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77話

 うん。

 この感覚は……オレは死んだのかな?


 最近、死ぬことに慣れつつある。

 ……四、五回目か。

 あまり良い傾向ではないよな。


 そこまで身体はダルくないから、比較的楽に死ねたようだ。

 酷い死に方をすると、後々まで響くからなぁ。


 楽とか、酷い死に方とか、ホントになに言ってんだ、って思うけど。

 事実なんだから、しかたない。


 フワッと、浮かび上がるような、貧血寸前の感覚があってから、ようやく目を開ける。


 さて、なんで死んだんだ?

 確か……ヴイーヴルと戦って……最後の一撃を与えようと……額の宝石に魔法をブッパしようとして……。

 そこで意識が途切れているようだ。


 うーん?

 なんかカウンターをもらったのかな?

 教えて、ディーネ!




 ふむ?

 ()()()()、ですと?

 そういえば、ヴイーヴルって精霊だったな。


 ……?

 契約って、キスしてするものじゃなかった?

 実際、ディーネとジュリアとはキスしたよね?

 いや、目を逸らさないで。

 口笛を吹くマネしないで。

 何か言ってください、ディーネさん?




 ほほう……。

 別に、キスでなくても良い、と、そう言うわけですか。

 いやいや、責めているわけではないですよ。

 しかし、もしも逆の立場だったらどうでしょう?

 なにも知らない貴女に、取引を持ちかけ、キスを強要する。

 これは、ちょっとした犯罪では?


 はは、冗談冗談。

 気にしなくて良いよ。

 オレとしても、役得だったし。

 ジュリアのときは、生首を押し付けられて、ビックリしたけど。


 それはさておき。

 契約はキスでできる、が、キスでなくても良い。

 じゃあ、契約には本当は何が必要なんだ?


 血液と魔力である。

 正確には、血液を媒介に魔力を与えるのだ。

 精霊契約が、エルフの専売特許みたいになっているのは、精霊とエルフの血が近しいから、少量で済むのに対し、他種族は血液が大量に必要になり、死んでしまうためである。


 では、何故キスなのか?

 契約には血液が必要である。

 しかし、出血による血液では、駄目なのらしい。

 空気に触れて劣化してしまうからだ。

 よって、別の手段が求められる。


 迂遠(うえん)なのだが、互いの体液(唾液が簡単とのこと)を利用して、魔法で血液に変化させるのだという。

 つまり、キスする→唾液→血液→魔力→契約する、という流れのようだ。


 ……なるほど。

 説明されると、キスが手っ取り早いのがわかる。

 そして……いや、この先は、考えない方が良さそうだ。


 地球の歴史における、中世期の悪魔召喚の儀式やらを思い出したが、頭の片隅に放り投げた。


 うーん……。

 キスによる契約はわかった。

 では、何故、ヴイーヴルと精霊契約ができたのか?

 今のディーネの説明だと、できそうにないのだけど……。


 どうやら原因は、最後の魔法による攻撃にあったようだ。

 全力で放った魔法は、純粋な魔力に近くなり、それがヴイーヴルの宝石を通して全身に伝わり、契約となってしまったのではないか、というのが、ディーネの見解だ。


 これには、オレが二人の精霊と契約してきたことで慣れていた、というのも、無関係ではなさそうだ。


 また、ヴイーヴル長い間、封印されていた。

 その封印が解けて──というか、オレが強引に壊したため、魔力が枯渇しかけていて、それでオレの魔力が浸透しやすかった、というのもある。


 まぁ、運が良かったというか、偶然の産物というか、結果オーライというか。


 とりあえず、三人目の精霊が仲間に加わりました。




 そのヴイーヴルの姿が見えない。

 あの巨体なのだから、目立つはずなんだけど……。


 そういえば、ジュリアもいないな。

 どこに行ったんだ?


 周囲を調べている?

 コシュタ・バワーに乗って?

 なるほど。

 ヴイーヴルも、それに付いていってるわけだ。


 お?

 アレがそうかな。馬が走っている。首なし馬は相変わらず、シュールだなぁ。

 でも……ヴイーヴルの姿は見えないけど。

 ん?

 ジュリアの後ろに誰か乗っている?


 コシュタ・バワーがオレの前に到着した。

 ジュリアともう一人、女の子が馬から降りる。


 美少女だね。

 この世界の住人は、ほとんど美形だよ。これはもう、決定事項だ。


 背はあまり高くない。160cmには足りないか。華奢な肢体であるためか、少し幼く見える。

 サラサラの銀髪は、肩まで伸ばしていて、その前髪はパッツンと真横に揃えられていた。

 赤い瞳は、猫を思わせる吊り目で、小さな顔を引き立てている。


 えと……。

 もしかして、だけど。

 貴女がヴイーヴルですか?


 オレの問いに、精霊の三人は、揃って首を縦に振ったのでした。



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