22.俺、お披露目会を乗り切りました
俺のお披露目会当日。
朝からおめかしして待機中。失敗したらどうしようと、心細くなっていたら、
ヤーニーが瞬間移動で来てくれた。
「王子様を従えて会場入りしたら、無敵ね」と母様は悪い笑顔になっている。
ヤーニー、俺の推し、あの可愛い弟分のヤーニー。
だかしかし、最近、やたらお兄さんぶる。数カ月誕生日が早いからか?
俺の中身が、おっさんの割にちょっと抜けているのがバレたからか?
ま、ウーちゃんなんて神様なのにあの扱いだ、俺の扱いに文句をいっても始まらないだろう。
特に今日は、頼りにしてます。ヤーニーお兄ちゃん!
*******
中庭には300人ほどの招待客。これでも厳選してるから小規模だって。うえぇ。
登壇しての挨拶は緊張したものの無事終わり、人の輪の中へ。
一時間後、
もう、作り笑顔が売り切れそうです。
会場で愛想を振りまき、大人にも、子どもにも挨拶を返し、和やかに会話。
子どもたちも、大人がいる前ではとてもいい子にしている。
「お疲れさま、子どもエリアのビュッフェに行っていいよ」とガイルから許可がでた。挨拶まわり終了だ!ヤッター!終わった、疲れた。
ヤーニーと合流して一緒に子どもエリアへ行くとすでに沢山の子どもたちがいた。
ビュッフェは俺の好きなものを中心に揃えてくれている。シェフの愛を感じるなぁ。
このエリアには小さな椅子とテーブルも用意されている。いくつか取って適当なところに座って食べ始めようとすると、女の子が二人やって来た。
「ご一緒よろしいですか?」と黄色のフリフリの女の子が聞いてくる。
あれ、俺、こういう場面の振る舞い方、習ってないよ。前世の常識と多分違うよね?
リチャードは所々、元大人なんだから分かるだろって情報は、はしょる傾向がある。でもね。異世界の大人なんだよ。常識が違う訳。察して!
ヤーニーと目を合わせる。丸投げします、よろしくねってテレパシー通じるかな?
「マーキュス侯爵令嬢、パンナ伯爵令嬢、お久しぶりです。我々はこれから食事ですが、構わなければ、おかけください」ちょっと冷たい口調だ。
「あ、私たちも食事を選んでまいりますわ」といって去っていった。
「この場面は、なんかまずい感じ?」
「挨拶しか交わしたことのない人とテーブルが一緒になって、あっちは手ぶら、ならこっちは?食事に手をつけずに会話しろってこと?」
「確かにな、俺らだけ食べるのまずいか」
「そう、しかも、一方的に見られながら食べるなんて嫌だ」とお怒りモード。
「でも、断らなかったんだな」
「女性からの申し出は極力断っては行けない、マナーで習ったでしょ?」
ヤーニーが頼もしいけど、怖い。もう少し、俺には優しくして。
それから、女の子を交えての食事。ちょっと最初はぎこちなかったけど、なんとかクリア。
今日はガイルかヤーニーとずっと一緒で一人になっていないので、肉屋だ~のくだりのクスクス笑いも体験していない。快適だ。
デザートを選んだら、次は、男の子が座っているテーブルに声をかけに行った。多少積極的に行ったぞってアピールしないとな。
2年後には初等学校に入学なので、同級生になる男の子と交流だ。
「ここ、いいだろうか?」とヤーニーが聞く。もちろん答えは一択。
「どうぞ。おかけください」
俺と同学年しかも高位貴族の息子で、王都に住んでいる、確実に同じクラスになるメンバーだ。初等学校は自分の領地の学校に通う子もいるから王都住みの子どもは限られるからね。
前回のヤーニーのパーティーで会った時にはそれぞれに取り巻きがいて、近づけなかった高位貴族のメンバーだ。
リチャードが事前に調べた情報によると。
左のかしこそうなプラチナブロンドの子が、グレッグ・バイナン、財務大臣の息子。面白いのが騎士団団長の孫でもあるってこと。団長はかなり強引に孫を武闘派に育てようとしたらしい。華奢な見た目だから、それは失敗したんだろうか。
真ん中のキリアル・クッセンはなんと、緑色の髪だ。初めて見た。魔術開発局は魔法の出現によって名を改め、『魔道開発局』になったんだが、そこの局長の息子だ。
右はデイブ・トリアス。ガイルの右腕、宰相補佐のダグラスの息子。とっても穏やかで忍耐強いダグラスの息子なのに、突っ走っちゃう系の息子だと噂されている。剣術はすごいらしく、騎士のフランツに憧れているらしい。脳筋つながりで分かり合えるかもな。
この三人話してみるととてもいい子たちだ。お互いに面識はほぼないらしく、初等学校入学前にきちんと話せる場はなるべく有効に活用したいと思っているようだ。
そりゃ、俺やヤーニーが特殊なだけで、本来は親しくなっても外出するとなったら色々大変だ。
相手の家に伺いをたてて、了承されたら、護衛のスケジュールを調整して、馬車の確保をしてと、やることが沢山ある。
子どもたちが沢山集まる場所では高位貴族は囲まれてしまって、なかなかじっくり話も出来ないと苦労話が始まる。俺は囲まれずにクスクスされたけどね。根に持ちすぎか?
その他にも、男の友達が欲しいのに、女の子からのお茶会の招待ばかりがくる。とか、婚約の打診の多さに頭を悩ませているとか。5歳にしてモテの悩みが続く。俺のところにも来てる?聞いてないだけか、話が来ていないかどっち~~?と悩んでいると。
ヤーニーが、こっそり、
「僕たちは、父様が『5歳のお披露目までは一切の接触を断る』と宣言していたんだって。僕の魔力制御のこともあったしね。今までは楽ちんだったけど。これからは大変なのかもね」と教えてくれた。
「そうなんだ!大変になってる?」4カ月前に誕生日がきたヤーニーに聞いてみる。
「僕は、ウェルと一緒じゃないとどこにも行かないって断ってる」
なんですと!巻き込まれてる。明日から俺のところは招待状ラッシュに見舞われるのかもしれない。
「あの~、この5人のメンバーだけで、近々集まれますか?」と恐る恐るキリアルが申し出た?
「僕は構わないよ」と俺。
「ウェルの家に集まるなら僕も大丈夫だよ」とヤーニー。
「私も、ぜひとも参加させてください」とグレッグ。
「私も、お願いしたい」とデイブ。
改まって提案されたけど、なんだろう。
取り敢えず、リチャードに来週集まれるよう各家との調整を頼んでおいた。
なんか、こういうのが、俺の専属執事リチャードの本来の仕事なんだろうなって思った。
ダンジョンを護衛代わりに散々連れまわしているけどね。ごめんね。