57.side リオネル
王太子殿下の執務室のドアを力任せに勢いよく開けた。
「術者が地下牢から消えたとは、どういう事だ?」
殿下は青い顔で記録水晶を差し出す。
「本当に消えたとしか言いようが無いんだ…」
水晶には黒い霧に包まれて姿が消える様子が映し出されて居た。
「魔力封じがされている牢屋では無かったのか?」
「魔力封じは、きちんと発動されておりました……」
殿下の側に居たクリスが小さな声で反論してきた。
「だったら何故、消えた?」
「それは今、調査中で……」
「お前達からしたら所詮他人事だからな…」
クリスが睨み付けてきて何かを言おうとしたけどそれを殿下が遮った。
「リオネルには申し訳ないが、こちらも全力で調査をしているんだ…」
「今まで我慢していたがもう限界だ。今すぐカリーナ嬢の自宅捜索の令状を用意しろ。陛下と殿下のサインがあれば捜索できる」
「あぁ分かった…できるだけ早く用意する」
「あと術者が姿を消した事はレティシアの耳には入らないように注意して頂きたい」
執務室を後にするとすぐにレティシアの元へ向かった。
「リオネル様、どうなさったのですか?」
突然の来訪に驚きつつも笑顔で出迎えてくれたレティシアを優しく抱き締めた。
「急に顔が見たくなって」
色白の頬を撫でるとすぐにピンク色に染まる。
可愛いくて愛しくてたまらない俺の婚約者。
お茶の準備をしている間、レティシアは赤く染めた俺の小指を撫でていた。
自身の小指と絡めたりして嬉しそうに赤い小指を重ね合わせていた。
「くすぐったいよ」
彼女がハッとして手を離そうとするのを握り締めた。
「体調は悪くない?」
「ええ問題ありません」
ペンダントに触れて何重にも魔力を流し込んだ。
何かあればすぐに気付けるように…。
レティシアの頬を両手で包むとそっと上を向かせて唇越しに彼女自身にも気付かれないように魔力を注ぎ込んだ。




