


「いい『城』だな!小鬼たち、ありがとう!」


「「「おおーでち!!!!」」」


 後ろの千三百体超が、一斉に沸き立った。


 どたどたどたどた。


 小鬼族たちが、我先にと谷へ駆け込んでいく。崩れた建物の跡を調べるやつ、湧水に飛び込むやつ、棚田の跡を転げ回るやつ。


「かみさまのおしろでち!!」


「ここがかみさまのおしろでち!!」


「でちでちでち!!!!」


 声が、山に囲まれた盆地に響き渡る。


 反響して、余計うるさい。


 俺は、谷の入り口に立ったまま、その光景を眺めた。


 崩れかけた廃墟。草に飲まれた棚田。誰もいなくなった、静かな村の跡。


 それが今、千三百体超の小鬼族で溢れかえっている。


「……これからどうなるんだろうな、ここ」


「それは」


 御座が、静かに答えた。


「殿次第かと」


 俺は、少しだけ笑った。


「そうだな」


 湧水が、谷をまっすぐ流れていく。


 ここが——俺たちの、拠点になる。

これで二章終幕!

なんか一気に仲間が増えちゃいましたね…これはアゲルも予想していなかったでしょう…


最後まで読んでいただきありがとうございましたm(_ _)m

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