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週末、ルグラン邸を訪れるとリオネル様が出迎えてくれた。
昔のように手を繋いで散歩してると初めて手を繋いだ時の事を思い出した。
勢いで手を繋いでしまって凄く恥ずかしかったなぁ。
「ふふふ」と声に出して笑ってしまったみたいでリオネル様が「どうしたの?」と聞いてきた。
「初めて手を繋いだ日を思い出してました」
「婚約した日だね。レティシアが凄く可愛くて君と婚約ができて本当に嬉しかった。一目惚れだったんだよ」
リオネル様の瞳に見つめられて「私も嬉しいです」と伝えるのが精一杯だった。
そんな私の様子を見て満足したように微笑むとリオネル様は案内したい場所があると私の手を引いて庭の奥へと進んだ。
庭の奥には、ちょうど見頃の薔薇が咲いておりお茶の準備がされていた。
薔薇が見やすいようにとの配慮で椅子は向き合う形では無く並べて置いてあり座ると肩が触れてしまうくらいの距離で恥ずかしい。
テーブルに目をやるとプレゼントのハンカチが、そっと置いてあった。
お茶の時に渡したいからとルグラン邸のメイドに預けておいたので一緒に準備しておいてくれたようだ。
「リオネル様、これペンダントのお礼です」
「これは、レティシアが刺繍をしたの?」
「あまり上手では無くて恥ずかしいのですが…」
「とても嬉しいよ、ありがとう」
リオネル様はハンカチを一度広げて刺繍を撫でると丁寧に折り畳んで胸ポケットへ仕舞った。
その仕草がとても美しくて見とれているとリオネル様の顔が近づいてきて口付けをされた。
え?
リオネル様はそのまま優雅にお茶を飲んでいたけど私は真っ赤な顔してお茶を飲んだ。
お茶を飲み終えて屋敷へ戻ると仕立て屋が来ており私だけ別室へと連れていかれ、よく分からないままサイズを測られた。
応接室へ案内されるとリオネル様とデザイナーが居てリオネル様の横に座るように促された。
「今度、授業の一環で夜会があるんだ。婚約者は生徒じゃ無くても参加できるんだよ」
夜会は初めてだから不安だと言ったら生徒だけの練習の夜会だから不安に思う事は無いらしい。
それでも不安に思ってると
「レティシアなら何の問題も無いよ」
と優しく言ってくれた。
そしてデザイナーの女性は、さっきからスケッチブックに一心不乱に何枚もデザインを描いてる。
「とても美しいお嬢様なのでデザインが沢山、浮かびました」
ふぅーっと息を吐きながらスケッチブックを差し出された。
どれも可愛いデザインで悩んでしまう。
リオネル様の方を見ると「好きなのを選んで良いよ」と微笑まれた。
やっぱり薄紫色のドレスが良いな。
薄紫色のドレスを選ぶとデザイナーの女性は「今のインスピレーションを大事にしたいのですぐに製作に取り掛かります!!」と慌てて帰っていった。
ドアが閉まるのを確認するとリオネル様はすぐに私を膝の上に座らせた。
「リ、リオネル様っっ!!」
「誰も見てないから大丈夫だよ。レティシアが可愛い事をするからいけないんだよ?」
リオネル様が私の顔にキスの雨を降らせる。
「だって…初めての夜会だから…リオネル様の色を着たくて…」
涙目で見つめると
「そんなに俺を喜ばせてどうしたいの?」
再びキスの雨が降ってきて私はフラフラになってしまった。
誤字報告ありがとうございました。




