70.side セドリック王太子殿下
カリーナ嬢の報告書は膨大な量で昼休みも隙を見ては手を動かしている。
「はぁ、書いても書いても終わらないな…」
「……」
最近、俺の側近候補の宰相の息子エミリオの様子がおかしい。
やたらぼんやりしているし甘いものは苦手だと言っていたのにカップケーキをよく食べている。
カリーナ嬢の件でムリをさせてしまっていたから疲れがたまっているのかもしれない。
「エミリオ、休みは取れているのか?」
「……」
「エミリオ?」
「え?はっ殿下!!失礼致しました」
「休憩にしようか?」
エミリオがお茶の準備を始めたので席を立つとふと窓から中庭の様子が見えた。
リオネルとレティシア嬢が仲良く寄り添っている。
リオネルへ向ける彼女の笑顔は、とても可愛らしい。
「本当に可愛らしいな…」
「殿下?」
「中庭にリオネルとレティシア嬢が一緒に居てね…」
「あぁ例の…」
「エミリオは逢った事が無いのか…。とてもキレイな令嬢でね。リオネルの宝物なんだよ」
レティシア嬢が居る時は別件で席を外していたようでレティシア嬢の事は書類でしか知らないようだ。
「政略結婚の相手と相思相愛になれる確率は、どれくらいなんだろうね?」
「殿下?」
「いや、休憩にしよう」
エミリオが淹れてくれたお茶を一口飲むと一緒に添えられているカップケーキに目が行く。
「クククッ」
エミリオが不思議そうにこちらを見ている。
「またカップケーキだなと思って」
「あ、申し訳ありません。すぐに違う物を……」
「あぁ、そういうつもりで言ったのではないよ」
レティシア嬢の手作りを思い出すな…。
可愛らしい彼女に似た優しい味だった。
我ながら未練がましいな。
リオネルから奪う度胸も無いくせに。
密かに彼女を想うことを止められない。
クリスもまた同じ気持ちなのだろうな。
あいつもまたレティシア嬢に思いを寄せている。
学園を卒業するまでに相応しい相手を見つけなくてはいけないのにしばらくはレティシア嬢を忘れられそうにないな。




